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1 宝くじ
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「カプリコおいしー。久しぶりに食べたわ」
「たしかに。小6以来かも」
放課後。
風雪高校の、市立にしては珍しい広々とした図書館のすみっこに、ちんまりと存在している図書局室。
その中では、二人の局員がカプリコを食べていた。
「そういえば思ってたんだけど、局室のドアについてる、謎の紙工作?みたいなやつ。あれなんなんだろう」
「あー。先輩がミジンコって言ってた」
「あれミジンコなの!?」
質問した方の局員―加藤 文が、目を丸くしながら食べ終わったカプリコの袋をゴミ箱にそっと入れた。
答えた方の局員―園部 奈都は、文よりもさきに食べ終わっていたカプリコの袋を結んだりして遊んでいる。
「ていうか、私気づいたんだけどさあ」
奈都は袋で遊ぶ手を止め、文に話しかける。
袋を捨てた後、丸椅子に座り直していた文は、奈都の方へと椅子を回転させた。
「学校から駅に行くまでの道の、でっかい通りのとこの宝くじ屋。あの、ローソンの隣りの」
「ああ、雑居ビル的なやつの1階に入ってるところだよね」
奈都は頷く。
「そう、それ。それの入口、どこか知ってる?」
文は困惑した様子で答えた。
「え、宝くじを買うのに入口とか必要なくない?だって、透明の仕切りに穴があいてて、中の人に応対してもらって買えるじゃん」
「いや、買うためのじゃなくて、その中の人が入るところ」
奈都は玉結びにされた袋をゴミ箱に向かって投げた。
「はいナイスシュート!」
「それで、入口がどうかしたの?」
文は結局ゴミ箱に入らなかった袋を拾い、ゴミ箱に入れながら、奈都にたずねた。
「あー、なんか、荷物置きなのかスクラッチするところなのかしらないけど、客側の方にカウンターみたいなのがついてるんだ。その下に、高さ60cmくらい?の、すーごいちっちゃいドアがあってさ、こないだ宝くじ売りのおばさんが、身をかがめてそこから入っていくの見ちゃったんだよね」
「おばさんって言わないの!いつどこで誰が聞いてるのかわからないんだから!はっ!もしかしたら私と奈都、明日には消されてるかも…」
「そ、そうかもしれん…帰り道には気をつけねば。今日は13日の金曜日だし」
文と奈都は顔を見合わせて笑った。
「そんな小さなドアから出入りしてたんだね。駐車場とかにあるやつは普通の扉だろうに、大変だなあ」
「本当にそーだよね。仕事がAIにうばわれるって騒いでるのに、結局まだ普及してないんだなと思った一例だよ」
奈都は腕を組み、深く頷いた。
「そういえば、近所のレストランのロボットが―」
コンコン。
「はーい」
入口のドアに一番近い文が立ち上がった。
異常に建付けの悪いドアを引きながら、文が来訪者に対応する。
奈都はそんな風景を眺めながら、新しいカプリコに手を伸ばすのだった。
「たしかに。小6以来かも」
放課後。
風雪高校の、市立にしては珍しい広々とした図書館のすみっこに、ちんまりと存在している図書局室。
その中では、二人の局員がカプリコを食べていた。
「そういえば思ってたんだけど、局室のドアについてる、謎の紙工作?みたいなやつ。あれなんなんだろう」
「あー。先輩がミジンコって言ってた」
「あれミジンコなの!?」
質問した方の局員―加藤 文が、目を丸くしながら食べ終わったカプリコの袋をゴミ箱にそっと入れた。
答えた方の局員―園部 奈都は、文よりもさきに食べ終わっていたカプリコの袋を結んだりして遊んでいる。
「ていうか、私気づいたんだけどさあ」
奈都は袋で遊ぶ手を止め、文に話しかける。
袋を捨てた後、丸椅子に座り直していた文は、奈都の方へと椅子を回転させた。
「学校から駅に行くまでの道の、でっかい通りのとこの宝くじ屋。あの、ローソンの隣りの」
「ああ、雑居ビル的なやつの1階に入ってるところだよね」
奈都は頷く。
「そう、それ。それの入口、どこか知ってる?」
文は困惑した様子で答えた。
「え、宝くじを買うのに入口とか必要なくない?だって、透明の仕切りに穴があいてて、中の人に応対してもらって買えるじゃん」
「いや、買うためのじゃなくて、その中の人が入るところ」
奈都は玉結びにされた袋をゴミ箱に向かって投げた。
「はいナイスシュート!」
「それで、入口がどうかしたの?」
文は結局ゴミ箱に入らなかった袋を拾い、ゴミ箱に入れながら、奈都にたずねた。
「あー、なんか、荷物置きなのかスクラッチするところなのかしらないけど、客側の方にカウンターみたいなのがついてるんだ。その下に、高さ60cmくらい?の、すーごいちっちゃいドアがあってさ、こないだ宝くじ売りのおばさんが、身をかがめてそこから入っていくの見ちゃったんだよね」
「おばさんって言わないの!いつどこで誰が聞いてるのかわからないんだから!はっ!もしかしたら私と奈都、明日には消されてるかも…」
「そ、そうかもしれん…帰り道には気をつけねば。今日は13日の金曜日だし」
文と奈都は顔を見合わせて笑った。
「そんな小さなドアから出入りしてたんだね。駐車場とかにあるやつは普通の扉だろうに、大変だなあ」
「本当にそーだよね。仕事がAIにうばわれるって騒いでるのに、結局まだ普及してないんだなと思った一例だよ」
奈都は腕を組み、深く頷いた。
「そういえば、近所のレストランのロボットが―」
コンコン。
「はーい」
入口のドアに一番近い文が立ち上がった。
異常に建付けの悪いドアを引きながら、文が来訪者に対応する。
奈都はそんな風景を眺めながら、新しいカプリコに手を伸ばすのだった。
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