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ころがって
【繋】ぽかぽかを守りたい
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「…うん…? 星、もう一度言ってくれるかい?」
『おひさまのかくれんぼ』から、二回目の朝が来た。
『ぎょーむしょり』とかで、しばらく『かんづめ』だった親父殿が家に帰って来た。
朝飯を作って、それを親父殿と食べながら、おいらは『かくれんぼ』の時から思っていた事を口にした。
「おいらも、親父殿とゆきおのおじさんと同じ仕事がしたい」
おいらがそう言うと、目の前に座るよれよれの親父殿が、口からはみ出てたよれよれのワカメをするするとすすって、手に持っていたお椀をテーブルの上に置いて、箸を箸置きへと戻した。
「…元妖の君が、かね?」
テーブルに両肘を付いてその手を組んで、口元を少し隠す様にして聞いて来る。
何時もゆるゆるの目は、細くなってる。
「うん」
地面が揺れそうな低い声に、おいらは頷いた。
何かわかんないけど、膝の上に置いてた手をぎゅっと握ったら、ちょっとぬるっとした。汗を掻いてるみたいだ。
「かつての仲間を斬ると言うのかね?」
「うん」
あんなの仲間じゃない。
いっぱい色んな事を教えてくれるせんせーの足を食べた。せんせーの足は『ぎそく』になるって聞いた。
何時もぽかぽかのゆきおを泣かせた。
おじさんに怪我をさせて、ゆきおを泣かせた。
ゆきおだけじゃない。きっと他にも泣いた人はいる。
せんせーや、おじさんだけじゃなく、怪我をした人はいっぱいいる。
「おいら、何も出来なかった。おいら弱いから、おじさんといっしょにあいつらやっつけられなかった。おいら、もうあんな思いはしたくない。もう、ゆきおが泣くの見たくない。ここが、ぎゅーってなるの嫌だ」
着物の上から胸を押さえると、親父殿の目がぽかぽかした物になった。
「そうかい。星は雪緒君が好きなんだね?」
「すき?」
親父殿の言葉に、おいらは首を傾げた。
その声は、もう地面が揺れそうな声じゃない。ぽかぽかしてる。
「大切だと云う事だよ」
「…たいせつ…」
親父殿の言葉を、おいらはただ繰り返す。
「無くしたくない、失いたくない、手放したくない、守りたい、そう云った物だね」
親父殿のぽかぽかが、更にぽかぽかになった。
「…すき…たいせつ…」
もう一度、親父殿の言葉を繰り返した。
そうしたら、ぎゅーっとしてた胸が、ぽかぽかとして来た。
「…うん…。おいら、ぽかぽかがすきだ。ゆきおからぽかぽかが無くなるの嫌だ。だから、ぽかぽかを守れる様になりたい!」
「うん、うん…う…うううううっ!! 星が大人になっちゃったよーっ!! パパ悲しいよーっ!!」
親父殿はそう言うと、組んでいた手を崩してテーブルに置いて、その上に顔を乗せて泣き出した。
「あわっ!? おいら、ぽかぽかの親父殿もすき! 雷の時に、いっしょに寝てくれるぽかぽかの親父殿もすき! だから、泣かないでっ!!」
おいらは慌てて、親父殿の肩をぽんぽんと叩きながら言った。
親父殿は『かんどうや』らしい。何かに『かんどう』したりすると、すぐに泣いてしまう。
「うんうん、星は良い子だねえーっ!! パパ嬉しいよー!」
「あと、あと、料理を教えてくれるぽかぽかの親父殿もすきだから!」
「うんうん、もっと言ってー!」
「えっと、えっと…」
それからおいらはずっと、すきだと言い続けた。
………いっぱい言い過ぎて、すきって何? って、なった。
『おひさまのかくれんぼ』から、二回目の朝が来た。
『ぎょーむしょり』とかで、しばらく『かんづめ』だった親父殿が家に帰って来た。
朝飯を作って、それを親父殿と食べながら、おいらは『かくれんぼ』の時から思っていた事を口にした。
「おいらも、親父殿とゆきおのおじさんと同じ仕事がしたい」
おいらがそう言うと、目の前に座るよれよれの親父殿が、口からはみ出てたよれよれのワカメをするするとすすって、手に持っていたお椀をテーブルの上に置いて、箸を箸置きへと戻した。
「…元妖の君が、かね?」
テーブルに両肘を付いてその手を組んで、口元を少し隠す様にして聞いて来る。
何時もゆるゆるの目は、細くなってる。
「うん」
地面が揺れそうな低い声に、おいらは頷いた。
何かわかんないけど、膝の上に置いてた手をぎゅっと握ったら、ちょっとぬるっとした。汗を掻いてるみたいだ。
「かつての仲間を斬ると言うのかね?」
「うん」
あんなの仲間じゃない。
いっぱい色んな事を教えてくれるせんせーの足を食べた。せんせーの足は『ぎそく』になるって聞いた。
何時もぽかぽかのゆきおを泣かせた。
おじさんに怪我をさせて、ゆきおを泣かせた。
ゆきおだけじゃない。きっと他にも泣いた人はいる。
せんせーや、おじさんだけじゃなく、怪我をした人はいっぱいいる。
「おいら、何も出来なかった。おいら弱いから、おじさんといっしょにあいつらやっつけられなかった。おいら、もうあんな思いはしたくない。もう、ゆきおが泣くの見たくない。ここが、ぎゅーってなるの嫌だ」
着物の上から胸を押さえると、親父殿の目がぽかぽかした物になった。
「そうかい。星は雪緒君が好きなんだね?」
「すき?」
親父殿の言葉に、おいらは首を傾げた。
その声は、もう地面が揺れそうな声じゃない。ぽかぽかしてる。
「大切だと云う事だよ」
「…たいせつ…」
親父殿の言葉を、おいらはただ繰り返す。
「無くしたくない、失いたくない、手放したくない、守りたい、そう云った物だね」
親父殿のぽかぽかが、更にぽかぽかになった。
「…すき…たいせつ…」
もう一度、親父殿の言葉を繰り返した。
そうしたら、ぎゅーっとしてた胸が、ぽかぽかとして来た。
「…うん…。おいら、ぽかぽかがすきだ。ゆきおからぽかぽかが無くなるの嫌だ。だから、ぽかぽかを守れる様になりたい!」
「うん、うん…う…うううううっ!! 星が大人になっちゃったよーっ!! パパ悲しいよーっ!!」
親父殿はそう言うと、組んでいた手を崩してテーブルに置いて、その上に顔を乗せて泣き出した。
「あわっ!? おいら、ぽかぽかの親父殿もすき! 雷の時に、いっしょに寝てくれるぽかぽかの親父殿もすき! だから、泣かないでっ!!」
おいらは慌てて、親父殿の肩をぽんぽんと叩きながら言った。
親父殿は『かんどうや』らしい。何かに『かんどう』したりすると、すぐに泣いてしまう。
「うんうん、星は良い子だねえーっ!! パパ嬉しいよー!」
「あと、あと、料理を教えてくれるぽかぽかの親父殿もすきだから!」
「うんうん、もっと言ってー!」
「えっと、えっと…」
それからおいらはずっと、すきだと言い続けた。
………いっぱい言い過ぎて、すきって何? って、なった。
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