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攻略していたのは、僕
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『運命』なんて言葉、ケタロウ様の口から聞きたくなかった。
だって、その『運命』で、ケタロウ様は死んでしまうんだから。
でも、その『運命』で、僕に出逢えたと、今のケタロウ様は笑う。
それなら。
今の、この『運命』は。
今の、この『時間』は。
ケタロウ様が死なない運命の時間。
そう、思っても良いの?
今のケタロウ様は、僕とずっと一緒に居てくれる。
そう、思って良いの?
惹かれ合うって、ガディシス様は言った。
その時が来た。
そう思って良いの?
今のケタロウ様は…僕の事を好きに…なってくれる?
僕の手の上に置かれたこの手を握り返しても…いいのかな?
そろそろと顔を上げたら、本当に優しく甘く笑うケタロウ様の顔があって、それが嬉しくて、へにゃって頬が緩んで、こんなだらしない顔見せたら駄目だと、僕は慌てて上げた顔を下へと向けた。気持ち悪いって思われたら嫌だし…。
…けど…これは…夢じゃないんだ。
夢でもドキドキしてたけど、今は、それ以上にドキドキしてる。
片付ける程の荷物もないけれど、僕が鞄から出した物を、ケタロウ様は丁寧に畳んだりしてクローゼットにしまってくれた。
それが済んだ後、食事にしようか? って、誘われてケタロウ様と一緒に食堂へと行った。二人で食堂へ行けば、また、周りがざわついた。僕達が一緒に食べるのは学食で見てたよね? そんなに騒がないでよ。ケタロウ様が嫌な思いをしたらどうするの?
「嫌な思いをさせて済まないね。私は寮での食事は部屋まで運んで貰って、一人で食べていたんだ」
ちょっとムッとしたら、正面に腰を下ろしたケタロウ様がそう言って来た。
「…え…?」
肩を竦めて苦笑するケタロウ様に僕は目を丸くする。
え、何、それ?
じゃあ、これまでの時間に…寮の食堂でケタロウ様に会わなかったのって…。
「…人のね、多い処は苦手でね…。このままではいけないと思うのだけど…だから…メゴロウ君、君を部屋に招いて良かった。ほら、お食べ」
照れた様に笑いながら、ケタロウ様がナイフを動かして、ローストビーフを切って、フォークに刺して口元へと持って来るから、僕は口を開けてそれを迎え入れる。
…そう云えば…これまでの時間…学食でケタロウ様は、いつも一人だった…。誰かと食べているのを見た事が無かった…かも…。
…どうして…?
クラス委員長やっているんだから、人望があるって事だよね? …あ…違う…? 松…だから…? 松だから、委員長を押し付けられて、松だから、親しい友達も出来なかった…? 身分差なんて、気にしなくて良いって言ってるけど、実際は…いざって時は、それを出して来るものね…。
こんなに綺麗な人なのに…ずっと…ずっと…一人…孤独…だった?
僕を見る目は、こんなに優しいのに。
それなのに、一人だった?
…一人じゃ、ない。
ケタロウ様を一人になんてさせない。
僕が居る。
これからは、僕が居るから。
だから、ずっと笑っていて?
寂しい思いなんてさせないから。
ずっと、ずっと、傍に居て?
ローストビーフを食べ終わって、僕も自分が注文した熱々のハンバーグにナイフを入れる。
そんな僕をケタロウ様が微笑ましそうに見ていて、それだけで胸がいっぱいで、食べられないかもって思ったけど、それは気のせいだった。だって、ちょっとでも食べるのが鈍ると、ケタロウ様が心配してくるんだもん。悲しい顔なんてさせたくない。
「君が食べている姿は、本当に可愛いね」
って、ケタロウ様に頭を撫でられて、今度こそ死ぬって思ったけど、やっぱり死ななかった。
だって、今の方が死にそうなんだもん。
お腹が落ち着いて来たトコで。
『先にシャワーを使って良いよ。あの部屋にはシャワーは無いし、昨日は遅かった様だから、大浴場の開いている時間に間に合わなかっただろう?』
って、ケタロウ様に言われて。僕なんかが先に入るなんて出来ない、大浴場に行く。って、言ったんだけど、大浴場で眠ってしまったらどうするの? って、誰が運ぶの? って、まだ慣れない場所だし、一人の方が落ち着くでしょう? って、シャワールームに、グイグイと押し込まれてしまった。ケタロウ様、強引。
ケタロウ様が毎日使っている、シャワー、浴槽、タイル、椅子、石鹸、シャンプー、スポンジ、タオル、このボトルは何だろう? ボディシャンプー? …まあ、とにかく…ここに漂う香りはケタロウ様から香る物と同じだ。
「…う…」
ケタロウ様と同じ物を僕が使う。
そう考えただけで、何だかいけない事をしているみたいで、ドキドキする。
本当に、僕、ここに居て良いのかな? 迷惑じゃないのかな?
でも、ケタロウ様とこうして一緒に居れば、きっと誰も、ケタロウ様を絞首台へあげたりはしないよね?
「…あ…。そうだ…」
噴水で、ピンコさんが来なかった…。
いつもなら、初日に噴水に行けばピンコさんが突撃して来るんだけど…。僕達が、先に噴水に落ちたから、来なかったのかな?
…それと…。
デシコさんの姿は、やっぱり無かったな…。
僕の隣はデシコさんじゃない、女の子だった。…休み…? でも、空いている席は無かった気がする。リヌさんも、来なかったし…う~ん…? 何だろう? ケタロウ様もそうだけど…この時間は今までと違う気がする…。
「…まあ…ケタロウ様が生きてくれるなら…」
それで良いんだけどね…。
バスタブに身体を沈めながら、僕は小さく呟いた。
だって、その『運命』で、ケタロウ様は死んでしまうんだから。
でも、その『運命』で、僕に出逢えたと、今のケタロウ様は笑う。
それなら。
今の、この『運命』は。
今の、この『時間』は。
ケタロウ様が死なない運命の時間。
そう、思っても良いの?
