矢は的を射る

三冬月マヨ

文字の大きさ
51 / 57
番外編

オセロじゃない・3(※リバ)

しおりを挟む
「うご…っ…!」

 力を抜こうとしてはいる。
 いるんだけど…ろーたのチンコ、本当にずっしりどっしりと存在感があり過ぎんだよっ!!
 なんとか、ぐにぐにと亀の子が挿入はいったけど、竿はまだだ。
 汗に塗れて、ふーふーと息を吐くろーたは辛そうで、見てるこっちも苦しくなる。
 いや、物理的に苦しいけど、それは脇へ投げて、心理的、感情的にも。
 羽間はざまのアホ、ボケ、カス。
 って、違うか。
 俺が怖がらないで、ちゃんとディルドとか使ってれば良かったんだ。
 けど、怖いのもあるけどさ…指は仕方ないとしても…チンコれんなら、ろーたのしか欲しくなかったんだよ…。
 うう…俺って、我が儘。
 やっぱ、まだまだガキだ。
 でも…まあ…良かったな…俺の…こんな立派じゃなくて。
 俺、ここまで辛くなかったし、ろーたも多分、そうだった筈だ。

「んあ…っ…!」

 何か、変に安心したせいか、力が抜けたんだと思う。
 ぐぬって、ろーたのチンコが動いた。
 けど、それは亀の歩みみたいなもんだ。亀だけに。

「…穂希ほまれ…やはり…後ろからの方が…」

 片方の腕で額に浮かぶ汗を拭いながら、ろーたが言う言葉に俺は噛み付く。

「ぜっっっっってえ、嫌だ!! ろーたの顔見ながらするっ!!」

 ろーたの感じてる顔が見てーんだよ!
 俺の中で感じて、俺の中でイくトコが見たい!

「い、いや、しかし…穂希辛そうだし…俺の…ほら…無駄に大きいし…」

 無駄ぁっ!?
 何が!?

「無駄なんかじゃねーっ!! ろーたに無駄なトコなんて、無駄なモンも、何一つねーよっ!!」

 ガシッて腰を掴むろーたの腕を掴めば、ろーたが驚いた様に、目を瞬かせた。

「ほ…まれ…」

「綺麗に丁寧に箸を持って食べんのとか、ピンと背筋伸ばすのとかっ! 髭の剃り残しとか! ちょっと緩くなった靴下は部屋用に使うとか! 薄くなったタオルは重ねて縫って雑巾にしたりとかっ!! フダンシ爆発して悶えたりしてるトコとかっ!! ぜんぶ、ぜえーんぶっ、ろーただし! そんなろーたがっ、好きなんだかんなっ!!」

「待てっ!! 解った、解ったから落ち着いてくれ!!」

 ろーたに負けず劣らず鼻息荒く、ふーふーとしながら言えば、ろーたは自由な方の手で赤くなった顔を隠して、もう片方の手は俺が掴んでるせいか、ぶるぶると震わせながら、そう叫んで来た。
 …まあ、ふーふーしてんのは、ろーたのチンコが中途半端に引っ掛かってるせいもあるんだろうけど。
 ずっとこのままなんて訳にはいかない。
 ろーたも、俺も辛い。
 怒って興奮したせいか、苦しさとかどっか飛んでった気がする。
 いや、チンコに慣れて来たって言った方が良いのか? どっちでもいっか。

「…少し…楽になった気がするし…もっと挿れてもいんじゃね?」

 俺ん中にチンコ突っ込んでるくせに、真っ赤になってるのが可愛くて笑いながら言えば、ろーたは赤い顔のままで頷いた。

 ぐっ、ぐっ、ぬっ、ぬって、ろーたのチンコが奥へ奥へと挿入って来る。
 笑ったりしたせいで、変に強張ってた身体は解れたけど、やっぱ苦しい。
 腹が圧し上げられるってか、腹ん中が圧迫されるってか。
 けど、ろーたは言った。
 気持ち良いとか、心地良いとかは、俺にはまだ解んねーけど。
 けど、幸せだってのは解る。
 ろーたが、俺の中に居る。
 それだけで、嬉しい。
 熱くて、どくどくと、脈打ってるそれが居るのが嬉しい。
 ろーたも、俺が中に居る時はこんな気持ちなのかな?
 そうだと良いな。
 そうなら嬉しいな。
 おんなじ幸せを感じてくれてんなら、最高に嬉しいし、幸せだ。

