39 / 41
第三十九話 小さな小さな結婚式
しおりを挟む
吹雪に見舞われた一同は、追われるようにして温室へと急ぐ。
温室が作られてからというもの、セドリックとアリシアは毎日に近い頻度で室内の手入れをしていた。果物の苗木を植えたり、花の種を蒔いたり、小川のような水路を作ったり……。アリシアが灯すランプのおかげで日照や温度の点でも生育条件をクリアしているようで、植物も芽を出し始めていた。
丁寧な手入れと緻密な設計により、今や温室は貴族の庭のような風貌になっていた。植物はまだ植えたてのため発展途上といった様子だが、テーブルや椅子も備え付けられていて、ちょっとしたお茶会も開けそうなほどである。
温室にたどり着きコートのフードを脱いだブルーベルは、驚きの声をあげた。
「わあ……! 何これ!?」
温室の中は、普段の様相からはずいぶんと様変わりしていた。
いたる所に真っ白なリボンが結ばれ、キラキラ光る小さなランプのオーナメントが飾られている。奥へと続く小道に敷かれた白いカーペットの上には、パステルカラーの花びらが散りばめられていた。
「なんだ、来ちまったのか」
珍しくスーツに身を包んだセドリックが、あちゃあ……と呟きながら声をかけてきた。
「どうしたんですか、これ! こんな素敵に飾り付けられて……何かパーティでもやるんです? セドリックまでおめかししちゃって!」
「俺だってスーツぐらい着るさ! あー、バレちまったなら仕方ない……サリー、言ってもいいか?」
「……なーんだ、びっくりさせようと思ったのによ。サプライズは得てして失敗するもんだね」
奥からは萌黄色のドレスに身を包んだサリーが出てきて、ため息と共に首をすくめた。
「サリーまで! どうしたんです? 誰かの誕生日でしたっけ……!?」
「なんとね~、二人の結婚式なのよ! 旦那サマと奥サマの!」
「ずるいよマール! アタシが言いたかったのに!」
「け……結婚式、ですか!?」
マールの言葉に、アリシアは驚きの声を上げた。サリーに小突かれているマールも薄紫のドレスに身を包み、凝った形に髪を結い上げている。
「二人とも一応結婚してるテイだけど、式は挙げてなかっただろう? そんなのいいよって言いそうだから、アタシたちが先に用意してあげたってワケ!」
「あとちょっとで準備が出来るから、呼びに行く所だったのに~」
「そんな……あの、ありがとうございます。こんなに素敵な会を作ってくださって……」
温室内の会場の装飾は、清らかで優しく、温かい愛に溢れていた。きっと長いこと計画を立てて準備をしてくれていたのだろう。仲間たちの気持ちや費やした時間を思うと、すでに涙がこぼれそうだった。
「おっと奥サマ、泣くのはまだ早いよ~! 感動してるとこ悪いけど、まだ式は始まってないんだし」
「というか旦那サマは? 一応サプライズにはサプライズだったんだけど、驚いてない感じ? 余計なお世話だったかな……」
「…………いや、驚いている……ものすごく」
わかりづらいが、レイモンドも本当に驚いているようだった。不自然に固まったまま、キョロキョロと回りを見渡している。
「でも……どうしましょう。そうとは知らず、私、こんな服で……」
「それは大丈夫さ! アタシがこんな式に、新しいドレスを用意してないと思うかい? さあ、着替えた着替えた!」
「え!? どこで……」
「ちゃあんと更衣室も用意してあるからね~。ほら、旦那サマとお嬢サマも~」
「俺たちもか?」
戸惑うままに背中を押され、三人はカーテンで仕切られた小さな更衣室に押し込まれた。
数分後出てきたレイモンドは、真っ白なスーツを身に纏っていた。僅かに黄味がかった上質な布で仕立てられたスーツは、パリッ! ピシッ! と体に合っている。
「なんだか……落ち着かないな」
「よく似合ってるよ旦那サマ! 見てここ、刺繍とネクタイだけ銀糸が入ってんのよ! それにここの部分だけ布の材質を変えていて……」
「あ~わかった、すごいすご~い。サリーの服がすごいのは皆わかってるんだから、いちいち説明しないでいいのよ~」
「何だいその気持ちのこもってない『すごい』は! 丹精込めてんだ、もう少し褒めてくれても……」