今のケタロウ様は、僕とずっと一緒に居てくれる。
そう、思って良いの?
惹かれ合うって、ガディシス様は言った。
その時が来た。
そう思って良いの?
今のケタロウ様は…僕の事を好きに…なってくれる?
僕の手の上に置かれたこの手を握り返しても…いいのかな?
そろそろと顔を上げたら、本当に優しく甘く笑うケタロウ様の顔があって、それが嬉しくて、へにゃって頬が緩んで、こんなだらしない顔見せたら駄目だと、僕は慌てて上げた顔を下へと向けた。気持ち悪いって思われたら嫌だし…。
…けど…これは…夢じゃないんだ。
夢でもドキドキしてたけど、今は、それ以上にドキドキしてる。
片付ける程の荷物もないけれど、僕が鞄から出した物を、ケタロウ様は丁寧に畳んだりしてクローゼットにしまってくれた。
それが済んだ後、食事にしようか? って、誘われてケタロウ様と一緒に食堂へと行った。二人で食堂へ行けば、また、周りがざわついた。僕達が一緒に食べるのは学食で見てたよね? そんなに騒がないでよ。ケタロウ様が嫌な思いをしたらどうするの?
「嫌な思いをさせて済まないね。私は寮での食事は部屋まで運んで貰って、一人で食べていたんだ」
ちょっとムッとしたら、正面に腰を下ろしたケタロウ様がそう言って来た。
「…え…?」
肩を竦めて苦笑するケタロウ様に僕は目を丸くする。
え、何、それ?
じゃあ、これまでの時間に…寮の食堂でケタロウ様に会わなかったのって…。
「…人のね、多い処は苦手でね…。このままではいけないと思うのだけど…だから…メゴロウ君、君を部屋に招いて良かった。ほら、お食べ」
照れた様に笑いながら、ケタロウ様がナイフを動かして、ローストビーフを切って、フォークに刺して口元へと持って来るから、僕は口を開けてそれを迎え入れる。
…そう云えば…これまでの時間…学食でケタロウ様は、いつも一人だった…。誰かと食べているのを見た事が無かった…かも…。
…どうして…?
クラス委員長やっているんだから、人望があるって事だよね? …あ…違う…? 松…だから…? 松だから、委員長を押し付けられて、松だから、親しい友達も出来なかった…? 身分差なんて、気にしなくて良いって言ってるけど、実際は…いざって時は、それを出して来るものね…。
こんなに綺麗な人なのに…ずっと…ずっと…一人…孤独…だった?
僕を見る目は、こんなに優しいのに。
それなのに、一人だった?
…一人じゃ、ない。
ケタロウ様を一人になんてさせない。
僕が居る。
これからは、僕が居るから。
だから、ずっと笑っていて?
寂しい思いなんてさせないから。
ずっと、ずっと、傍に居て?
ローストビーフを食べ終わって、僕も自分が注文した熱々のハンバーグにナイフを入れる。
そんな僕をケタロウ様が微笑ましそうに見ていて、それだけで胸がいっぱいで、食べられないかもって思ったけど、それは気のせいだった。だって、ちょっとでも食べるのが鈍ると、ケタロウ様が心配してくるんだもん。悲しい顔なんてさせたくない。
「君が食べている姿は、本当に可愛いね」
って、ケタロウ様に頭を撫でられて、今度こそ死ぬって思ったけど、やっぱり死ななかった。
だって、今の方が死にそうなんだもん。
お腹が落ち着いて来たトコで。
『先にシャワーを使って良いよ。あの部屋にはシャワーは無いし、昨日は遅かった様だから、大浴場の開いている時間に間に合わなかっただろう?』
って、ケタロウ様に言われて。僕なんかが先に入るなんて出来ない、大浴場に行く。って、言ったんだけど、大浴場で眠ってしまったらどうするの? って、誰が運ぶの? って、まだ慣れない場所だし、一人の方が落ち着くでしょう? って、シャワールームに、グイグイと押し込まれてしまった。ケタロウ様、強引。
ケタロウ様が毎日使っている、シャワー、浴槽、タイル、椅子、石鹸、シャンプー、スポンジ、タオル、このボトルは何だろう? ボディシャンプー? …まあ、とにかく…ここに漂う香りはケタロウ様から香る物と同じだ。
「…う…」
ケタロウ様と同じ物を僕が使う。
そう考えただけで、何だかいけない事をしているみたいで、ドキドキする。
本当に、僕、ここに居て良いのかな? 迷惑じゃないのかな?
でも、ケタロウ様とこうして一緒に居れば、きっと誰も、ケタロウ様を絞首台へあげたりはしないよね?
「…あ…。そうだ…」
噴水で、ピンコさんが来なかった…。
いつもなら、初日に噴水に行けばピンコさんが突撃して来るんだけど…。僕達が、先に噴水に落ちたから、来なかったのかな?
…それと…。
デシコさんの姿は、やっぱり無かったな…。
僕の隣はデシコさんじゃない、女の子だった。…休み…? でも、空いている席は無かった気がする。リヌさんも、来なかったし…う~ん…? 何だろう? ケタロウ様もそうだけど…この時間は今までと違う気がする…。
「…まあ…ケタロウ様が生きてくれるなら…」
それで良いんだけどね…。
バスタブに身体を沈めながら、僕は小さく呟いた。
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