「…ろーた…」

 両手を思い切りろーたの方へと伸ばせば、身体を倒して来てくれる。
 ぽたりぽたりと汗を落としながら。
 でも、優しく笑いながら。
 首に腕を回して引き寄せて、近付いて来た唇に軽く俺の唇を合わせれば『ふっ』て、ろーたが息を吐いて、頭を撫でてくれた。

「…ありがとう…」

 なんで、ろーたが礼を言うんだろ。
 礼を言いたいのは、俺なのに。
 そう言おうと思った。
 けど、頑張ったなって感じで、優しく頭を撫でてくれるのが嬉しくて、やっぱり、それが幸せで。

「愛してんぞ」

 気が付いたら、そんな言葉を口にしていた。
 頭を撫でていたろーたの手が、ぴたりと止まる。

「…そ、んな…」

「…ろーた?」

 顔を赤くしたり青くしたり、目は落ち着きなくうろうろさせるろーたに、俺は一気に不安になった。
 もしかして、言ったら駄目なヤツだった?
 ガキのくせに何言ってんだって、思われた?
 え? 俺、ろーたに嫌われる?
 いや、嫌われた?
 チンコ挿れたまんまで?

「ろ、ろーた…今の…」

「…また、先を越された…」

 今の無しって言おうとしたら、目を真っ赤にしたろーたが呟いた。

「へ?」

 間抜けな声を出した俺に、ろーたが眉をへにゃりと下げて、困った様に笑った。

「本当に、穂希には何時も驚かされる…」

 けど、声は全然困ってなくて。
 優しくて嬉しそうな、そんな声だ。

「え、なにが?」

 俺、驚かせてるつもりなんてねーけど?

「夢で穂希に"愛してる"って言われたから、現実では俺が先に言おうと思っていたのに…」

 なにっ!?

「え? え? ろーた、俺の夢見た? 夢ん中の俺、どうだった?」

 ろーたが俺の夢を見てくれてた?
 何それ?
 そんな嬉しい事、もっと先に教えてくれよ。
 てか、何で夢の中の俺に先越されてんだよ!
 俺のくせに、何言ってんだよ!

「…少し強引だったが…格好良かった…」

 んおっ!?

「え、マジ!?」

 めちゃくちゃ顔を赤くして言うろーたに、俺は瞬きを繰り返す。
 信じらんねーけど、嘘なんかじゃない。
 ろーたの顔を見れば解る。
 照れてるけど、めっちゃ嬉しそうってか、嬉しかったんだな。

「ああ」

 その証拠に、ろーたは迷いなく、力強く頷いてくれた。
 夢は願望を映す鏡って言うもんな。
 そっか、強引なのが良いのか。
 で、ろーたは俺に格好良くなっ…って…。

「…て、今の俺は、やっぱ格好良くねーって事じゃん…」

 思わずしょぼくれた俺の耳に、ふはって噴き出したろーたの声が聞こえた。

「…笑うなよ…」

「いや。穂希は、可愛いし…格好良いよ」

「なんか、おまけみたいに言われた…」

 カッコいいより、可愛いが先に来るんだな。
 で、イイ男とは言われないんだな…トホホだ。

「いや、本当に。こんなに、真っ直ぐ体当たりして来てくれるのなんて、穂希しかいない。…穂希の壁になりたいだなんて、到底無理な話だった」

 でも、頭撫でながら言われたそれが、無性に嬉しくて。
 ろーたの手が、目が、声が優しくて。
 褒められてんのか、おだてられてんのか、とにかく、その言葉にめちゃくちゃに気持ちが持ち上げられて、身体も何か軽くなった気がする。
 俺って、単純だ。いや、知ってたけど。

