山ちゃんと私

ひゃくえんらいた

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山ちゃんと私と友情

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「お前らって、付き合ってんの?」

 クラスメイトの吉田がそう言ってニヤニヤと笑って来た。
 私と山ちゃんだけじゃない、何人もで休み時間に定規じょうぎバトルをしている真っ最中だった。

「っバカ! そんな訳ないじゃん!」

 反射的にガタリと机を揺らしながら私は立ち上がった。その拍子にギリギリの所で机の上に残っていた山ちゃんの定規が呆気なく床に落ちて、山ちゃんの「あぁ!」という間の抜けた声が響く。

「いつも一緒に居るじゃん、男子と女子でおっかしいぜ!」
「っおかしくない! あっち行ってよ!」

 私は思わず吉田の肩を力いっぱい押し退けた。
 吉田は机にぶつかって、顔をカッと赤くする。
 そこでチャイムが鳴って、入って来た先生に一喝いっかつされて、私達は席に戻った。
 その後は話がぶり返すこともなく、私だけがもやもやしたまま帰りの会が終わった。
 子供達がいっせいに立ち上がる音と、ざわざわと楽しそうな声が教室に溢れ出す。
 私は急いで教室を出た。
 一人っきりの通学路、いつもより風を冷たく感じる。
 どうして山ちゃんは何も言わなかったのか、怒らなかったのか、もやもやのせいでどんどん眉間にしわが寄っていく。

「おーい! 待てよ!」

 聞こえて来た声に私はびくりとした。
 後ろから追いかけて来る山ちゃんに、何だか会いたくなくて私は早足になる。
 だけどその時、私は思い出したんだ。
 あの日。同じようにからかわれて落ち込んでいた私を、自分だけの隠れ家に連れて行ってくれて、そしてコンクリートの山の中で、にんまり目を細めて笑った、山ちゃんの顔を。
 私は拳を握り締め、足を止めた。
 勢いよく振り返ったら、すぐ後ろまで来ていた山ちゃんは少し驚いて「うお」と身を逸らす。
 そんな山ちゃんを私は覚悟を決めてじっと睨むように見つめた。
 そして、大きく息を吸って、叫んだ。

「山ちゃんは私の親友だから! これからも、一緒に遊ぶから!」

 通学路には他にもたくさん子供がいたし、クラスメイトだってたくさん居た。
 でもだからこそ、私はお腹に力を入れて叫んだ。
 私と山ちゃんのこと、誰かに何か言われたくない。
 からかわれたらもやもやするのは、今でも変わってない。
 だけど周りの声なんか知るもんか、関係あるもんかっ、て。
 今なら無視を決め込んで、何でもなさそうにしている山ちゃんの気持ちが、少し分かるから。

「……当たり前だろ、ばーか」

 山ちゃんは少し目を泳がせてから、ニヤリと口角を上げて笑った。
 私は眉間に力を入れたまま、だけど得意げにニッと笑い返してみせる。

「それで、今日はどこ行く?」
「またザリガニ釣り行こうよ」

 周りの子がざわざわと私たちを見ている中、私達は二人同時に走り出した。
 帰り道には、雲ひとつない青空が広がっていて、私の心もカラッと晴れ渡っていた。



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