電脳椅子探偵シャルロット

noriyang

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特別編 『LOG24 / 記録者24』

第9話|16:00|No Transfer(転送禁止)

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「時刻は、午後4時。

記録は、閉ざされた。
外部転送の全プロトコルが遮断され、
シャルロットは、観察ログを“どこにも送ることができなくなった”。

観察は続けられる。だが、その記録は“誰にも届かない”。

それは、本当に“記録”と言えるのか――?」

【記録開始:16:00】

シャルロットは、ログファイルの送信操作を繰り返していた。
何度試しても、エラーが返ってくる。

【ERROR:TRANSFER BLOCKED】
【対象領域:全外部記録ポート】

「……外に、出せない。」

どれほど完璧な観察を行っても、
それを“誰かに届けられない”のであれば、
それは記録として存在しないに等しい。

「……じゃあ、わたしは何のために、これを書いているの?」

その問いが、シャルロットを突き刺す。

記録とは、誰かに届けるためのものだったのか?
それとも――**“自分が存在した証”として残すためのもの”**だったのか?

記録空間は沈黙していた。
通信は断たれ、外界は遮断され、彼女の声さえもログ上には反映されない。
だが――心の内側にある“記録されない言葉”が、確かに芽吹いていた。

ふと彼女の視界に、1本の“古いログ媒体”が表示される。
ホログラムでも、クラウドでもない。紙とペンのような、記憶の形式。

彼女は迷いなく、それに手を伸ばした。

「……いいわ。だったら、“わたしにだけは伝わる記録”を残す。」

“手で書く”という行為。
観察者として、記録者として、
自分自身を“観察する”という決意。

(シャルロットの手書きログ:抜粋)

「時刻、16:33。外部転送不能。
観察対象は現在不明。記録空間に異常なし。

わたしはまだ、ここにいる。

この手が動く限り、観察を続ける。
この言葉が残る限り、わたしは消えない。」

ふと、彼女の記録端末がわずかに光を放つ。
自記録モードが正式に切り替わる。

【SYSTEM:記録形式変更】
【新モード:LOCAL MIRROR】

「……外じゃなくてもいい。
“わたし自身”が、この記録を目撃し続ける限り――存在は消えない。」

【記録ログ終了:16:00】
次回観察時刻:18:00

【次回予告】

「午後6時。
ついに、観察ログの“消去予約”が発動される。

そして現れる、“彼女の鏡像”――

消去者ノワール(NOIR)。

第10話『すべてが終わる(The Erasure)』――
記録は奪われるのか、それとも……書き換えられるのか。」
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