攻略されていたのは、俺

三冬月マヨ

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攻略していたのは、僕

【06】

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 女の子の下着を見て、鼻血を出しそうになったって、ケタロウ様に誤解された!
 酷い、あんまりだ。
 こんな派手な子の下着を見て、僕は興奮したりしないのに! 

「全く、こんな時期に水浴びだなんて、若いって良いわねぇ」

 ケタロウ様に言われた通りに、僕とピンクの子は救護室へと来ていた。そこに居たのは、紫色の髪色をしたケバい女の人だった。大きな胸を自慢したいのか、ブラウスのボタンを一つ二つどころか、三つも外しているから、ちらりとブラジャーが見えている。☓☓☓なら、喜ぶだろうけど、僕は嫌だ。気持ち悪い。
 
 …? あれ…? ☓☓☓って…何…?

「家庭科室で乾かして来てあげるから、ほら脱いで。あなたは、あっち。カーテンを閉めてね。乾くまでは毛布でも着ていて頂戴」

「あっ、はい」

 派手な保健じゃ無かった、ここじゃ養護教諭って言うんだった。保健室じゃなくて、救護室とか、もう、本当に面倒くさい。の言葉に、ピンクの子は、そう返事をして三つあるベッドの内、一番奥のベッドへ行き、カーテンを閉めた。

「あなたは、そのままここで脱いで良いわよ」 

 え、何、その差別?

「梅のあなたに、価値なんて無いのだから、遠慮は要らないわよ?」

 はあ!? 何、この女!? 第一印象から最悪だったけど、更に落ちたよ!? 仮にも先生が口にして良い言葉なのかな!?

「ウーゴ教諭! それは不当な弾圧として、学園長、ひいては理事長へと報告しますけど宜しいですね!?」

 僕が口火を切る前に、ピンクの子がカーテンを開けて、背後から叫んで来た。

「…っち」

 舌打ちしたよ、この紫女!?
 小さかったけど、僕にはしっかりと聞こえたからね!?

「ちょっとからかっただけよ。ほら、あなたもそこのベッドのカーテンを閉めて、早く脱いで頂戴。えぇと…ピンコさんだったかしら? 出て来るのなら毛布を巻いて頂戴」

「え!? あ、きゃあっ!!」

 ………………庇ってくれたのは嬉しいけど…裸で叫んだの…? 何それ、羞恥心無いの? ケタロウ様の言う通り、それじゃ淑女になんてなれないよ。
 あ、ケタロウ様のブレザー、僕が預かって返そう、そうしよう。そして、ピンクの子にブレザーを掛けてあげたお礼を言って、ご飯を一緒にって誘って、それから…。

 って、思っていたのに。

 暫くの時間を置いて、乾いた制服一式を抱えて戻って来た紫女からそれを受け取って、身支度を整えた僕に、紫女はこう言った。

「え? ああ、授業に間に合うか様子を見に来た彼と丁度出会ってね。自分のだって言うから返したわよ? あら、何を落ち込んでいるのかしら? ああ、恩でも売ろうとしたのかしら? これだから、梅は…っ…!?」

 また、紫女が暴言を吐こうとした処で、ピンクの子の平手打ちが紫女の頬に、炸裂した。凄く良い音がした。けど、仮にも先生に手を上げるなんて駄目じゃないのかな…?

「何をするの!? 教師である私に手を上げ…っ…!!」

 ほら、目を剥いて怒ってるよ。怖いって言うより、醜い顔だ。

「学園内ではありますけれど、権利を執行します。松の梅、ツイ・ピンコが命じます。竹の竹、ヨ・ウーゴ。これ以上の、私の友人を貶める発言は認めません。次はありません。返事は?」

「…はい…失礼しました…」

 停学とかあるんじゃ…? って、思っていたら、ピンクの子が毅然とした態度でそう宣言した。そうしたら、紫女はみるみると顔色を悪くして頬を押さえて項垂れてしまった。

 う、わぁ…。凄い…。これが序列かあ…。
 地元では、皆仲良くわいわいやっていたから、知らなかった…。

「行きましょう」

 目を丸くする僕の腕を掴んで、ピンクの子が歩き出す。

「あ、の、ピンクさん」

「ピンコよ。ごめんね、あの先生、自分より下の人間にはああなのよ」

「え。でも、あの先生、竹の竹って…。ここに通っているのは、皆、松以上じゃ…」

「ああ。その…君みたいに…その…お金を手に入れて…その…」

 もごもごと言い難そうなピンコさんの言葉に、僕は『あっ』って思った。
 成金でって、何、そのでっち上げって思ったけれど、良くある事なのか。

「あ、うん、ごめん。解った。ありがとう、僕の代わりに怒ってくれて」

「ううん。あ、それでね、私、お昼の君の勢いのある食べ方が気にいってね、私も結構食べるから…あの、明日から一緒にお昼食べない!?」

 派手だけど、良い子なんだなって思ってお礼を言えば、ピンコさんが目を輝かせて振り返って来た。

「え、嫌だよ」

 明日はケタロウ様と一緒に食べるんだ。今夜、寮の食堂で捕まえて約束しなくちゃ。

「…っ…、そ、即答…い、一瞬ぐらい…悩むそぶりしてくれても…」

「? どうしたの?」

 がっくりと目に解る程に肩を落としたピンコさんに、僕は首を傾げた。
 気のせいか、ツインテールも萎んでる気がする。

「何でもない! 鈍感っ!!」

 ピンコさんは顔を赤くしてそう叫ぶと、ツインテールを揺らしながら、僕を置いて廊下を走って行ってしまった。

「…何だろう? 今度は誰にもぶつからないと良いけど…」

 ◇

「…うぅ…お腹がはち切れそう…」

 ベッドの上で仰向けになって、僕はお腹を擦っていた。

「…ケタロウ様…来なかった…僕が行く前に済ませたのかな…?」

 時間だよって、追い出されるまで粘ったけど、あの美味しそ…麗しのケタロウ様は現れ無かった。

 それもこれも、緑の髪の子のせいだ。
 放課後になった途端、小脇にバスケットボールを抱えた、緑の髪の子が教室に突撃して来た。

「ドイ・ナカの町から来たんだって!? 体力には自信があるよな! 付き合いな!!」
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