攻略されていたのは、俺

三冬月マヨ

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攻略されていたのは、俺?

【19】※

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「あ"、あ"ぁ"っ"!?」

 何で何で何で!?
 何で、俺の身体からハサミが生えているんだ!?
 いや、違う、ハサミは生えない。
 刺さっている!!
 何で何で何で!?

「…ごめんなさい…。痛いですよね? 直ぐに楽にしてあげますからね…」

 ハサミに手を掛けようと、震える手を伸ばそうとしたら、その手を取られてベッドへと倒されてしまった。それにより、身体に刺さるハサミも動いて、その中を抉る。

「う"っ"あ"、あ"あ"っ"!! い"っ"、だっ"!!」

「…ああ…でも…綺麗…」

 暴れる俺を押さえ付け、足の間に身体を割り込ませて、メゴロウはほうっ…と、熱い息を溢した。

 いや、今、何処を見て言った!?
 ちんこに何か風が当たったんだが!?

「あ"あ"っ"!!」

 けど、そんな刺激も痛みへと換算されていく。

 痛い痛い痛い熱い熱い熱い。
 ドクドクと血が流れて行くのが解る。
 生命が流れて行くのが解る。
 死ぬ。
 本当に、俺、死ぬ。
 何で、何で何で何で何で何で何で!?
 何で、メゴロウが俺を!?
 そこまで、あの女の事を!?
 けど、俺とメゴロウは殆ど一緒に過ごしていて。
 あの女と関わったのなんて、噴水に落ちた時だけの筈だ。
 俺が気付かないだけで、何処かでこっそり会っていたとか!?
 そんなミラクルあるか!? ゲームじゃないんだぞ!! 
 いや、けどメゴロウはウーゴに興味がある様になんて…っ…! 死んだウーゴを見ても動揺とか…っ…!!

 ――――――あ。

 いや、そうだ。
 ここはゲームの世界で、メゴロウはその主人公だ。
 …………この国の…危機を救う役割を…その力を持つ…主人公だ…。

「…メ、ゴ…き…みは…」

 …主人公が…メゴロウが持つ力は…何だった…?
 訳の解らないウーゴの死…それに動じないどころか、踏み潰したメゴロウ…それは…メゴロウは知っていたから…ウーゴがそうなる事を…それは、メゴロウが自分でした事だから…だ…。
 …力…主人公の…。
 …オープニングで…何か言われた気がするが…ニ周目からはスキップしたからな…エンディングも…一枚絵だけ見て…クソ…だって、エロゲだぞ? エロ目的でやってるのに、それ以外にそんな興味行くかよ…『はいはいスパイススパイス』って…。…ああ…俺の馬鹿…。
 
 目からは涙が溢れていて。
 鼻からは鼻水が流れていて。
 口からは血が溢れていて。
 身体に力は入らなくて。
 視界は滲むし暗いし、何か意識も朦朧として来た。熱かった筈なのに、何か…寒くなって来たし…。

「…メ…ゴ…き、みが…持つ…ち、からは…」

「…ああ…それも…あなたは…」

「ぐっ"、あ"っ"!?」

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!
 何だ何だ何だ何だ何だ!?

「ぎっ"、あ"あ"っ"!?」

「ああ…本当に綺麗だ…」

 腹が…何か…引っ張られている!?

「ぐっ、ぼっ!!」

 吐き気が込み上げるが、吐く物なんて、無い。代わりだと言わんばかりに、口からは血が流れて行く。

 …な、んで…?
 …何で…俺…死ぬの…?
 メゴロウと…仲良くして…たのに…。
 …好きに…なった…から…?
 …悪役…だから…?
 …悪役は…人を…好きに…なったら…駄目…なのか…?
 …これは…強制力…?
 …逆らえない…?
 …だから…死ぬ…?
 …あんまりだよ…女神様…。
 …酷い…酷過ぎる…。
 何で…メゴロウに…こんな事…。
 …死んでも…良いけど…さ…。
 …メゴロウに…こんな事を…させないで…くれよ…。
 …メゴロウは…こんな事をしたら…駄目…なんだ…。
 …可愛い奴なんだ…素直で…純粋で…。
 
「………ぎは…失敗しな…」

 遠くから、メゴロウの声が聴こえて来る。喉に何か詰まった様な…。
 ポタポタと顔に何かが落ちて来る。
 それは、冷えて行く身体にとても暖かく感じた。
 
「…メ…ゴ…」

 …こんな事をさせてごめんな…。
 …俺…悪役だから…死ぬ運命だったから…だから…良いや…。
 …これで…お前が…幸せに…なれるんなら…もう…どうでも…良いや…。
 ……………幸せに…な…。

 そう言いたいのに、口が上手く動かない。
 声が出てるのかも解らない。
 ただ、何か唇に熱い何かが触れて…それが、やけに気持ち良いな…と、思いながら、俺の意識は闇に飲まれて行った。

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