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攻略されていたのは、俺
【03】
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「…ん…ぅ…?」
…何か、身体が重いな…?
…筋肉痛か…?
翌日に出るなんて、俺も歳を取ったなあ…。
「…ん…?」
いや、訂正。
筋肉痛じゃ、無い。
メゴロウだ。
メゴロウが、俺の腰に抱き付いて寝てる。
俺は抱き枕か。
お前はコアラか。
まあ、良いけどさ。
けど、珍しいな。
メゴロウより先に俺の方が起きるなんて。
「…疲れてるのかな…」
顔は胸の脇に押し付けられていて解らないが。
五月に入って気温も上がって来たし、一日くらい、朝の活動は無くても良いかもな。
右側にはメゴロウが居るから、左腕を動かして黒い頭を俺は撫でた。
メゴロウの髪は俺のより太いが、その分弾力があって触ってて気持ちが良い。
しかし。
困った。
先に目が醒めたのなら、たまには、俺がコーヒーを淹れてやりたい処だが、これじゃあ、動いたらメゴロウを起こしてしまう。これは、何の苦行なんだ? コーヒーの一つや二つで、絞首台送りになる事は無いと思いたいが…。
ん?
メゴロウの頭を撫でていた、俺の手が止まる。
――――――――…あ、れ…?
何だっけ…?
何か…忘れてる気がする…?
「…ん…」
おっと。
こら、もぞもぞ動くな。
脇が擽ったくて笑ってしまうだろ。
「…んみゅぅ…」
何とも可愛らしい声を出しながら、メゴロウの閉じられていた瞼がゆっくりと上がって行く。
そんなメゴロウの髪の中に指を入れて、軽く撫でながら、俺はこれ以上ないぐらいの爽やかな笑顔で言った。
「おはよう、メゴロウ。今日はお寝坊さんだね?」
「…っ…! ケタロウ様…っ…! 大丈夫ですか!?」
んあ?
目覚めたメゴロウはガバリと身体を起こして、正座して俺の顔を覗き込んで来た。
大丈夫って、何が?
何をそんな心配そうに、不安そうに俺を見て来るんだ?
身体を起こして、メゴロウと向かい合って、ポンッとその頭に手を置く。
落ち着け? な?
「そんなに慌ててどうしたんだい? 君は、私を抱き潰してしまう程の力があったのかい?」
そりゃあ、メゴロウは見た目の割に力があるけどさ。それは、俺みたいな坊ちゃんと比べて、だ。何処かの緑の超人とか、そんな力がある訳じゃ、ない。これは、ちょっとしたからかいだ。
…って…力…? …あれ…?
「…あ、いえ…。あの…昨日…活動中に、陽射しにあてられて倒れたんです…覚えていますか?」
「…え?」
何かが引っ掛かったが、メゴロウが放った言葉に俺は目を瞬かせた。
覚えていませんがな。
あ。
じゃあ、先刻、何か忘れてる気がすると思ったのは、それか? そっか。
「記憶力に自信はあるつもりだったけれど、恥ずかしい事は忘れるみたいだね。…ここへは誰かが運んでくれたのかい? お礼をしないとね」
頭を撫でながらそう言えば、メゴロウは少しだけ俯いてぼそぼそと話し出した。
「あ、いいえ。保健…救護室で休んだ後、ふらついてはいましたけれど、僕が肩を貸して…」
うっわ、本当に覚えてない。よっぽどの熱中症じゃないか。
「君一人でかい? 生徒会長は?」
あのクール眼鏡はどうしたんだ?
「あ、生徒会長が帰った後…後片付けの時に…」
あれま。
「それは、本当に迷惑を掛けたね。これからは、適度に休憩を挟む様にしよう」
「はい。ケタロウ様の分も、僕が頑張ります」
「こら」
メゴロウの言葉に、俺は撫でていた手を止めて、軽く拳を握ってその頭を小突いた。
「はい?」
「私だけ休んでどうするんだい? 君だって、幾ら慣れていても倒れる可能性があるだろう? 休憩は二人で。良いね? それから、呼び方が戻っているよ? 私が役立たずだから、もう兄とは呼んで貰えないのかい?」
「…えっ、あ…」
おい! 目を泳がせるなよ!
