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鉄の壁の章
改築 其の三 リリの気持ち
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来人とリリは自宅建築のほとんどを終わらせ、今は昼休みとして食堂に来ている。
リリは大好きな醤油ラーメンを食べながら先ほどの光景を思い出していた。
(ふふ、大きなお風呂だった。あの大きさだったら気軽にライトと入れるね。それにしてもラーメンって美味しいなぁ。ライトと一緒にいるのは楽しい。自分の知らない知識を教えてくれるしね)
この時点でリリは来人にゾッコンだった。
しかし自分から想いと秘密を語ることは出来ない。
シャニが怖いからだ。もし下手に来人に告白でもしようなら、鬼の隊長ことシャニが何をしてくるか分からない。
(隊長のことだから半殺しじゃ済まないよね……)
シャニのことを思うとリリの肌に鳥肌が立つ。
「もうお腹いっぱいなのか? 箸が止まってるぞ」
「え? ご、ごめんね。ちょっと考えてることがあってね」
リリは再びラーメンに手を伸ばす。
想いを伝えられない辛さはあったが、リリは今の状況を楽しんでいた。
なぜなら好きな男と一緒にいられる時間がリディア達に比べ格段に多いからだ。
リディアは探索、アーニャは服飾、そしてシャニは牧畜とそれぞれ担当する仕事があり、朝から夕方にかけてはリリだけが来人と過ごすことが多い。
しかしそれがかえってリリの心をやきもきさせるのだった。
(はぁ……。私もリディア姉達みたいに愛して欲しい。エッチするのは怖いけど、みんなすごく幸せそうな顔してたし)
ラーメンをゆったりすすりながらこんなことを考える。
彼女が想いを伝えられない理由は三つある。
一つ。来人が自分の知識を教えるのに信用たる人物かを見極めること。
これはすでに終わっている。彼と過ごす中で人族でありながら害をなす存在ではないということを理解したからだ。
二つ。先に述べたようにかつての上司であるシャニの存在だ。
鬼の隊長の男を盗るなど、ばれたらリリの命はないと思ったからだ。
そして三つ。これが一番重要かもしれない。
もしリリが来人に想いを伝えたとしよう。
だが幼い容姿を持つ自分を来人が受け入れてくれるとは思えなかったからだ。
リリは用意周到な女である。来人に自分を好きにさせるために様々な作戦を実行してきた。
森で採れたベラドンナから抽出した液体を使い、秘密部隊で使われる媚薬を盛ったこともある。
それが失敗したので部隊随一と謳われた房中術も試してみた。
だが自分が気持ち良くなるだけで終わってしまい、リリは八方塞がりになってしまったのだ。
「はぁ……」
思わずため息をついてしまった。
その様子を見た来人は……。
「どうした、ため息なんかついちゃって」
彼の声を聞いてリリは少しだが怒りを感じる。
(なによ、あんたのせいで悩んでるんじゃない)
と理不尽な怒りを来人にぶつける。
普段ならこんなことは聞かないのだが、思いきってこんなことを聞いてみた。
「ねぇ、リディア姉達ってライトのお嫁さんなの?」
「えぇっ!? い、いや、違うけど。ま、まぁそのうち結婚するかもな……」
「ならリリもライトと結婚する! いいでしょ! ライトのお嫁さんになりたいの!」
「…………」
突然の告白に来人は言葉を失った。
もちろんいつかはリディア達と結婚はするのだろうとは思っていたが、リリと結婚はさすがに無理だろうと考えた。
(うぅ……。やっぱり私なんかを好きになってくれないんだ)
とリリは悲しい気持ちになる。
来人はその様子を見てこんなことを言った。
「うーん、リリは可愛いけど結婚するのはまだ早いだろ。後10年経って大人になったらな。その時にリリの気持ちが変わらなかったらまた言ってくれよ」
「えっ? い、今のもう一回言って」
どの部分を? 来人は思った。
リリを悲しませまいと今言える精一杯のことを言ったつもりだったが。
とりあえずリピートすることに。
「リリは可愛いけどまだ子供だ。10年後に同じことを言ってくれ」
「え? わ、私って可愛いの?」
リリはこの世界の基準ではさして美しい容姿ではない。
そしてエルダードワーフ特有の姿からか同種族内で結ばれることがほとんどだ。
そして王都では幼児性愛《ぺドフィリア》は大罪であり、最悪死刑になる可能性もある。
無用な疑いを避けるために、王都に住む者は差別こそしなかったがエルダードワーフを避けていた。
つまり幼い容姿のリリは受け入れ難いものだったのだ。
しかし地球基準ではどうだ?
彼女の愛らしい顔、発達しかけた胸、小さなお尻。
種族特有の瞳はしてはいるが、それがリリの魅力を引き立てている。
地球ならばリリはその手の紳士が泣いて喜ぶほどの美少女に見えるのだ。
「あぁ、誰が見ても可愛いと思うぞ」
「ほ、ほんとに? なら私が大人になったら結婚してくれる?」
リリは震える声で聞いてみた。
大人になったら。リリはそう言った。
彼女は成人を異形に囚われる二十年前に迎えている。
とっくに大人なのだ。
来人は微笑んでから……。
「いいよ」
リリのプロポーズを受け入れてくれた。
そしてリリは思う。
(よっしゃー! 言質とったー!)
来人の言葉でリリはやる気になった。
そしてリディア達より先にプロポーズを受けてくれたことに優越感を感じていた。
リリはどんぶりに残ったスープを飲み干す!
そして!
