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王城で
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本日は珍しく、門の前でアルト様が待っていた。こんなところに居らずとも、部屋までこちらから声をかけに行くというのに。なんで態々...、と疑問が浮かぶ。結局、悩んでもアルト様の考えなんか分かるわけないので早々に諦めて馬車から降りた。
「お出迎えですね、ありがとうございます。」
「会食に遅れられてはたまらんからな。お前はいつも動きが鈍い」
鈍いじゃなくておしとやかなんだよこの野蛮王子!!!と思わなくはないが、笑って誤魔化す。考えを悟られて何か言われる方がよっぽど面倒だ。
「そのネックレス、今まで見たことがないぞ。」
「エル...、レイエルがくれたのです。美しいでしょう?」
服の内側に入ってしまっていたネックレスを引っ張り出して、宝石部分がよく見えるように持つ。
「....、他者からの贈り物など貰うな。お前は俺の許嫁だ」
こんなもの、と恨んだような目でネックレスを見つめ手をかけようとする。___引っ張って壊すつもりだ。
「やめて!!!」
「...!?」
アルト様は驚いたようで硬直し、その隙に僕はアルト様の手を払い退けた。次期国王叩いてしまった...、少しの罪悪感が生まれる。けれど、許嫁だからといってエルから貰ったものを壊していいわけないだろう。
「エルが僕のために選んでくれたんです!そもそも、アルト様は僕に贈り物なんてしないじゃないですか!...失礼します。」
「お兄様、流石によくないのでは?行こう、メウィル。」
僕はさっと手を出したエルの手を掴み、王城の中へと歩き出した。気になって後ろを向くと、唖然とした表情を浮かべるアルト様が居た。
________
毎度毎度、来た時に王様へ絶対挨拶しないといけないのは無駄だと思う。
僕はエルと手を繋いで歩いていて、半分引かれる形で歩いている。エルは行きたくないと、文句言っている自分を知っているから引っ張らないと逃げるとでも思われてるのかもしれない。そして、エルも家族にいい思い出はないのか、沈んだ表情をしていた。
「エル、行きたくないの?」
「...、やだなぁ、行きたくないのはメウィルのほうでしょ!」
「それはぁ、そうだけど...」
「大丈夫だから心配しないで、ね?」
そう言って、エルは手を繋いでいない反対の手で僕の頭を撫でた。
普段のテンションより明らかに低いし、心配になる。そういえば、今まではアルト様と一緒に挨拶に行っていたし、エルと行くのは初めてだということに気づく。繋いでいる手は少し震えているし、明らかに恐怖を噛み潰したような表情をしている。
無理はしないでほしい。
心配をかけている僕が言えたことではないが、大好きな人には幸せであってほしい。そう思ってやまないのだ。
「お出迎えですね、ありがとうございます。」
「会食に遅れられてはたまらんからな。お前はいつも動きが鈍い」
鈍いじゃなくておしとやかなんだよこの野蛮王子!!!と思わなくはないが、笑って誤魔化す。考えを悟られて何か言われる方がよっぽど面倒だ。
「そのネックレス、今まで見たことがないぞ。」
「エル...、レイエルがくれたのです。美しいでしょう?」
服の内側に入ってしまっていたネックレスを引っ張り出して、宝石部分がよく見えるように持つ。
「....、他者からの贈り物など貰うな。お前は俺の許嫁だ」
こんなもの、と恨んだような目でネックレスを見つめ手をかけようとする。___引っ張って壊すつもりだ。
「やめて!!!」
「...!?」
アルト様は驚いたようで硬直し、その隙に僕はアルト様の手を払い退けた。次期国王叩いてしまった...、少しの罪悪感が生まれる。けれど、許嫁だからといってエルから貰ったものを壊していいわけないだろう。
「エルが僕のために選んでくれたんです!そもそも、アルト様は僕に贈り物なんてしないじゃないですか!...失礼します。」
「お兄様、流石によくないのでは?行こう、メウィル。」
僕はさっと手を出したエルの手を掴み、王城の中へと歩き出した。気になって後ろを向くと、唖然とした表情を浮かべるアルト様が居た。
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毎度毎度、来た時に王様へ絶対挨拶しないといけないのは無駄だと思う。
僕はエルと手を繋いで歩いていて、半分引かれる形で歩いている。エルは行きたくないと、文句言っている自分を知っているから引っ張らないと逃げるとでも思われてるのかもしれない。そして、エルも家族にいい思い出はないのか、沈んだ表情をしていた。
「エル、行きたくないの?」
「...、やだなぁ、行きたくないのはメウィルのほうでしょ!」
「それはぁ、そうだけど...」
「大丈夫だから心配しないで、ね?」
そう言って、エルは手を繋いでいない反対の手で僕の頭を撫でた。
普段のテンションより明らかに低いし、心配になる。そういえば、今まではアルト様と一緒に挨拶に行っていたし、エルと行くのは初めてだということに気づく。繋いでいる手は少し震えているし、明らかに恐怖を噛み潰したような表情をしている。
無理はしないでほしい。
心配をかけている僕が言えたことではないが、大好きな人には幸せであってほしい。そう思ってやまないのだ。
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