山ちゃんと私

ひゃくえんらいた

文字の大きさ
10 / 12

山ちゃんと私と友情

しおりを挟む



「お前らって、付き合ってんの?」

 クラスメイトの吉田がそう言ってニヤニヤと笑って来た。
 私と山ちゃんだけじゃない、何人もで休み時間に定規じょうぎバトルをしている真っ最中だった。

「っバカ! そんな訳ないじゃん!」

 反射的にガタリと机を揺らしながら私は立ち上がった。その拍子にギリギリの所で机の上に残っていた山ちゃんの定規が呆気なく床に落ちて、山ちゃんの「あぁ!」という間の抜けた声が響く。

「いつも一緒に居るじゃん、男子と女子でおっかしいぜ!」
「っおかしくない! あっち行ってよ!」

 私は思わず吉田の肩を力いっぱい押し退けた。
 吉田は机にぶつかって、顔をカッと赤くする。
 そこでチャイムが鳴って、入って来た先生に一喝いっかつされて、私達は席に戻った。
 その後は話がぶり返すこともなく、私だけがもやもやしたまま帰りの会が終わった。
 子供達がいっせいに立ち上がる音と、ざわざわと楽しそうな声が教室に溢れ出す。
 私は急いで教室を出た。
 一人っきりの通学路、いつもより風を冷たく感じる。
 どうして山ちゃんは何も言わなかったのか、怒らなかったのか、もやもやのせいでどんどん眉間にしわが寄っていく。

「おーい! 待てよ!」

 聞こえて来た声に私はびくりとした。
 後ろから追いかけて来る山ちゃんに、何だか会いたくなくて私は早足になる。
 だけどその時、私は思い出したんだ。
 あの日。同じようにからかわれて落ち込んでいた私を、自分だけの隠れ家に連れて行ってくれて、そしてコンクリートの山の中で、にんまり目を細めて笑った、山ちゃんの顔を。
 私は拳を握り締め、足を止めた。
 勢いよく振り返ったら、すぐ後ろまで来ていた山ちゃんは少し驚いて「うお」と身を逸らす。
 そんな山ちゃんを私は覚悟を決めてじっと睨むように見つめた。
 そして、大きく息を吸って、叫んだ。

「山ちゃんは私の親友だから! これからも、一緒に遊ぶから!」

 通学路には他にもたくさん子供がいたし、クラスメイトだってたくさん居た。
 でもだからこそ、私はお腹に力を入れて叫んだ。
 私と山ちゃんのこと、誰かに何か言われたくない。
 からかわれたらもやもやするのは、今でも変わってない。
 だけど周りの声なんか知るもんか、関係あるもんかっ、て。
 今なら無視を決め込んで、何でもなさそうにしている山ちゃんの気持ちが、少し分かるから。

「……当たり前だろ、ばーか」

 山ちゃんは少し目を泳がせてから、ニヤリと口角を上げて笑った。
 私は眉間に力を入れたまま、だけど得意げにニッと笑い返してみせる。

「それで、今日はどこ行く?」
「またザリガニ釣り行こうよ」

 周りの子がざわざわと私たちを見ている中、私達は二人同時に走り出した。
 帰り道には、雲ひとつない青空が広がっていて、私の心もカラッと晴れ渡っていた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おばあちゃんっ子 ーもうこの世界にいないあなたへー

かみつ
児童書・童話
20年以上前に死んでしまった、祖母との大切な思い出を、思い出すままに書いていきます。人はどんなに大事な想いもいつかは忘れていく生き物です。辛いこともそうです。だから、もう2度と思い出すことのないことかもしれない、何気ないことも、書いていきます。 人として、とても素晴らしい、 誰からでも愛されるそんな祖母でした。 今は亡き祖母へ もう届くことのない、わたしの想いをここに書き記します。

神ちゃま

吉高雅己
絵本
☆神ちゃま☆は どんな願いも 叶えることができる 神の力を失っていた

生まれることも飛ぶこともできない殻の中の僕たち

はるかず
児童書・童話
生まれることもできない卵の雛たち。 5匹の殻にこもる雛は、卵の中でそれぞれ悩みを抱えていた。 一歩生まれる勇気さえもてない悩み、美しくないかもしれない不安、現実の残酷さに打ちのめされた辛さ、頑張れば頑張るほど生まれることができない空回り、醜いことで傷つけ傷つけられる恐怖。 それぞれがそれぞれの悩みを卵の中で抱えながら、出会っていく。 彼らは世界の美しさを知ることができるのだろうか。

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

ふしぎなリボン

こぐまじゅんこ
児童書・童話
ももちゃんは、クッキーをおばあちゃんにとどけようとおもいます。 はこにつめて、きいろいリボンをむすびました。 すると……。

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

童話絵本版 アリとキリギリス∞(インフィニティ)

カワカツ
絵本
その夜……僕は死んだ…… 誰もいない野原のステージの上で…… アリの子「アントン」とキリギリスの「ギリィ」が奏でる 少し切ない ある野原の物語 ——— 全16話+エピローグで紡ぐ「小さないのちの世界」を、どうぞお楽しみ下さい。 ※高学年〜大人向き

処理中です...