「…俺はろーたの壁になって見守るとか、ぜってぇ無理。壁になったら、手ぇ出せねーじゃん」

 壁、かあ。
 壁になりたいってのは、フダンシ用語だ。
 推しや、そのCPを無機質な壁になって、その様子を見守るってヤツ。
 少しでもフダンシの…ろーたの気持ちを知りたくて、BL読み出したけどさ、俺に壁は無理。
 BLに出て来るヤツら、皆、ろーたに変換して読んでるせいか、手ぇ出したくなるじゃん。
 それを、抑えるなんて、本当に無理。俺は、壁になんてなれない。

「ああ、そうだな」

 ちょっと唇を尖らせて言ったせいか、拗ねてるって思われたのか?
 苦笑したろーたが、俺の頭を撫でてたその手を頬に持って来た。
 あんなに綺麗に箸を持つ手が、この指が、俺の中にあったんだと思うと、ぞくぞくする。
 すりって、頬を動かせば、その指先がピクピクって震えてるのに気付いた。

「…笑うなよ」

「笑ってない」

「笑ってんだろ! 腹震えてるし、中でチンコ動いてんだよっ!!」

「あ…」

「あ。じゃ、ねーっ!! こんだけくっついてんのに、バレねー訳ねーだろ!」

 尻ん中にチンコ挿れたままでろーたは身体を倒してて、右手は俺の顔にあって、曲げた左腕で身体を支えている状態だ。で、俺のチンコに、ろーたの腹があたってんだよ。その微妙に伝わる振動のせいで、しおしおと萎れてた俺のチンコが、復活しつつあったりする。

「…ああ…」

 ろーたも、それに気付いたのか…何か…何だか嬉しそうに…へにゃって眉を下げた。

「…そうだな…動いても良いか?」

 それなのに、その笑顔はなんだったんだって、言いたくなるぐらいに強い…雄みの溢れる目で見詰められて、俺の心臓がバックンッて鳴った。
 だから、ずりーんだよ、その顔。
 いきなり変わるなよ。

「お、あ…う、の、望むところだ! かかって来い!!」

 何か、言い方を間違えた気がしなくもない。
 けど、雄み溢れるろーたに飲まれそうになったから、つい、飲まれてたまるかって思っちゃったんだよな。受け(覚えた)なら、ここは『うん』一択なんだろうな。でも、これが俺なんだから、仕方ねーよな?
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ふつつかものですが鬼上司に溺愛されてます

松本尚生
BL
「お早うございます!」 「何だ、その斬新な髪型は!」 翔太の席の向こうから鋭い声が飛んできた。係長の西川行人だ。 慌てん坊でうっかりミスの多い「俺」は、今日も時間ギリギリに職場に滑り込むと、寝グセが跳ねているのを鬼上司に厳しく叱責されてーー。新人営業をビシビシしごき倒す係長は、ひと足先に事務所を出ると、俺の部屋で飯を作って俺の帰りを待っている。鬼上司に甘々に溺愛される日々。「俺」は幸せになれるのか!? 俺―翔太と、鬼上司―ユキさんと、彼らを取り巻くクセの強い面々。斜陽企業の生き残りを賭けて駆け回る、「俺」たちの働きぶりにも注目してください。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

ルームメイトが釣り系男子だった件について

perari
BL
ネット小説家として活動している僕には、誰にも言えない秘密がある。 それは——クールで無愛想なルームメイトが、僕の小説の主人公だということ。 ずっと隠してきた。 彼にバレないように、こっそり彼を観察しながら執筆してきた。 でも、ある日—— 彼は偶然、僕の小説を読んでしまったらしい。 真っ赤な目で僕を見つめながら、彼は震える声でこう言った。 「……じゃあ、お前が俺に優しくしてたのって……好きだからじゃなくて、ネタにするためだったのか?」

処理中です...