「ごちそうさま! ほら! 水路を作りに行くんでしょ! 早く行こうよ!」
「お、おう」
来人の手を引いて食堂を出る。
そして湖へと向かっていくのだった。
リリは大好きな醤油ラーメンを食べながら先ほどの光景を思い出していた。
(ふふ、大きなお風呂だった。あの大きさだったら気軽にライトと入れるね。それにしてもラーメンって美味しいなぁ。ライトと一緒にいるのは楽しい。自分の知らない知識を教えてくれるしね)
この時点でリリは来人にゾッコンだった。
しかし自分から想いと秘密を語ることは出来ない。
シャニが怖いからだ。もし下手に来人に告白でもしようなら、鬼の隊長ことシャニが何をしてくるか分からない。
(隊長のことだから半殺しじゃ済まないよね……)
シャニのことを思うとリリの肌に鳥肌が立つ。
「もうお腹いっぱいなのか? 箸が止まってるぞ」
「え? ご、ごめんね。ちょっと考えてることがあってね」
リリは再びラーメンに手を伸ばす。
想いを伝えられない辛さはあったが、リリは今の状況を楽しんでいた。
なぜなら好きな男と一緒にいられる時間がリディア達に比べ格段に多いからだ。
リディアは探索、アーニャは服飾、そしてシャニは牧畜とそれぞれ担当する仕事があり、朝から夕方にかけてはリリだけが来人と過ごすことが多い。
しかしそれがかえってリリの心をやきもきさせるのだった。
(はぁ……。私もリディア姉達みたいに愛して欲しい。エッチするのは怖いけど、みんなすごく幸せそうな顔してたし)
ラーメンをゆったりすすりながらこんなことを考える。
彼女が想いを伝えられない理由は三つある。
一つ。来人が自分の知識を教えるのに信用たる人物かを見極めること。
これはすでに終わっている。彼と過ごす中で人族でありながら害をなす存在ではないということを理解したからだ。
二つ。先に述べたようにかつての上司であるシャニの存在だ。
鬼の隊長の男を盗るなど、ばれたらリリの命はないと思ったからだ。
そして三つ。これが一番重要かもしれない。
もしリリが来人に想いを伝えたとしよう。
だが幼い容姿を持つ自分を来人が受け入れてくれるとは思えなかったからだ。
リリは用意周到な女である。来人に自分を好きにさせるために様々な作戦を実行してきた。
森で採れたベラドンナから抽出した液体を使い、秘密部隊で使われる媚薬を盛ったこともある。
それが失敗したので部隊随一と謳われた房中術も試してみた。
だが自分が気持ち良くなるだけで終わってしまい、リリは八方塞がりになってしまったのだ。
「はぁ……」
思わずため息をついてしまった。
その様子を見た来人は……。
「どうした、ため息なんかついちゃって」
彼の声を聞いてリリは少しだが怒りを感じる。
(なによ、あんたのせいで悩んでるんじゃない)
と理不尽な怒りを来人にぶつける。
普段ならこんなことは聞かないのだが、思いきってこんなことを聞いてみた。
「ねぇ、リディア姉達ってライトのお嫁さんなの?」
「えぇっ!? い、いや、違うけど。ま、まぁそのうち結婚するかもな……」
「ならリリもライトと結婚する! いいでしょ! ライトのお嫁さんになりたいの!」
「…………」
突然の告白に来人は言葉を失った。
もちろんいつかはリディア達と結婚はするのだろうとは思っていたが、リリと結婚はさすがに無理だろうと考えた。
(うぅ……。やっぱり私なんかを好きになってくれないんだ)
とリリは悲しい気持ちになる。
来人はその様子を見てこんなことを言った。
「うーん、リリは可愛いけど結婚するのはまだ早いだろ。後10年経って大人になったらな。その時にリリの気持ちが変わらなかったらまた言ってくれよ」
「えっ? い、今のもう一回言って」
どの部分を? 来人は思った。
リリを悲しませまいと今言える精一杯のことを言ったつもりだったが。
とりあえずリピートすることに。
「リリは可愛いけどまだ子供だ。10年後に同じことを言ってくれ」
「え? わ、私って可愛いの?」
リリはこの世界の基準ではさして美しい容姿ではない。
そしてエルダードワーフ特有の姿からか同種族内で結ばれることがほとんどだ。
そして王都では幼児性愛《ぺドフィリア》は大罪であり、最悪死刑になる可能性もある。
無用な疑いを避けるために、王都に住む者は差別こそしなかったがエルダードワーフを避けていた。
つまり幼い容姿のリリは受け入れ難いものだったのだ。
しかし地球基準ではどうだ?
彼女の愛らしい顔、発達しかけた胸、小さなお尻。
種族特有の瞳はしてはいるが、それがリリの魅力を引き立てている。
地球ならばリリはその手の紳士が泣いて喜ぶほどの美少女に見えるのだ。
「あぁ、誰が見ても可愛いと思うぞ」
「ほ、ほんとに? なら私が大人になったら結婚してくれる?」
リリは震える声で聞いてみた。
大人になったら。リリはそう言った。
彼女は成人を異形に囚われる二十年前に迎えている。
とっくに大人なのだ。
来人は微笑んでから……。
「いいよ」
リリのプロポーズを受け入れてくれた。
そしてリリは思う。
(よっしゃー! 言質とったー!)
来人の言葉でリリはやる気になった。
そしてリディア達より先にプロポーズを受けてくれたことに優越感を感じていた。
リリはどんぶりに残ったスープを飲み干す!
そして!
「ごちそうさま! ほら! 水路を作りに行くんでしょ! 早く行こうよ!」
「お、おう」
来人の手を引いて食堂を出る。
そして湖へと向かっていくのだった。
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