「……本当にすごい。舞踏会の服に続き、プロの仕事だな。忙しい中なのに、ありがとう」
レイモンドからお礼を言われたサリーは、照れくさそうに破顔して頭をかく。続いて更衣室のカーテンが少しだけ開き、おずおずと顔を出したのはブルーベルだった。
「あの……これで大丈夫?」
「あ~、完璧! はちゃめちゃにかわい~! 王国中探してもこんな可憐なお姫サマはいないよ~!」
「むぎゅぎゅ……苦しいよマール~」
「ちょっとマール、アタシを褒める時と態度が違いすぎない? お嬢さまが可愛いのは完全に同意だけど!」
「えへへ……サリー、ありがとう!」
マールから解放されたブルーベルは、嬉しそうに目をギュッと瞑り、くるりと一回転してお辞儀した。白いオーガンジーで出来た可愛らしいワンピースは、ウエストを結ぶリボンだけがピンクのサテンで出来ている。よく見ると、白い花の刺繍が全面に施されているようだ。
「仕上げに……はい! これをかぶって、これを持って……お嬢さまは重大任務があるからね! こういう作戦で……」
花冠をかぶせられ、花びらの入った籠を渡されたブルーベルは、サリーに耳打ちされた内容を真剣な表情で聞いている。しばらくして会話が終わると、決意に満ちた表情で頷いた。
「……ま、間に合いました!? 旦那様達が温室に向かうのが窓から見えて、慌てて準備をして屋敷から出てきたんですが……セーフですか!?」
勢い良く温室に駆け込んできたのは、執事のヨゼフだ。いつもの真っ黒な執事服と違い、白い神父の祭服を着ている。吹雪の中走ってきたせいか、いつもピチリと固められている髪が所々乱れていた。
「セーフセーフ。奥サマの準備がまだだから~、良い所に来たね」
「みんな~、食事の準備もできたよぉ」
料理人のエリオットも奥からピョコンと顔を出し、ヒラヒラと手を振った。エリオットは以前よりもずいぶんと恰幅が良くなり、もっちりとしたシェフの風貌になっている(皆からは試食のしすぎだと指摘されていた)。
「エリオットも、蝶ネクタイが似合っているな」
「えへへ、ありがとぉ。旦那さまもお嬢さまもとっても素敵だよぉ」
皆が団欒していると、シャッと控えめにカーテンが引かれる音がした。
「これで……どうでしょうか?」
そこには、真っ白なウエディングドレスに身を包んだアリシアが佇んでいた。あまりにも眩いその姿に、一同は目を細めて息を呑む。
純白のドレスには絹糸で刺繍が施され、光があたった部分がキラキラと輝いていた。上半身はピタリと体に沿っているが、腰下からは大きく広がり、裾は長く床に垂れ下がっている。下半分には氷の魔石が宝石のように散りばめられ、独特の青白い光を放っていた。
「綺麗だ……とても」
沈黙を破ったレイモンドの呟きに、アリシアの頬が真っ赤に染めあがった。
「ヒュー! お熱いじゃねえか二人とも!」
「セドリック……からかわないでくださいよ!」
「うん、ミーシャさん……とってもきれい……! おとぎ話のお姫さまみたい……」
「お嬢様も本当に可愛いです! 今日は花の精霊さんですね……!」
「奥サマ……めちゃくちゃよく似合っているよ……。アタシのドレスをこんなに着こなしてくれて、もう感動して……。この腰の膨らみを出すために、下のパニエの量を何回も微調整したんだ。それにその氷の魔石は、ビーズ状に加工して刺繍に縫い込むように……」
「わかったわかった、サリーのこだわりは後でゆっくり聞くから~。奥サマはこっち、最後の仕上げにヘアセットとメイクだよ~!」
マールの手によってあっという間にセットが終えられ、美しい花嫁が出来上がった。アリシアは涙を堪えながら、皆に向かって深々とお辞儀をする。
「サリーもマールも……本当にありがとうございます……! こんな素敵なドレスに、メイクまで……。それにセドリックやエリオット、ヨゼフも。皆で準備してくれたのでしょう? 嬉しくて、胸が熱くて、何とお礼を言ったらいいか……」
「ストップ! 奥サマ、泣かないで~! せっかくのメイクが崩れちゃうから! ……ほら、ベールをかけるからかがんで……」
「そうそう! 奥サマが号泣する前に、早く始めちまおうよ! みんな首尾通りに、席に着いて!」