そうか? そうなのか? 俺は、そんなに頼りにならないのか!?
「…あの…僕が…その、そう呼んだんですけど…あの…」
うう…そんな言い難そうにしないでくれ。
出来るなら、一思いにグサッと言ってくれ。
まるで、死刑宣告を待っているみたいだ。受けた事はないが。
「…ケタロウ様は…やっぱり…僕の…アニキでは無くて…あの…」
「うん? 私なら、何を言われても大丈夫だよ? 遠慮しないで言ってごらん?」
「あぁの…その…ケタロウ様…では…駄目…ですか…?」
戻るのかっ! 心の距離がマリアナ海溝!!
「…それと…」
まだ、あるのか!?
「…疲れも…あると思うので…一緒に寝るのは…止めます…」
え?
「…え…。私は…そんなに寝相が悪かったのかい? それとも、いびきか、寝言なり歯軋りなり…」
メゴロウが俺に巻き付いていたのは、俺の寝相が悪かったからなのか? マジか。
いびきや、寝言なり歯軋りは、自分じゃ解らないし。
「ケタロウ様の寝相は悪くないですし、いびきや寝言も歯軋りもありません!!」
じゃあ、何で? 何で、いきなり?
あ、いきなり無呼吸になるとか? いや、それならそれで怖いから、一緒に寝て欲しい。無呼吸になったら起こして欲しい!
「それなら、何故? 疲れって…私の体調なら、問題は無いよ?」
記憶に無い体調不良は、ノーカンで良いだろう。
俺の体調より、メゴロウだ。
同じ部屋になってから、ずっとメゴたんぽして来たのに。
今更、一人で寝ろとかあんまりじゃないか。
お前は俺が居なくて眠れるのか?
眠れないから、俺の処に来たんじゃないのか?
「…ごめんなさい…本当は…僕が…眠れないんです…」
コーヒーを淹れて来ますね。って、メゴロウが俺の手をそっと避けて、ベッドから下りて部屋から出て行くまで、いや、出て行っても、俺はベッドの上で動けないで居た。
…何か、身体が重いな…?
…筋肉痛か…?
翌日に出るなんて、俺も歳を取ったなあ…。
「…ん…?」
いや、訂正。
筋肉痛じゃ、無い。
メゴロウだ。
メゴロウが、俺の腰に抱き付いて寝てる。
俺は抱き枕か。
お前はコアラか。
まあ、良いけどさ。
けど、珍しいな。
メゴロウより先に俺の方が起きるなんて。
「…疲れてるのかな…」
顔は胸の脇に押し付けられていて解らないが。
五月に入って気温も上がって来たし、一日くらい、朝の活動は無くても良いかもな。
右側にはメゴロウが居るから、左腕を動かして黒い頭を俺は撫でた。
メゴロウの髪は俺のより太いが、その分弾力があって触ってて気持ちが良い。
しかし。
困った。
先に目が醒めたのなら、たまには、俺がコーヒーを淹れてやりたい処だが、これじゃあ、動いたらメゴロウを起こしてしまう。これは、何の苦行なんだ? コーヒーの一つや二つで、絞首台送りになる事は無いと思いたいが…。
ん?
メゴロウの頭を撫でていた、俺の手が止まる。
――――――――…あ、れ…?
何だっけ…?
何か…忘れてる気がする…?
「…ん…」
おっと。
こら、もぞもぞ動くな。
脇が擽ったくて笑ってしまうだろ。
「…んみゅぅ…」
何とも可愛らしい声を出しながら、メゴロウの閉じられていた瞼がゆっくりと上がって行く。
そんなメゴロウの髪の中に指を入れて、軽く撫でながら、俺はこれ以上ないぐらいの爽やかな笑顔で言った。
「おはよう、メゴロウ。今日はお寝坊さんだね?」
「…っ…! ケタロウ様…っ…! 大丈夫ですか!?」
んあ?
目覚めたメゴロウはガバリと身体を起こして、正座して俺の顔を覗き込んで来た。
大丈夫って、何が?
何をそんな心配そうに、不安そうに俺を見て来るんだ?
