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向日葵―奇跡の時間―
向日葵の想い【九】
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…あら…? ここは何処かしら…? 真っ暗で何も見えませんわね? あらあら…?
「ありがとうございます。戴きますね」
え? ゆき君?
ゆき君の声が聞こえたと思ったら、眩い光が周囲を照らして、思わず閉じてしまった瞳を開けたら、そこには。
「…ゆき君…よね…?」
いきなり目の前に現れたゆき君に驚いてしまいましたわ。
だって、私の知っているゆき君とは違うのだもの。
私が知って居るゆき君より、幾つか歳を重ねた感じかしら?
顔色も凄く良くて、頬もふっくらとしていて、唇も艶やかで、髪だってとても黒々と輝いていて…でも、伸び過ぎでは無いのかしら? お尻の下までありそうな髪が床に広がっているわ。
…何故、床に座っているのかしら?
…それに何故、十二単を着ているのかしら? まるで昔のお姫様のようよ?
ニコニコと、手にしていた長細い銀色の包みを捲って行く指先は、爪が割れていなくてとても綺麗。
「ふわ…美味しそうなちょこれいとです」
あらあら。そんなに目尻を下げて、何て幸せそうに笑うのかしら。
相変わらず両手で持って、ゆっくりと啄む様に食べるのね。
歳を重ねてもゆき君は変わらないのね?
そんな笑顔を浮かべる様になるのね?
それにしても、ここは何処なのかしら?
何故、衝立に木や草、お花が描かれているのかしら?
「ゆき君、美味しそうに食べている処を悪いのだけど…あら…?」
あらあら? 身を屈めてゆき君の肩に手を置こうとしたら、手がすり抜けてしまいましたわ?
それに、ゆき君には私が見えていないみたい? あらあら? これは夢なのかしら?
ゆき君の目の前で、手をひらひらとさせてみたけれど、チョコレートに夢中ってだけでなくて、やはり反応がありませんわね?
「…あらあら…困りましたわ…」
あら? 夢なのなら困る必要はありませんわよね?
軽く首を傾げてから、私は目の前に居るゆき君の鼻に手を伸ばします。
「…ふふ…」
紫様と同じ様に、人差し指と親指を使ってゆき君の鼻を摘まむ仕草を真似てみます。
実際に鼻を摘まむ事は無いけれど、夢なら良いわよね? 現実では、この可愛らしい鼻は紫様の物ですしね。
「あ、いけません」
「え?」
触っていないのに、いきなりゆき君にそう言われてしまって、慌てて手を引っ込めてしまったわ。
ゆき君は丁寧に捲った包みでチョコレートを包み直して床に置きました。
あらあら? 床に直に…でもないのかしら…食べ物を置くだなんて、ゆき君らしくないわね?
「失礼します。くーくー」
と、顎に指をあてていたら、ゆき君が目を閉じて、こてんと床に倒れ込んでしまいました。
あらあら? いきなりどうしたのかしら?
「おー、誰か倒れてるぞー」
「ひひーん!」
と、また顎に指をあてて首を捻っていましたら、何とも感情の感じられない声が聞こえて来まして、声のした方を見たら…。
えぇと…馬のお面を被った誰かが四つん這いになっていまして…その上に、長い髪を馬の尻尾にした、お殿様が着ていそうな袴姿の男の子が乗っていまして…ああ…何てシュールな夢なのかしら…。
「おー。これが噂の白ゆきお姫かー。あー、眠り薬入りのチョコを食べたんだな。おいらが起こしてやるからな」
余りの棒読みに、頭がクラクラしますわ。
何なのかしら、これは?
しらゆき…って異国のお話よね?
これは、つまりお芝居と云う事なのかしら?
ゆき君がお姫様で、この吊り目の、馬の尻尾君が王子様と云う事なのかしら?
