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誰も望まない主役とパーティー
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「会場の入室前に、御家族に会ってもらいます。」
会場の裏口を通り過ぎて、メイドは隣の応接室の扉を開いた。僕は”ありがとう”と一応礼を言ってから部屋へ入った。部屋の中にいるのは鏡の中に映った自分にどこか似た面影を感じる青年二人瞬時に自分の兄なのだと悟った。申し訳ないが正直に言おう、僕のほうがイケメンだと思う。そして重そうなティアラを頭にのっけているのがお母様で、その隣がお父様。おそらく合っているだろう。
「お兄様、お母様、お父様。僕の誕生日にパーティーを開催していただきありがとう存じます。」
「えぇ、おめでとうアミュレア。王家の顔に泥を塗らないようにするのよ。」
「承知しておりますお母様。好印象を与えられるよう、努力してまいります。」
僕がそう言うと家族は笑いの渦に包まれた。何か、変なことでも行ってしまっただろうかと首をかしげてると兄が口を開いた。
「アミュが好印象を与える?無理に決まっているだろう!最低限の力を持たなかったお前が!好印象...笑わせるなよ!」
その言葉にメイドまでくすくすと笑い始めた。
あまりの期待の無さに、少し胸が痛む気がするが今はそんなことを考えている場合じゃない。何か返答しないと、何か。
「はい。傲慢なことを考えていました、申し訳ございありません。今回、王家の恥にならないよう精一杯努めていきたいと存じます。」
家族に対して精一杯の敬語を使うというとんちんかんな光景に、自分自身でもおかしく思うが敬語を外したら処刑されそうだ。部屋の本を読んでいてよかったと、今日以上に思った日はない。
「オジェマ、アミュレアを舞台袖まで。」
「かしこまりました、国王様。」
閉じていた扉を開き、国王様とその家族が退出するのを見守る。結局、お父様は僕に話しかけてくださらなかった。やはり嫌われている、改めて思うと虚しくなってくる。
「行きますよ。アミュレア様」
「うん、これでも主役だしね。行かないと」
これから表舞台に立つのだ。まだ泣いてはいけない、まだ。部屋に戻るまで。
・
・
・
・
”今宵、第三王子アミュレア・アズレイル様が10歳の誕生日を迎えました。それを祝し、パーティーを開催します!それでは、登場していただきましょう。アミュレア様です!!”
やけにテンションの高い司会が舞台を指さす。僕はすぅ、と空気を吸い込んでは歩き出す。会場は人が多いようで、少しの熱気を感じた。
舞台袖から出れば、当たり前だが僕に視線が集まる。まるで値踏みされているような感覚に少し後退りする。だが、ここで逃げてしまえば廃嫡は逃れられない。”怖い”という自分の感情にふたをして、僕は喋った。
「今日は僕の誕生日に集まってくださりありがとうございます!創造新フィリオ様に感謝をし..今日を過ごしたいと思います。是非、楽しんでいってください。」
そのままぺこり、と頭を下げる。普通ならここで拍手が起こる、はずなのだが流石は心がぶれない王様。拍手はおろか人っ子一人の声もしない。僕はどれほど嫌われているのだろうか。零れそうな涙を無視して顔を上げる。全員の顔には嫌悪が浮かんでるように見える。誰も、僕の話なんて期待していない。誰か、僕を求めてくれないものかと。舞台の上で1人悩んだ。
会場の裏口を通り過ぎて、メイドは隣の応接室の扉を開いた。僕は”ありがとう”と一応礼を言ってから部屋へ入った。部屋の中にいるのは鏡の中に映った自分にどこか似た面影を感じる青年二人瞬時に自分の兄なのだと悟った。申し訳ないが正直に言おう、僕のほうがイケメンだと思う。そして重そうなティアラを頭にのっけているのがお母様で、その隣がお父様。おそらく合っているだろう。
「お兄様、お母様、お父様。僕の誕生日にパーティーを開催していただきありがとう存じます。」
「えぇ、おめでとうアミュレア。王家の顔に泥を塗らないようにするのよ。」
「承知しておりますお母様。好印象を与えられるよう、努力してまいります。」
僕がそう言うと家族は笑いの渦に包まれた。何か、変なことでも行ってしまっただろうかと首をかしげてると兄が口を開いた。
「アミュが好印象を与える?無理に決まっているだろう!最低限の力を持たなかったお前が!好印象...笑わせるなよ!」
その言葉にメイドまでくすくすと笑い始めた。
あまりの期待の無さに、少し胸が痛む気がするが今はそんなことを考えている場合じゃない。何か返答しないと、何か。
「はい。傲慢なことを考えていました、申し訳ございありません。今回、王家の恥にならないよう精一杯努めていきたいと存じます。」
家族に対して精一杯の敬語を使うというとんちんかんな光景に、自分自身でもおかしく思うが敬語を外したら処刑されそうだ。部屋の本を読んでいてよかったと、今日以上に思った日はない。
「オジェマ、アミュレアを舞台袖まで。」
「かしこまりました、国王様。」
閉じていた扉を開き、国王様とその家族が退出するのを見守る。結局、お父様は僕に話しかけてくださらなかった。やはり嫌われている、改めて思うと虚しくなってくる。
「行きますよ。アミュレア様」
「うん、これでも主役だしね。行かないと」
これから表舞台に立つのだ。まだ泣いてはいけない、まだ。部屋に戻るまで。
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”今宵、第三王子アミュレア・アズレイル様が10歳の誕生日を迎えました。それを祝し、パーティーを開催します!それでは、登場していただきましょう。アミュレア様です!!”
やけにテンションの高い司会が舞台を指さす。僕はすぅ、と空気を吸い込んでは歩き出す。会場は人が多いようで、少しの熱気を感じた。
舞台袖から出れば、当たり前だが僕に視線が集まる。まるで値踏みされているような感覚に少し後退りする。だが、ここで逃げてしまえば廃嫡は逃れられない。”怖い”という自分の感情にふたをして、僕は喋った。
「今日は僕の誕生日に集まってくださりありがとうございます!創造新フィリオ様に感謝をし..今日を過ごしたいと思います。是非、楽しんでいってください。」
そのままぺこり、と頭を下げる。普通ならここで拍手が起こる、はずなのだが流石は心がぶれない王様。拍手はおろか人っ子一人の声もしない。僕はどれほど嫌われているのだろうか。零れそうな涙を無視して顔を上げる。全員の顔には嫌悪が浮かんでるように見える。誰も、僕の話なんて期待していない。誰か、僕を求めてくれないものかと。舞台の上で1人悩んだ。
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