エリオットとサリー、マールが参列席に腰掛け、ヨゼフは緊張の面持ちで神父台に立った。
セドリックはアリシアの横に立ち、気まずそうな表情でコホンッと咳払いをする。
「……俺がその、エスコートするんだってよ。俺なんかが父親がわりだなんて、笑っちまうよな……」
溢れそうになる涙を必死に堪え、アリシアはセドリックの腕に手を回す。
「貴方が父親役なんて……すごく、すごく嬉しいです、セドリック。『アリシア』の時から貴方を、本当の父親のように慕っていましたから……」
セドリックは前を向いたまま、震える声で呟いた。
「結婚おめでとう、アリィ。俺の可愛い娘っ子よ……」
温室が作られてからというもの、セドリックとアリシアは毎日に近い頻度で室内の手入れをしていた。果物の苗木を植えたり、花の種を蒔いたり、小川のような水路を作ったり……。アリシアが灯すランプのおかげで日照や温度の点でも生育条件をクリアしているようで、植物も芽を出し始めていた。
丁寧な手入れと緻密な設計により、今や温室は貴族の庭のような風貌になっていた。植物はまだ植えたてのため発展途上といった様子だが、テーブルや椅子も備え付けられていて、ちょっとしたお茶会も開けそうなほどである。
温室にたどり着きコートのフードを脱いだブルーベルは、驚きの声をあげた。
「わあ……! 何これ!?」
温室の中は、普段の様相からはずいぶんと様変わりしていた。
いたる所に真っ白なリボンが結ばれ、キラキラ光る小さなランプのオーナメントが飾られている。奥へと続く小道に敷かれた白いカーペットの上には、パステルカラーの花びらが散りばめられていた。
「なんだ、来ちまったのか」
珍しくスーツに身を包んだセドリックが、あちゃあ……と呟きながら声をかけてきた。
「どうしたんですか、これ! こんな素敵に飾り付けられて……何かパーティでもやるんです? セドリックまでおめかししちゃって!」
「俺だってスーツぐらい着るさ! あー、バレちまったなら仕方ない……サリー、言ってもいいか?」
「……なーんだ、びっくりさせようと思ったのによ。サプライズは得てして失敗するもんだね」
奥からは萌黄色のドレスに身を包んだサリーが出てきて、ため息と共に首をすくめた。
「サリーまで! どうしたんです? 誰かの誕生日でしたっけ……!?」
「なんとね~、二人の結婚式なのよ! 旦那サマと奥サマの!」
「ずるいよマール! アタシが言いたかったのに!」
「け……結婚式、ですか!?」
マールの言葉に、アリシアは驚きの声を上げた。サリーに小突かれているマールも薄紫のドレスに身を包み、凝った形に髪を結い上げている。
「二人とも一応結婚してるテイだけど、式は挙げてなかっただろう? そんなのいいよって言いそうだから、アタシたちが先に用意してあげたってワケ!」
「あとちょっとで準備が出来るから、呼びに行く所だったのに~」
「そんな……あの、ありがとうございます。こんなに素敵な会を作ってくださって……」
温室内の会場の装飾は、清らかで優しく、温かい愛に溢れていた。きっと長いこと計画を立てて準備をしてくれていたのだろう。仲間たちの気持ちや費やした時間を思うと、すでに涙がこぼれそうだった。
「おっと奥サマ、泣くのはまだ早いよ~! 感動してるとこ悪いけど、まだ式は始まってないんだし」
「というか旦那サマは? 一応サプライズにはサプライズだったんだけど、驚いてない感じ? 余計なお世話だったかな……」
「…………いや、驚いている……ものすごく」
わかりづらいが、レイモンドも本当に驚いているようだった。不自然に固まったまま、キョロキョロと回りを見渡している。
「でも……どうしましょう。そうとは知らず、私、こんな服で……」
「それは大丈夫さ! アタシがこんな式に、新しいドレスを用意してないと思うかい? さあ、着替えた着替えた!」
「え!? どこで……」
「ちゃあんと更衣室も用意してあるからね~。ほら、旦那サマとお嬢サマも~」
「俺たちもか?」
戸惑うままに背中を押され、三人はカーテンで仕切られた小さな更衣室に押し込まれた。
数分後出てきたレイモンドは、真っ白なスーツを身に纏っていた。僅かに黄味がかった上質な布で仕立てられたスーツは、パリッ! ピシッ! と体に合っている。
