攻略されていたのは、俺

三冬月マヨ

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攻略していたのは、僕

【28】

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 甘く香る匂いは、ケタロウ様の香り。
 優しいケタロウ様にぴったりだ。
 初めて嗅いだ時から、忘れられない匂い。
 優しく温かく、僕を包み込んでくれる匂い。
 綺麗で優しいケタロウ様。

「…っ…ん…」

 こんなに汚れて醜い僕が、手を出して良い人じゃない。
 でも…。

「…あ…つい…」

 はあ…っと、大きく息を吐く。
 ぽたりと、顔から何かが落ちて、ケタロウ様の白い肌に滲みて行く。
 ぽたり、ぽたり、と。
 見下ろす先は、ケタロウ様の胸。
 白い肌にある、色の付いたそれは、赤く熟れたトマトのようで。
 それは、食べてと誘っているようで。
 深く身体を沈めて、その尖りに齧り付く。
 軽く歯を立てては、舐めてを繰り返して、より、色鮮やかにしていく。
 
「…っ…ふぁ…」

 腰を動かせば、グジュッて音が聞こえる。
 ゆるゆると、中を掻き回せば、僕のお腹にあたるケタロウ様の綺麗なおチンチンがピクピクと動く。

「…ふふ…大きい…」

 身体を離してケタロウ様のおチンチンを見れば、尖端からとろとろと涙を溢していた。
 手を伸ばして、指先でそれを掬い、纏わりつかせて、ケタロウ様のおチンチンに塗り込んで行く。

「…僕だけじゃなく…ケタロウ様も…ね?」

 ケタロウ様も、気持ち良くなって?
 僕と一緒にね?
 
 ゆるゆるとケタロウ様のおチンチンを掴む手を動かしながら、腰を動かす。
 ぎゅうぎゅうと僕を締め付けるそこは、とても熱くて、とても気持ちが良い。
 僕の熱だけじゃない、ケタロウ様から放たれる熱に、熱く蕩けて火傷しそう。
 
「…はっ、あっ…」

 熱くて嬉しくて。
 額からも、目からも汗が流れて。
 背中を伝う汗も、何もかもが気持ち良い。

「…ケタロウ様…」

 生きているケタロウ様と、こうして居るなんて夢みたい。夢じゃないけど。
 声を聞きたい。
 きっと、それも綺麗な声。
 夢のように甘く優しく、僕を導いてくれたように。
 あれは、目が醒めれば消えてしまう物だけど。
 でも、これは、夢じゃない。

「…んっ! あ、あ、あ…」

 ビクビクと身体が震える。
 僕の手の中にある、ケタロウ様のおチンチンも。

「…ふふ…」

 ………嬉しいけど…悲しいのは、どうしてなんだろう? 
 笑っているのに、涙が出るのはどうしてなんだろう…?
 
「…ケタロウ様…」

 …笑って僕を見て?
 …声を聞かせて?
 …ずっと、ずっと、こうなるのを願っていたのに…。

「…どうして…」

 こんなに虚しくて…悲しいんだろう…。
 …ケタロウ様は僕を好きになってくれる?
 こんな僕を好きになってくれる?
 可愛くない僕は要らない?
 可愛くない僕を見たら、変わってしまう?
 誰か、他の可愛い子を見つけたら、そっちに行ってしまう?
 アニキのように、変わってしまう?

「…嫌だ…」

 …ケタロウ様は、アニキとは違う…。
 ケタロウ様は…ずっと…僕と一緒に居てくれる…。

「…そう、だよね…?」

 返事はない。
 でも、運命だって言ったんだ、ケタロウ様は。

「…は…っ…」

 離したくない。
 離れたくない。
 僕からケタロウ様を奪うなんて、許さない。
 僕とケタロウ様を引き離そうなんて、許さない。
 もし、そんな時が来たら…。

「…許さない…から…」

 許さない。
 許せない。
 やっと、手に入れた今なんだ。
 離さない。
 離せない。
 誰にも。
 何にも。
 奪わせない。
 もう、奪われたくない。

「…奪われるくらいなら…」

 …誰の…手も…届かない処に…。

「…っ…は…」

 熱を吐き出して大人しくなっていた僕の僕だけど、また元気になって来たから、求めるままに動いていたら、ケタロウ様の唇から音が漏れた。

 …ああ…夢中になり過ぎちゃった…。

「…ん…っ、あぁ…っ…!?」

 グンッと腰を押し付ければ、ケタロウ様の閉じられていた目が開いて、その身体がビクンッと跳ねた。

「…ああ…流石に起きちゃうか…」

 …止めていた時間が動いたなんて、言えないもんね。
 僕に、こんな力があるって知ったら、ケタロウ様は驚く?
 それだけなら良いけど…やっぱり…嫌われる…?

「…メ…ゴロウ君…? 何を…?」

 開かれたケタロウ様の目には涙が浮かんでいて、それが美味しそうに見えて、僕は唇をぺろりと舐めた。こんなケタロウ様の涙を見るのは、知るのは、僕だけでいい。

「この状況で…それを訊くあなたでは無いでしょう?」

 僕がこんな事をするなんて、想像もつかない。
 そんな戸惑いが浮かぶ目が、声が、やっぱりケタロウ様は可愛い僕しか好きじゃないんだって思わせて、僕は、わざと意地悪く、そう言った。
 そんな僕の言葉に、ケタロウ様は大きく目を見開いて、そこに溜まっていた涙を溢した。
 勿体ないって思いながら、それでも、こうしてケタロウ様の声を聞けた事が嬉しくて、僕はまた腰を動かす。

「ああっ!? や、め…っ…!!」

 その唇から溢れるのは、拒絶の言葉。
 頭を振って、嘘だって叫んでいるみたい。
 嘘じゃないよ。
 こうしている僕も、僕なんだよ。

「…本当に…のあなたは…面白いね…」

 今のケタロウ様が、これまでと違って他人と…僕との繋がりを求めるように。
 あなたが知らない、可愛いだけじゃない、醜い僕も見て?
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