何て考えている間にも、馬の尻尾君はお面の馬から降りて、ゆき君の傍へと歩いて行きます。お面の馬は四つん這いのまま、えっちらおっちらと、衝立の陰へと引っ込んでしまいました。
「んじゃ、口付けして起こすからな」
あらあら。そう云えばそんなお話でしたわね?
「星! そう云う事は人前でやっては駄目だよっ!! ここに居る、心の狭いおじさんが、怖い顔で君を睨んでいるからねっ!」
あら?
「クソ親父におじさんなぞと呼ばれたくは無いっ!!」
あらあら?
声のした方に視線を巡らせましたら、離れた場所でパイプ椅子に並んで座る叔父様と紫様のお姿がありましたわ。
あらあらあら?
叔父様が手にしているのは写真機かしら? ゆき君を撮っていたのかしら? あら、でも"せい"って?
紫様も、写真機を持っていますわね? やはり、ゆき君を?
あら? あらあら? 本当に、これは何と云う夢なのかしら?
ああ、でも…写真…そうね…そう云えば、まだゆき君の写真を撮っていない気がしますわ。夢から覚めたら写真を撮りましょう。ゆき君と私達皆で、笑顔の写真を。
「星、ほら! パパが、この怖いおじさんを取り押さえているからね! そこの物陰で、ぶっちゅ~っ、とね!」
あらあら? パパ?
「離せ、クソ親父っ!!」
あらあら? 先程のは聞き間違いでは無かったのね?
「もーっ! 親父殿うるさいぞっ! 邪魔すんなら帰れだぞっ!!」
親父殿って?
「旦那様もいい加減にして下さいっ!! 皆様の御迷惑になっていますよっ!!」
あらあら、ゆき君が立ち上がって、胸の前で両手で拳を作って怒ってますわ?
あらあら、ゆき君たら、こんな風に怒るのね? 怒る様になるのね?
あらあら、何て素晴らしい夢なのかしら? 何故だか胸の奥がぽかぽかとしてきましたわ。
何て、暖かい夢なのかしら。ぽかぽかとぽかぽかと、まるで春の陽だまりの様に…。
「ありがとうございます。戴きますね」
え? ゆき君?
ゆき君の声が聞こえたと思ったら、眩い光が周囲を照らして、思わず閉じてしまった瞳を開けたら、そこには。
「…ゆき君…よね…?」
いきなり目の前に現れたゆき君に驚いてしまいましたわ。
だって、私の知っているゆき君とは違うのだもの。
私が知って居るゆき君より、幾つか歳を重ねた感じかしら?
顔色も凄く良くて、頬もふっくらとしていて、唇も艶やかで、髪だってとても黒々と輝いていて…でも、伸び過ぎでは無いのかしら? お尻の下までありそうな髪が床に広がっているわ。
…何故、床に座っているのかしら?
…それに何故、十二単を着ているのかしら? まるで昔のお姫様のようよ?
ニコニコと、手にしていた長細い銀色の包みを捲って行く指先は、爪が割れていなくてとても綺麗。
「ふわ…美味しそうなちょこれいとです」
あらあら。そんなに目尻を下げて、何て幸せそうに笑うのかしら。
相変わらず両手で持って、ゆっくりと啄む様に食べるのね。
歳を重ねてもゆき君は変わらないのね?
そんな笑顔を浮かべる様になるのね?
それにしても、ここは何処なのかしら?
何故、衝立に木や草、お花が描かれているのかしら?
「ゆき君、美味しそうに食べている処を悪いのだけど…あら…?」
あらあら? 身を屈めてゆき君の肩に手を置こうとしたら、手がすり抜けてしまいましたわ?
それに、ゆき君には私が見えていないみたい? あらあら? これは夢なのかしら?
ゆき君の目の前で、手をひらひらとさせてみたけれど、チョコレートに夢中ってだけでなくて、やはり反応がありませんわね?
「…あらあら…困りましたわ…」
あら? 夢なのなら困る必要はありませんわよね?