「なんだか……落ち着かないな」
「よく似合ってるよ旦那サマ! 見てここ、刺繍とネクタイだけ銀糸が入ってんのよ! それにここの部分だけ布の材質を変えていて……」
「あ~わかった、すごいすご~い。サリーの服がすごいのは皆わかってるんだから、いちいち説明しないでいいのよ~」
「何だいその気持ちのこもってない『すごい』は! 丹精込めてんだ、もう少し褒めてくれても……」
「……本当にすごい。舞踏会の服に続き、プロの仕事だな。忙しい中なのに、ありがとう」
レイモンドからお礼を言われたサリーは、照れくさそうに破顔して頭をかく。続いて更衣室のカーテンが少しだけ開き、おずおずと顔を出したのはブルーベルだった。
「あの……これで大丈夫?」
「あ~、完璧! はちゃめちゃにかわい~! 王国中探してもこんな可憐なお姫サマはいないよ~!」
「むぎゅぎゅ……苦しいよマール~」
「ちょっとマール、アタシを褒める時と態度が違いすぎない? お嬢さまが可愛いのは完全に同意だけど!」
「えへへ……サリー、ありがとう!」
マールから解放されたブルーベルは、嬉しそうに目をギュッと瞑り、くるりと一回転してお辞儀した。白いオーガンジーで出来た可愛らしいワンピースは、ウエストを結ぶリボンだけがピンクのサテンで出来ている。よく見ると、白い花の刺繍が全面に施されているようだ。
「仕上げに……はい! これをかぶって、これを持って……お嬢さまは重大任務があるからね! こういう作戦で……」
花冠をかぶせられ、花びらの入った籠を渡されたブルーベルは、サリーに耳打ちされた内容を真剣な表情で聞いている。しばらくして会話が終わると、決意に満ちた表情で頷いた。
「……ま、間に合いました!? 旦那様達が温室に向かうのが窓から見えて、慌てて準備をして屋敷から出てきたんですが……セーフですか!?」
勢い良く温室に駆け込んできたのは、執事のヨゼフだ。いつもの真っ黒な執事服と違い、白い神父の祭服を着ている。吹雪の中走ってきたせいか、いつもピチリと固められている髪が所々乱れていた。
「セーフセーフ。奥サマの準備がまだだから~、良い所に来たね」
「みんな~、食事の準備もできたよぉ」
料理人のエリオットも奥からピョコンと顔を出し、ヒラヒラと手を振った。エリオットは以前よりもずいぶんと恰幅が良くなり、もっちりとしたシェフの風貌になっている(皆からは試食のしすぎだと指摘されていた)。
「エリオットも、蝶ネクタイが似合っているな」
「えへへ、ありがとぉ。旦那さまもお嬢さまもとっても素敵だよぉ」
皆が団欒していると、シャッと控えめにカーテンが引かれる音がした。
「これで……どうでしょうか?」
そこには、真っ白なウエディングドレスに身を包んだアリシアが佇んでいた。あまりにも眩いその姿に、一同は目を細めて息を呑む。
純白のドレスには絹糸で刺繍が施され、光があたった部分がキラキラと輝いていた。上半身はピタリと体に沿っているが、腰下からは大きく広がり、裾は長く床に垂れ下がっている。下半分には氷の魔石が宝石のように散りばめられ、独特の青白い光を放っていた。
「綺麗だ……とても」
沈黙を破ったレイモンドの呟きに、アリシアの頬が真っ赤に染めあがった。
「ヒュー! お熱いじゃねえか二人とも!」
「セドリック……からかわないでくださいよ!」
「うん、ミーシャさん……とってもきれい……! おとぎ話のお姫さまみたい……」
「お嬢様も本当に可愛いです! 今日は花の精霊さんですね……!」
「奥サマ……めちゃくちゃよく似合っているよ……。アタシのドレスをこんなに着こなしてくれて、もう感動して……。この腰の膨らみを出すために、下のパニエの量を何回も微調整したんだ。それにその氷の魔石は、ビーズ状に加工して刺繍に縫い込むように……」
「わかったわかった、サリーのこだわりは後でゆっくり聞くから~。奥サマはこっち、最後の仕上げにヘアセットとメイクだよ~!」
マールの手によってあっという間にセットが終えられ、美しい花嫁が出来上がった。アリシアは涙を堪えながら、皆に向かって深々とお辞儀をする。
