旦那様と僕~それから~

三冬月マヨ

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それぞれの絆

【雪】歴史は繰り返す

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「…ボクは病気なのです…」

 お屋敷の茶の間にて、月兎つきと様が僕の前で正座をして項垂れています。
 項垂れてしまいます前の月兎様の丸い瞳には、じわりとした涙が浮かんでいました。
 今日、ゆかり様は、異動になります橘様の送迎会で帰宅が遅いです。職場の集まりです。と云う事は、せい様も一緒です。今はえみちゃん様が帰って来ていますが、月兎様と星様はお二人暮らしです。まだ幼い月兎様ですから、星様のお帰りが遅い時は、僕がお預かりしているのです。今宵の集まりには、えみちゃん様も参加されるとの事ですからね。
 今日はお役目を終えて、こちらへ帰って来ましたみくちゃん様も一緒です。そのみくちゃん様は、台所で夕餉の準備をして下さっています。月兎様がお話しがあると云う事でしたので、みくちゃん様が気を遣って下さったのです。
 そして、月兎様のお話しを聞いていたのですが…。

「…それも、不治の病なのです…」

 揃えられた脚の上に置かれた手は、ぎゅっと着物の裾を掴んでいまして、見ている僕の方が痛いぐらいです。

「えぇと…落ち着いて下さい、月兎様。詳しく症状を話して戴けませんか? 月兎様が知らないだけで、僕は知っているのかも知れませんし」

 …一体何でしょうか…この既視感は…?

「…はい、雪兄様…。…あの…お漏らしを…」

 ……何故でしょうか…この後に続く言葉を僕は良く知って居る気がします…。

「…朝…起きたら…褌が湿っていて…でも…おしっこと違って…べたべたと…」

 …そして、僕が何を言うのかも…。

「…月兎様…安心して下さい。それは病気ではありませんよ。健康な証ですし、大人への階段を一つ上ったと云う事ですから、とても喜ばしい事なのですよ」

 …あの日、紫様はどの様なお気持ちで僕の言葉を聞いていたのでしょうか…?

「…おとな…ですか…?」

「はい、そうです」

「…おとな…」

 "大人"と繰り返します月兎様に、僕は諭す様にゆっくりと語り掛けます。

「はい。それで、ですね月兎様。それはこれからも起こる事でして…その…定期的に体外に出さなければなりません」

「…だす…」

「…えぇと…少々お待ち戴けますか?」

 僕は月兎様にお断りを入れまして、その場を一旦離れます。
 何と言いますか…やはり改めて言葉にしようとしますと、気恥ずかしさと云う物が先行してしまいますね…その先に続く物を知ってしまいました今となりましては…。…本当に、あの日の僕は何を言ってしまったのでしょうか?
 知らず熱くなる頬を押さえまして、僕は自分のお部屋へと向かったのでした。

 ◇

「へえ~。話には聞いていたけど、これがマル秘の相楽さがらのダンナの文書かい」

 …マル秘とは…? 機密文書と云う物でもないのですが…。
 今、月兎様が視線を落としていますのは、十年前に相楽様が書いて下さった物です。
 真面目に読んでいます月兎様の隣で、みくちゃん様がそれを覗き込んでいます。

「…これは…みんながしている事なのですか…?」

「はい、そうですよ。ですから、恥ずかしがったり、悪い事だと思う必要は無いのです」

 月兎様の問いに僕は頷きます。
 これで理解して戴けたものと思いました僕は、その後に続く月兎様の言葉に心の底から驚いてしまいました。

「雪兄様も、これをなさっているのですか?」

「ふえっ!?」

「ああ、アタイもそれは興味あるねえ。これに書いてあるのと同じ事をしたのかい?」

 更にはみくちゃん様も畳み掛けて来まして、僕は情けない声を出す事しか出来ません。

「ふえっ!? ふえっ!?」

「教えて下さい、雪兄様。悪い事ではないのですよね?」

「ふぇ…」

 真っ直ぐと僕を見詰めて来ます月兎様の丸い瞳は不安に揺れている様です。
 みくちゃん様は、それはとても楽しそうなお顔をされてますが…。
 これは…本当にあの日の再現なのでしょうか…?
 …ああ…僕もあの日の紫様の様に畳の上に倒れてしまいたいです…。
 …ですが、そう云う訳にも行きませんよね…月兎様の不安を解消させませんと…。

「…ええと…僕は…その…自分でした事は…無いのです…」

「え?」

「は?」

 思わず俯いてしまいました僕の耳に、月兎様とみくちゃん様の驚きの声が届きます。

「え…それは…どう云う事ですか…?」

「まさか、雪緒ゆきお君、勃起しないのかいッ!?」

「違います! そうなる前に紫様がして下さるのですっ!」

 みくちゃん様の驚愕に満ちた声につられまして、つい僕も声を大きくしてしまいました。
 …これがまさかあの様な結果になるとは思わなかったのです。

 夕餉を終えましたら、月兎様が星様をお迎えに行くと言い出しました。
 まだ早いですよ。と。それに、星様とえみちゃん様がこちらへと来る事になっているのですから、と言いましても、早く会いたいと重ねて言われてしまいまして、早いですけど…と、みくちゃん様と三人で会場となりますお店に向かったのでした。
 そしてお店に入り、星様のお姿を目にした瞬間に、月兎様はそれを口にされたのでした。

「ボクも雪兄様が紫おじさまにされたみたく、星兄様におちんちんを弄って欲しいですっ!!」

 と…――――――――――――――――。
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