矢は的を射る

三冬月マヨ

文字の大きさ
11 / 57
ギャル親父は壁になりたい

11.出歯亀いや、出歯壁だ

しおりを挟む
『保健室でえろえろのお約束キタ――(゜∀゜)――!! なん、これ、なんこれっ!? 羽間はざま、ワイシャツ開けてるけど上のボタンは留まってるし、そんでネクタイは緩んでいて、チラチラ見える赤く尖った乳首いんやらすい~っ!! しかし結構なブツをお持ちですねっ!! やだ、もう、何だよ、そのお汁!! ププッ!! 顔赤くして涙目で睨まれても怖くありましぇーん! 僕はまだイきましぇーんってか! 松重まつしげは、もうグログロの赤黒さっ!! 白衣は着たまま、上半身の衣服には乱れは無いのに、下半身、太腿まで晒すって、どんな性癖!! って、あんな太いのが本当に入るんだっ!! てか、これがギャップ萌えってヤツ!? 穏やかそうな松重が攻めで、見た目的にも攻めな羽間が受けとかウケるって、ダジャレじゃないぞっ! てか受けがウケる( ̄m ̄〃)ぷぷっ!』

 と、BL脳が爆走している合間にも、目の前で事態は動いていた。

「てっめ、何時まで…って、お、い…っ…!!」

 顔を赤くした羽間先生が、目尻に涙を浮かべて睨んで来るが、それは妙な色気を孕んでいた。
 ああ…羽間先生はプライベートだと、そんな口調なんだと、ぼんやりと思う。
 切れ長な目に、引き締まった腹筋等を見れば、その方が"らしい"な、と思った。

「見られた物は仕方がないよ。俺、まだイッてないし」

 そんな羽間先生とは対照的に、松重先生は落ち着いた物だ。
 物腰が柔らかで、穏やかな笑顔を何時もは浮かべている筈なのだが、今はニヒルとも言える笑いを浮かべている。その笑顔のまま、羽間先生の腰を両手で掴み、松重先生が自分の腰を突き上げれば、何とも言えない音が室内に響く。

「んあ…っ…!!」

 その突き上げに、羽間先生が堪らずと云った様に声を上げ、背を仰け反らせ、喉を晒す。ぴゅるっと、羽間先生のペニスからあられもない液体が飛び出し、羽間先生と松重先生の身体へと掛かって行く。

「お、おい…」

「あ」

 矢田にグイッと腕を引かれて、俺は我に返った。

「あ、ああ…大変失礼しました。俺達は馬に蹴られて死んできます。行こう、矢田」

 いや、返っていないのかも知れない。

 矢田の肩を抱いて、俺は二人に背を向けて歩き出し、保健室を後にした。
 『あ、そう? 気を付けてね』とか『はあ!?』とか、そんな声が聞こえた気がするが、耳を通り過ぎて行った。

「ほら、のど飴だ。残り少ないから袋ごとあげるよ」

 既に誰も居ない職員室に入り、俺は自分の机の引き出しからのど飴を取り出して矢田に渡す。

「…落ち着いてんだな…デキてるって知ってたのか? 的場のくせに…」

 のど飴の袋を受け取りながら、ぼそぼそと話す矢田に俺は『あ~』と言いながら、首の後ろを掻く。

「いや、知らなかったよ。そう云えば、お前、俺の事を止めていたなあ…お前こそ知って…って、俺のくせにって何だ」

 何やら失礼な事を言わなかったか、こいつ? と思ったが、矢田はそれを無視して何処か嬉しそうな声で喋る。

「知らなかったのに、あんな落ち着いてたのか…的場って、やっぱ…」

「いや、かなり驚いたけどな? ほら、それ舐めながら帰れ」

 そう言って俺は矢田に背中を向けて、鞄に必要な物を詰めて行く。

 大いに驚いたけどなあ…頭の中では盛大に喚いていたし。今だって、これをアオッターで叫んだら、先輩方がどんな反応をするのか気になっているし、田中さんはネタにして良いかと言うだろうなとか、そんな事を思っているし。まあ、しかし、あの二人の事を叫ぶのは、流石にいかんだろう。BL脳としては、叫びたいが。

「…好きだな…」

「ん?」

 そののど飴が好きなのか? と、聞く前にトンッと背中に衝撃を受けた。
 
「へ?」

 いや、矢田が俺の腰に手を回して、後ろから抱き付いている。

「…俺、的場が好きだ。寮に入って、片付けの合間に下見に来て、弁当を食ってるのを見た時から…」

 ぎゅうっと腰に回した矢田の腕に力が入って、締め付けられ更に密着されて、尻の辺りに違和感を覚えた。

「は?」

 何だ? 何か硬い物が当たってる気がするんだが?
 肩の辺りにふわふわの茶髪が見える。その辺りから、やたらと熱の籠った吐息が掛かって、俺はネジの切れたゼンマイ仕掛けの人形の様に身体が固まってしまった。

「…的場は…男同士とか気にしないんだろ? 想う気持ちは自由つってたし…松重と羽間がしてた事…俺も的場としてぇ…」

「え」

『おほーっ! 煽られ告白キタ――(゜∀゜)――!! 禁断の職員室で盛っちゃう? 盛っちゃう!?』
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。 ……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、 気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。 「僕は、あなたを守ると決めたのです」 いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。 けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――? 身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。 “王子”である俺は、彼に恋をした。 だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。 これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、 彼だけを見つめ続けた騎士の、 世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。

【完結】毎日きみに恋してる

藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました! 応援ありがとうございました! ******************* その日、澤下壱月は王子様に恋をした―― 高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。 見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。 けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。 けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど―― このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。

ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜

古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。 かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。 その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。 ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。 BLoveさんに先行書き溜め。 なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。

【完結】アイドルは親友への片思いを卒業し、イケメン俳優に溺愛され本当の笑顔になる <TOMARIGIシリーズ>

はなたろう
BL
TOMARIGIシリーズ② 人気アイドル、片倉理久は、同じグループの伊勢に片思いしている。高校生の頃に事務所に入所してからずっと、2人で切磋琢磨し念願のデビュー。苦楽を共にしたが、いつしか友情以上になっていった。 そんな伊勢は、マネージャーの湊とラブラブで、幸せを喜んであげたいが複雑で苦しい毎日。 そんなとき、俳優の桐生が現れる。飄々とした桐生の存在に戸惑いながらも、片倉は次第に彼の魅力に引き寄せられていく。 友情と恋心の狭間で揺れる心――片倉は新しい関係に踏み出せるのか。 人気アイドル<TOMARIGI>シリーズ新章、開幕!

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

処理中です...