軽く首を傾げてから、私は目の前に居るゆき君の鼻に手を伸ばします。
「…ふふ…」
紫様と同じ様に、人差し指と親指を使ってゆき君の鼻を摘まむ仕草を真似てみます。
実際に鼻を摘まむ事は無いけれど、夢なら良いわよね? 現実では、この可愛らしい鼻は紫様の物ですしね。
「あ、いけません」
「え?」
触っていないのに、いきなりゆき君にそう言われてしまって、慌てて手を引っ込めてしまったわ。
ゆき君は丁寧に捲った包みでチョコレートを包み直して床に置きました。
あらあら? 床に直に…でもないのかしら…食べ物を置くだなんて、ゆき君らしくないわね?
「失礼します。くーくー」
と、顎に指をあてていたら、ゆき君が目を閉じて、こてんと床に倒れ込んでしまいました。
あらあら? いきなりどうしたのかしら?
「おー、誰か倒れてるぞー」
「ひひーん!」
と、また顎に指をあてて首を捻っていましたら、何とも感情の感じられない声が聞こえて来まして、声のした方を見たら…。
えぇと…馬のお面を被った誰かが四つん這いになっていまして…その上に、長い髪を馬の尻尾にした、お殿様が着ていそうな袴姿の男の子が乗っていまして…ああ…何てシュールな夢なのかしら…。
「おー。これが噂の白ゆきお姫かー。あー、眠り薬入りのチョコを食べたんだな。おいらが起こしてやるからな」
余りの棒読みに、頭がクラクラしますわ。
何なのかしら、これは?
しらゆき…って異国のお話よね?
これは、つまりお芝居と云う事なのかしら?
ゆき君がお姫様で、この吊り目の、馬の尻尾君が王子様と云う事なのかしら?
何て考えている間にも、馬の尻尾君はお面の馬から降りて、ゆき君の傍へと歩いて行きます。お面の馬は四つん這いのまま、えっちらおっちらと、衝立の陰へと引っ込んでしまいました。
「んじゃ、口付けして起こすからな」
あらあら。そう云えばそんなお話でしたわね?
「星! そう云う事は人前でやっては駄目だよっ!! ここに居る、心の狭いおじさんが、怖い顔で君を睨んでいるからねっ!」
あら?
「クソ親父におじさんなぞと呼ばれたくは無いっ!!」
あらあら?
声のした方に視線を巡らせましたら、離れた場所でパイプ椅子に並んで座る叔父様と紫様のお姿がありましたわ。
あらあらあら?
叔父様が手にしているのは写真機かしら? ゆき君を撮っていたのかしら? あら、でも"せい"って?
紫様も、写真機を持っていますわね? やはり、ゆき君を?
あら? あらあら? 本当に、これは何と云う夢なのかしら?
ああ、でも…写真…そうね…そう云えば、まだゆき君の写真を撮っていない気がしますわ。夢から覚めたら写真を撮りましょう。ゆき君と私達皆で、笑顔の写真を。
「星、ほら! パパが、この怖いおじさんを取り押さえているからね! そこの物陰で、ぶっちゅ~っ、とね!」
あらあら? パパ?
「離せ、クソ親父っ!!」
あらあら? 先程のは聞き間違いでは無かったのね?
「もーっ! 親父殿うるさいぞっ! 邪魔すんなら帰れだぞっ!!」
親父殿って?
「旦那様もいい加減にして下さいっ!! 皆様の御迷惑になっていますよっ!!」
あらあら、ゆき君が立ち上がって、胸の前で両手で拳を作って怒ってますわ?
あらあら、ゆき君たら、こんな風に怒るのね? 怒る様になるのね?
あらあら、何て素晴らしい夢なのかしら? 何故だか胸の奥がぽかぽかとしてきましたわ。
何て、暖かい夢なのかしら。ぽかぽかとぽかぽかと、まるで春の陽だまりの様に…。
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