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山ちゃんと私と駄菓子屋
しおりを挟む遠足の前の日は、街にひとつしかない駄菓子屋さんが混雑する。
店内はちょっと古臭い匂いがするけど、三百円を握り締めて、友達同士で買いに来たお客でいっぱいだ。
私も山ちゃんも例にもれず、お気に入りのおみくじチョコとか、三個のうちひとつがハズレのすっぱいガムとか、色々買ってお店を出た。
そして真向かいの自動販売機の前に這いつくばる、ぽっちゃりなのが憎めない、クラスメイトの桜井くんを見つけたのだ。
「桜井じゃん、何やってんの?」
山ちゃんの呼びかけに桜井くんはびっくりして顔を上げる。その顔に煤けた汚れが付いていて、私は思わずぷっと吹き出してしまった。
「笑うなよ! 三百円落としちゃったんだ!」
桜井くんは太い腕を自販機の中に一生懸命押し込めながら、泣きそうな顔で怒った。
「どれどれ?」
山ちゃんは何の躊躇いもなく、すぐに桜井くんの横にはいつくばって自販機の下を覗き込む。
私はげっと唇をつぶしてその光景を見下ろした。
子供とはいえ人が二人も地面に這いつくばっているのは、変な光景だ。
「うーん、ありゃだいぶ奥だな」
「山下くんの細い腕なら取れない!?」
「ギリギリ無理」
山ちゃんはそれでも諦めずに、うんうんと自販機の下に手を伸ばし続ける。
その間に私は、駄菓子屋さんから外用のほうきを借りて来た。
「山ちゃん、これでどう?」
「おぉ、ナイス! これなら」
山ちゃんは見事にほうきで三百円を取り出した。
桜井くんは目をキラキラさせて、お礼を叫んで駄菓子屋へと駆けて行った。
「どうだ? すげぇだろ!」
すっかり顔に煤汚れをつけた山ちゃんは、そう言ってにやりと笑った。
「私が借りたほうきのおかげでしょ」
「はは、それはそう!」
笑いながら、山ちゃんはイタズラっぽく私を見る。
「でも取ったのは俺だし? 明日桜井からお菓子一個くらい貰わないとな」
「それなら、私も!」
駄菓子屋からはお菓子を抱えた桜井くんが嬉しそうに出て来る。それを見た私は胸がほっこりして、山ちゃんとにししと笑い合った。
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