山ちゃんと私

ひゃくえんらいた

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山ちゃんと私と用水路

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 よく晴れた日曜日、私は町の中をぶらぶらしていた。
 住宅街から大きな道路に出て、コンビニの駐車場に差し掛かった時、コンビニとマンションの間の用水路で、何かがちらりと動いたのが見えた。

「……?」

 気になった私は駐車場から用水路を覗き込む。ゆらゆら水面が揺れていて、ちょろちょろと流れる音と、じめっとした匂いが鼻をつく。

「あ!」
「あ」

 そこには山ちゃんが網を持って、苔の生えた用水路のヘリにしゃがんでいた。

「よくここが分かったな」

 山ちゃんはにやりと笑った。
 私はものすごく驚いたのがバレないように、「まあね」と言って山ちゃんの網に目を向ける。

「何かいるの?」
「んー?」

 山ちゃんが答えないので、仕方なく私は山ちゃんのそばへ行くことにする。
 用水路の細いへりに慎重に足を伸ばし、コンクリートの壁を掴んで恐る恐る進めば、山ちゃんがちょいちょいと用水路の中を指差した。

「……ちょ、ザリガニでっか! ハサミ立ててる! ひゃ! 泳いだ!」

 私は目を見開いて叫んだ。
 そこには大きなザリガニが、しかもたくさん用水路の中を闊歩かっぽしていたのだ。

「え? 何匹とった?」
「選りすぐりのデカいの三匹」

 山ちゃんの脇の虫かごで、大きなザリガニが三匹、威嚇いかくしあったり丸まったりとがちゃがちゃしている。

「え、私も取りたい!」
「この網は俺のだからな」
「ええぇ、そこをなんとか! よ、大統領!」

 山ちゃんをじっと見れば、山ちゃんは少し口をひん曲げてから、「ん」と網を突き出した。

「ありがと! よーし、一番大きいの取るからね!」

 それから私と山ちゃんは、二人で網を貸し借りしながら、結局七匹もザリガニを捕まえた。
 気付けば辺りは薄暗く、見上げた用水路の細い空は、水色と橙色だいだいいろが混ざり合っている。

「帰るか」
「んー、だね。ザリガニどうするの?」

 本当はもう少し遊びたかったけど、私は頷いて山ちゃんに問いかけた。

「んー、どうするかな」

 山ちゃんはザリガニをじっと見てから、用水路に視線を向ける。
 山ちゃんは可哀想って顔をしていた。

「オッケー逃がそ! じゃあね、ザリガニ」
「おう! また会おうな、ザリガニ」

 虫かごから出たザリガニはすぐに物陰に隠れてしまった。
 私はせっかく捕まえたのに少し寂しい気がしたけど、また来ればいいか、と思い直す。
 「また来る?」と聞きながら山ちゃんと二人で用水路を出た。
 夕暮れの帰り道、網を肩に添えて歩きながら、山ちゃんは「来るだろ?」と笑う。
 同じ気持ちなのが嬉しくて、私は「オッケー、次は十匹ね!」と胸が弾んでニッと笑い返した。

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