「サリーもマールも……本当にありがとうございます……! こんな素敵なドレスに、メイクまで……。それにセドリックやエリオット、ヨゼフも。皆で準備してくれたのでしょう? 嬉しくて、胸が熱くて、何とお礼を言ったらいいか……」
「ストップ! 奥サマ、泣かないで~! せっかくのメイクが崩れちゃうから! ……ほら、ベールをかけるからかがんで……」
「そうそう! 奥サマが号泣する前に、早く始めちまおうよ! みんな首尾通りに、席に着いて!」
エリオットとサリー、マールが参列席に腰掛け、ヨゼフは緊張の面持ちで神父台に立った。
セドリックはアリシアの横に立ち、気まずそうな表情でコホンッと咳払いをする。
「……俺がその、エスコートするんだってよ。俺なんかが父親がわりだなんて、笑っちまうよな……」
溢れそうになる涙を必死に堪え、アリシアはセドリックの腕に手を回す。
「貴方が父親役なんて……すごく、すごく嬉しいです、セドリック。『アリシア』の時から貴方を、本当の父親のように慕っていましたから……」
セドリックは前を向いたまま、震える声で呟いた。
「結婚おめでとう、アリィ。俺の可愛い娘っ子よ……」
11
あなたにおすすめの小説
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
白い結婚に、猶予を。――冷徹公爵と選び続ける夫婦の話
鷹 綾
恋愛
婚約者である王子から「有能すぎる」と切り捨てられた令嬢エテルナ。
彼女が選んだ新たな居場所は、冷徹と噂される公爵セーブルとの白い結婚だった。
干渉しない。触れない。期待しない。
それは、互いを守るための合理的な選択だったはずなのに――
静かな日常の中で、二人は少しずつ「選び続けている関係」へと変わっていく。
越えない一線に名前を付け、それを“猶予”と呼ぶ二人。
壊すより、急ぐより、今日も隣にいることを選ぶ。
これは、激情ではなく、
確かな意思で育つ夫婦の物語。
出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→
AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」
ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。
お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。
しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。
そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。
お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
【完結】私は聖女の代用品だったらしい
雨雲レーダー
恋愛
異世界に聖女として召喚された紗月。
元の世界に帰る方法を探してくれるというリュミナス王国の王であるアレクの言葉を信じて、聖女として頑張ろうと決意するが、ある日大学の後輩でもあった天音が真の聖女として召喚されてから全てが変わりはじめ、ついには身に覚えのない罪で荒野に置き去りにされてしまう。
絶望の中で手を差し伸べたのは、隣国グランツ帝国の冷酷な皇帝マティアスだった。
「俺のものになれ」
突然の言葉に唖然とするものの、行く場所も帰る場所もない紗月はしぶしぶ着いて行くことに。
だけど帝国での生活は意外と楽しくて、マティアスもそんなにイヤなやつじゃないのかも?
捨てられた聖女と孤高の皇帝が絆を深めていく一方で、リュミナス王国では次々と異変がおこっていた。
・完結まで予約投稿済みです。
・1日3回更新(7時・12時・18時)
婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他
猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。
大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる