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攻略していたのは、僕
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「あ、また…。まあ、これで最後だから良いけど」
「良くないです! 最後まで、こんな…っ…!」
「まあまあ、落ち着いて、デシコさん」
僕の机の上には、ネズミとゴキブリの死骸が乗っていた。初回の時は酷いものだったけれど、それ以降も時々続けられるこれは可愛い物だった。中身が飛び出ていないだけで、だいぶ違う。数もネズミは多くて二匹だし、ゴキブリも三、四匹ぐらいだ。もしかしたら、初回とは違う人物なのかも知れない。僕を恨む誰か。それが誰かなのかは、結局は、解らないままだけど。でも、良いんだ。だって。
「門出の日だと云うのに。今日も、これだとはね」
そう、僕の耳元でボソリと呟いて通り過ぎたのは、ケタロウ様だ。初回は、余りの衝撃に皆が動けなくて、ケタロウ様が手を貸してくれたけど、今は、クラスの皆が手伝ってくれる。ケタロウ様が手伝ってくれる事はないけれど、こんな風に、言葉をくれるだけで僕は嬉しい。
けど。
それも、今日で最後。
今日は、僕達の卒業の日。
大学部は、受けたい授業…講義でクラス分けされるって聞いたから…僕は、農学関係へと進むから…こんな風に近くで声を聞くのは最後。こんな近くで見るのも…最後…。大学部は、入寮の縛りが無いって話だから、王都に住む人達は、皆、寮を出て行く。僕は勿論、寮に残るけどね。大学部を卒業する時には、また、話があるんだろうな。…危機が、いつ訪れるのかは解らないけど。それまでは、僕は王都に居なければならないんだろうから。
…情…かぁ…。
情なんて…ケタロウ様にしか湧かない…。
危機が…訪れてからでも良いかな…?
そんな、いつ来るかも解らない物の為に、好きでもない人と、情を交わすだなんてしたくないし…。
◇
「うっ、うっ、せんぱぁい~」
「うっ、うっ、たまには遊びに来て下さい~」
「うっ、うっ、うう~」
「泣かないで下さい、ブオ君は部長なのだから、しっかりして下さい。ブコさんも、副部長なのですから、ロリリさんも、これからは先輩になるのですから…」
僕とデシコさんの前で、ブオ君とブコさんとロリリさんが涙と鼻水を流していた。それをデシコさんが一生懸命宥めている。
まあ、こうなっているのは、僕達だけではないけれど。
講堂での式を終えて外へと出れば、在校生達からのフラワーシャワーが待っていた。それらを浴びながら、校庭へと。卒業生全員が校庭へと出た処で、卒業式は終わり。後は帰るなり、皆で集まって騒ぐなり自由にと。視線を動かせば、リヌさんの周りにも人だかりが出来ていた。リヌさんが持っているバスケットボールには、緑色のリボンが巻かれている。また視線を動かせば、ピンコさんが起ち上げた、フードファイト同好会の皆がバゲットを手に踊っていた。その中心に居るピンコさんも、バゲットを踊りながら食べていた。
去年は、生徒会長が生徒達に囲まれていたっけ。最初は、誰も冷たくて堅い人だって思うけれど、実際はそうじゃないって、気付いたのは何時だっただろう?
…もし…。
もしも、その危機が来たら…その時は…うん。
…だって…生徒会長は、一度もケタロウ様の事を悪く言わなかったから…。だから…。
「卒業おめでとう、メゴロウ君」
そんな事を思いながら、青い空を仰いだら後ろから少し低い、けれど、もう耳に馴染んだ声が聞こえて来た。同時に、僕の肩に軽く手が置かれた。
「生徒会長」
重なる僕達の声に、生徒会長が苦笑を漏らす。
「トイセだと何度言えば…まあ、良い。…彼は…ウ・ケタロウ様は何処だ?」
しかし、その苦笑は直ぐに消えて、生徒会長…トイセさんの眉間に皺が寄せられた。
「え?」
ケタロウ様?
ケタロウ様なら、先刻、先生達に挨拶している姿を見たけれど…。
「…ああ、あそこか。…メゴロウ君、すまないね」
え? 何が?
申し訳無さそうな表情を浮かべるトイセさんに、僕が首を傾げると、その唇から懐かしい名前が紡がれた。
「キヤク殿」
「はい」
「え? キヤクさん?」
トイセさんが声を掛けた方へと顔を動かせば、あの日、僕を迎えに来たワ・キヤクさんが立っていた。ううん、キヤクさんの周りにも、同じ黒いスーツを着て、黒いサングラスを掛けた男の人が十人ぐらい居る。
え、何?
トイセさんは、どうして謝ったの?
訳が解らないままに、ケタロウ様の方へと歩き出したトイセさんの後を付いて行く。どうしてかは知らないけど、ただ、付いて行かなくちゃと思った。
「お話中失礼する。ウ・ケタロウ様。これから貴方を断罪させて頂く」
――――――…え?
「良くないです! 最後まで、こんな…っ…!」
「まあまあ、落ち着いて、デシコさん」
僕の机の上には、ネズミとゴキブリの死骸が乗っていた。初回の時は酷いものだったけれど、それ以降も時々続けられるこれは可愛い物だった。中身が飛び出ていないだけで、だいぶ違う。数もネズミは多くて二匹だし、ゴキブリも三、四匹ぐらいだ。もしかしたら、初回とは違う人物なのかも知れない。僕を恨む誰か。それが誰かなのかは、結局は、解らないままだけど。でも、良いんだ。だって。
「門出の日だと云うのに。今日も、これだとはね」
そう、僕の耳元でボソリと呟いて通り過ぎたのは、ケタロウ様だ。初回は、余りの衝撃に皆が動けなくて、ケタロウ様が手を貸してくれたけど、今は、クラスの皆が手伝ってくれる。ケタロウ様が手伝ってくれる事はないけれど、こんな風に、言葉をくれるだけで僕は嬉しい。
けど。
それも、今日で最後。
今日は、僕達の卒業の日。
大学部は、受けたい授業…講義でクラス分けされるって聞いたから…僕は、農学関係へと進むから…こんな風に近くで声を聞くのは最後。こんな近くで見るのも…最後…。大学部は、入寮の縛りが無いって話だから、王都に住む人達は、皆、寮を出て行く。僕は勿論、寮に残るけどね。大学部を卒業する時には、また、話があるんだろうな。…危機が、いつ訪れるのかは解らないけど。それまでは、僕は王都に居なければならないんだろうから。
…情…かぁ…。
情なんて…ケタロウ様にしか湧かない…。
危機が…訪れてからでも良いかな…?
そんな、いつ来るかも解らない物の為に、好きでもない人と、情を交わすだなんてしたくないし…。
◇
「うっ、うっ、せんぱぁい~」
「うっ、うっ、たまには遊びに来て下さい~」
「うっ、うっ、うう~」
「泣かないで下さい、ブオ君は部長なのだから、しっかりして下さい。ブコさんも、副部長なのですから、ロリリさんも、これからは先輩になるのですから…」
僕とデシコさんの前で、ブオ君とブコさんとロリリさんが涙と鼻水を流していた。それをデシコさんが一生懸命宥めている。
まあ、こうなっているのは、僕達だけではないけれど。
講堂での式を終えて外へと出れば、在校生達からのフラワーシャワーが待っていた。それらを浴びながら、校庭へと。卒業生全員が校庭へと出た処で、卒業式は終わり。後は帰るなり、皆で集まって騒ぐなり自由にと。視線を動かせば、リヌさんの周りにも人だかりが出来ていた。リヌさんが持っているバスケットボールには、緑色のリボンが巻かれている。また視線を動かせば、ピンコさんが起ち上げた、フードファイト同好会の皆がバゲットを手に踊っていた。その中心に居るピンコさんも、バゲットを踊りながら食べていた。
去年は、生徒会長が生徒達に囲まれていたっけ。最初は、誰も冷たくて堅い人だって思うけれど、実際はそうじゃないって、気付いたのは何時だっただろう?
…もし…。
もしも、その危機が来たら…その時は…うん。
…だって…生徒会長は、一度もケタロウ様の事を悪く言わなかったから…。だから…。
「卒業おめでとう、メゴロウ君」
そんな事を思いながら、青い空を仰いだら後ろから少し低い、けれど、もう耳に馴染んだ声が聞こえて来た。同時に、僕の肩に軽く手が置かれた。
「生徒会長」
重なる僕達の声に、生徒会長が苦笑を漏らす。
「トイセだと何度言えば…まあ、良い。…彼は…ウ・ケタロウ様は何処だ?」
しかし、その苦笑は直ぐに消えて、生徒会長…トイセさんの眉間に皺が寄せられた。
「え?」
ケタロウ様?
ケタロウ様なら、先刻、先生達に挨拶している姿を見たけれど…。
「…ああ、あそこか。…メゴロウ君、すまないね」
え? 何が?
申し訳無さそうな表情を浮かべるトイセさんに、僕が首を傾げると、その唇から懐かしい名前が紡がれた。
「キヤク殿」
「はい」
「え? キヤクさん?」
トイセさんが声を掛けた方へと顔を動かせば、あの日、僕を迎えに来たワ・キヤクさんが立っていた。ううん、キヤクさんの周りにも、同じ黒いスーツを着て、黒いサングラスを掛けた男の人が十人ぐらい居る。
え、何?
トイセさんは、どうして謝ったの?
訳が解らないままに、ケタロウ様の方へと歩き出したトイセさんの後を付いて行く。どうしてかは知らないけど、ただ、付いて行かなくちゃと思った。
「お話中失礼する。ウ・ケタロウ様。これから貴方を断罪させて頂く」
――――――…え?
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