攻略されていたのは、俺

三冬月マヨ

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攻略していたのは、僕

【27】

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 薄く柔らかい光の中で見るケタロウ様は綺麗。
 蜂蜜を思わせる髪色が、その光の中でほわりと浮いて輝いて見える。
 身体を起こして、伏せられた長い睫毛にそっと触れる。
 顔を近付けて、ふっと息を吹き掛ければ、それは小さく揺れた。
 擽ったかったのかな?

「…ふふ…可愛い…」

 綺麗で可愛くて優しい人。
 …でも…孤独な人…。
 思い返せば、確かにケタロウ様は一人だった。
 僕とだけでなく、他の誰とも必要以上の会話をしていなかった気がする。

「…どうして…?」

 …ねえ、それはどうして?
 僕だけでなく、誰とも距離を縮めなかったケタロウ様。
 そんなケタロウ様が絞首台に上がる前に見せる、あの微笑み…。
 …それは…まるで…。

「…知って…いた、の…?」

 覆い被さって、唇が触れそうな距離で訊いても、眠りに落ちているケタロウ様からの返事は無い。
 薄く開いているそれに、指先で触れて、そっと撫でる。
 柔らかくて温かい唇。
 そこから紡がれる言葉はとても優しい。
 何時も、ご飯を食べてる時に可愛いって笑ってくれる。
 そんな僕を見てると元気になれるって、笑いながらスプーンを差し出して来る。
 親鳥が雛鳥にご飯を食べさせているみたいって、そんな声が聞こえて来た事がある。
 それは悪意のある物じゃなくて、とても微笑ましい、そんな感情の籠った声だった。
 そんな風に…優しく…周りから見られている今の時間は、きっと大丈夫。
 誰も、皆、ケタロウ様を追い詰めたりしない。
 そう、思いたい。

「…だから…死なないで…」

 祈る様に呟いて、唇を重ねる。
 ふにりとへっこむけれど、ふわりと押し返して来る。
 その弾力が嬉しい。
 柔らかくて、温かくて。
 ふにふにと何度も押し付けてしまう。

「…ん…」

 あ、やば…っ…!

 起きないで。夢の中に居て。

 慌てて唇を離して、カチッて、時計の針が止まるのを頭の中でイメージする。
 そうすれば、僕だけを残して、時間が、世界が時を止める。
 そこから、ちょっとだけ工夫をする。ケタロウ様の身体に触れて、この身体の時間は動く様にと祈る。でも、ケタロウ様の意識は、止めた時間の中に置き去りにして、って。

「…掠れた声だった…」

 …色っぽかったな…。

 そう思いながら、また、僕は唇を重ねる。

「…ケタロウ様…」

 小さく名前を呼んで、薄く開かれたそこに、そろそろと舌を挿れてみる。
 ケタロウ様から反応はないけれど、熱い、ぬるっとしたそれは、生きている証拠。ケタロウ様が生きている証。
 ちろちろと舐めながら、手を動かしてケタロウ様の寝間着のボタンを外して行く。今日のケタロウ様の寝間着は、膝下までの長いワンピースみたいなシャツ。
 ケタロウ様の腰を跨いで身体を起こせば、布団が僕の背中からずり落ちて、白い、陽に焼けた事なんてないんだろうなって、肌が現れた。その中で、色の付いているもの。右と左に一つずつ、合わせて二つ。その一つに身体を屈めて吸い付く。ふにっとしたそれを舐めて行けば、固く尖って来るのは、女の子でも男の子でも同じ。尖って来たそれに歯を立てれば、声を上げて身を捩る。

「…ケタロウ様…」

 ケタロウ様も、同じ反応するのかな? それとも違う? 尖りから唇を離して、その周りを舐めながら手を動かす。脇の下に手を入れて、さわさわとゆっくりと撫で下ろして行く。
 薄い胸、薄い腹筋、僅かに浮いた腰骨をつつっと指先で撫でて、トンとぶつかったそこに、指を忍び込ませる。白く柔らかい布をゆっくりと下ろして行けば、ふわっと柔らかそうな、ケタロウ様と同じ色の毛が飛び出て来た。
 そろりと撫でて、その柔らかな感触を楽しんで、ケタロウ様の様に綺麗な色の、まだ垂れ下がっているおチンチンに鼻を寄せる。何時もの様に、鼻をつく、目に滲みる様な匂いはしない。何時も甘く香るケタロウ様の匂いだ。甘さを含んだボディーソープの匂い。
 身体の位置をずらし、ケタロウ様の両膝を立てて、その間に割り込んで、身体を深く曲げて、おチンチンの奥へと顔を寄せてすんすん鼻を鳴らす。
 ここも、同じ。うっ、ってなる匂いはしない。

 ずっと、触れたかった。
 この、温かい身体に。
 冷えて固くなって行く身体じゃなくて、温かく柔らかい身体に。

「…ケタロウ様…」

 …ずっと欲しかったご馳走を前にして、我慢なんて出来る筈が無かった。
 生きているケタロウ様。
 熱を持ったままのケタロウ様。
 夢じゃないけれど、まるで夢の様な時間。
 
「…良い子じゃなくて、ごめんなさい…」

 ケタロウ様が可愛いって言ってくれる僕は、きっと、こんな事はしない。
 ちゃんと告白して、想いを話して、ケタロウ様も同じ想いなら、それから…ってなんて、待っていられない。
 もう、ずっと、ずっと、繰り返して来た。
 この時を夢見て、何度も。
 いつか、何時かは、って。
 そんな時は来ないんじゃないかって、思ったりもした。でも、諦めたくなかった。諦められなかった。
 ケタロウ様を、諦めたくなかった。

 だから…。

「…悪い子で…ごめんなさい…」
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