身体を起こして、メゴロウと向かい合って、ポンッとその頭に手を置く。
落ち着け? な?
「そんなに慌ててどうしたんだい? 君は、私を抱き潰してしまう程の力があったのかい?」
そりゃあ、メゴロウは見た目の割に力があるけどさ。それは、俺みたいな坊ちゃんと比べて、だ。何処かの緑の超人とか、そんな力がある訳じゃ、ない。これは、ちょっとしたからかいだ。
…って…力…? …あれ…?
「…あ、いえ…。あの…昨日…活動中に、陽射しにあてられて倒れたんです…覚えていますか?」
「…え?」
何かが引っ掛かったが、メゴロウが放った言葉に俺は目を瞬かせた。
覚えていませんがな。
あ。
じゃあ、先刻、何か忘れてる気がすると思ったのは、それか? そっか。
「記憶力に自信はあるつもりだったけれど、恥ずかしい事は忘れるみたいだね。…ここへは誰かが運んでくれたのかい? お礼をしないとね」
頭を撫でながらそう言えば、メゴロウは少しだけ俯いてぼそぼそと話し出した。
「あ、いいえ。保健…救護室で休んだ後、ふらついてはいましたけれど、僕が肩を貸して…」
うっわ、本当に覚えてない。よっぽどの熱中症じゃないか。
「君一人でかい? 生徒会長は?」
あのクール眼鏡はどうしたんだ?
「あ、生徒会長が帰った後…後片付けの時に…」
あれま。
「それは、本当に迷惑を掛けたね。これからは、適度に休憩を挟む様にしよう」
「はい。ケタロウ様の分も、僕が頑張ります」
「こら」
メゴロウの言葉に、俺は撫でていた手を止めて、軽く拳を握ってその頭を小突いた。
「はい?」
「私だけ休んでどうするんだい? 君だって、幾ら慣れていても倒れる可能性があるだろう? 休憩は二人で。良いね? それから、呼び方が戻っているよ? 私が役立たずだから、もう兄とは呼んで貰えないのかい?」
「…えっ、あ…」
おい! 目を泳がせるなよ!
そうか? そうなのか? 俺は、そんなに頼りにならないのか!?
「…あの…僕が…その、そう呼んだんですけど…あの…」
うう…そんな言い難そうにしないでくれ。
出来るなら、一思いにグサッと言ってくれ。
まるで、死刑宣告を待っているみたいだ。受けた事はないが。
「…ケタロウ様は…やっぱり…僕の…アニキでは無くて…あの…」
「うん? 私なら、何を言われても大丈夫だよ? 遠慮しないで言ってごらん?」
「あぁの…その…ケタロウ様…では…駄目…ですか…?」
戻るのかっ! 心の距離がマリアナ海溝!!
「…それと…」
まだ、あるのか!?
「…疲れも…あると思うので…一緒に寝るのは…止めます…」
え?
「…え…。私は…そんなに寝相が悪かったのかい? それとも、いびきか、寝言なり歯軋りなり…」
メゴロウが俺に巻き付いていたのは、俺の寝相が悪かったからなのか? マジか。
いびきや、寝言なり歯軋りは、自分じゃ解らないし。
「ケタロウ様の寝相は悪くないですし、いびきや寝言も歯軋りもありません!!」
じゃあ、何で? 何で、いきなり?
あ、いきなり無呼吸になるとか? いや、それならそれで怖いから、一緒に寝て欲しい。無呼吸になったら起こして欲しい!
「それなら、何故? 疲れって…私の体調なら、問題は無いよ?」
記憶に無い体調不良は、ノーカンで良いだろう。
俺の体調より、メゴロウだ。
同じ部屋になってから、ずっとメゴたんぽして来たのに。
今更、一人で寝ろとかあんまりじゃないか。
お前は俺が居なくて眠れるのか?
眠れないから、俺の処に来たんじゃないのか?
「…ごめんなさい…本当は…僕が…眠れないんです…」
コーヒーを淹れて来ますね。って、メゴロウが俺の手をそっと避けて、ベッドから下りて部屋から出て行くまで、いや、出て行っても、俺はベッドの上で動けないで居た。
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