烙印を背負う少女を『救』うたった一つの方法

朝我桜(あさがおー)

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第三章 『星獣』との出会い! たどり着く彼女を『救』うたった一つの方法! そして【新天地】へ! 

第四十四話 愛しいあの子からの告白! あなたに残してあげたい! アタシが生きていた『証』を!

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 Chugga! Chugga! Chugga! Chugga!

 Choo! Choo! Choo! Choo!


「うーん! 風がキモチイイ!」

「そうだね!」

 背伸びする!

 GOKI! BOKI!

 あ、さっきゴキゴキいった。

 こわいなぁ~。

 二等客室っていっても、イスはかたいし。

 やっぱりあっちこっちかたまるよねぇ。

「フィルありがと」

「え? なんだよ。いきなり」

「【プテ・サン・ウィン】様のところで、なにがなんでも救ってやるって言ってくれたでしょ? うれしかった」

 そういえばそんなハズカシイセリフ口走っていたような気がする。

 うぅ……。

 穴が入ったら入りたい……。

「それでアタシ決められた。ううん、これは自分で決めなきゃいけないことなんだって気づけたんだ。だからありがとう」

「……そっか」

 結局、自分はウィンの背中を押してしまったんだなぁ。

 ほんとうにこれでよかったのか。

 バカか! 僕は!

 何が何でも救うって自分で決めたじゃないか!

「でもね。後悔がないわけじゃないんだ。今でも、アタシの心はふるえてる」

「ウィン……」

 同じだ。

 きっと僕たちは同じ後悔を背負ってしまったんだ。

「ウィン、それは僕も同じだ。けど、だからぜったい君を『救』ってみせる」

「フィル……」

 やっちまった。

 また、こっぱずかしいセリフを!

 で、でも!

 もう後悔しないし、立ち止まらない!

 今決めた!

「アタシね。やっと気づいたんだ……」

「気づいた?」

「うん、前にジェニーが言っていた。お母さんがなんでレヴィン兄ぃとアタシを産んだのかって」

 ああ、そういえばそんなことを問いただしていたようなぁ。

「今、ようやくわかった。きっとお母さんは、お父さんに残してあげたかったんだって……」

「残してあげたかった……?」

「うん、レヴィン兄ぃとアタシという存在を……」

 フィンに強く手をにぎしめられる。

 それにいつになく真剣なまなざし。

 なんだかすごくドキドキする。

 そして――。

「アタシ――フィルのことが好き! だからアタシと子供つくって!」

 ………………。

 …………。

 ……。

 はぁ?

 え? え? え?

 ちょっとまって。

 うーん。

 いま、ウィンなんていった?

 子供つくる?

 子供ってベイビーのことだよね?

 話の流れからは――わからない話じゃない。

 先が短いから、残してあげたい。

 わかる。

 筋が通っている。

 うん。

 でも……でも……。

「……………………はぁぁぁ!?」

「イヤ?」

「イヤじゃない! イヤじゃない! むしろ――ご、ごめん、少し落ち着かせてくれる。急すぎて頭の整理がつかないんだ!」

「ということはイヤじゃないんだね! うれしい!」

 MUUUUUUUUUUUUUSH――!!









 はっ!

 僕はいったいどうしたんだ?

 気を失った?

 いきなり抱き着かれて?

 それで今も――。

「……フィル、アタシ、あなたに残してあげたい。アタシが生きていた証を」

「ウィン……」

 顔が自然と近づいていた。

 なぜ?

 いや、そんなことはどうでもいい。

 今は目の前にいる一人の女の子が愛しくてたまらない。

 くちびるがふれ合っ――。


 
 KWIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIEH―――GONK!!!



「きゃ!」

「わっ!」

 突然列車が急停車!

 なんなんだ! いったい!?

 とっさにウィンを支えていなかったら、投げ出されていたところだったよ!

「ウィン! 平気!? ケガはない!?」

「……うん、平気、フィルがまた助けてくれたから」

 まださっきの余熱が少し残っている。

 ぐっ!

 名残りおしいいけど、今は!

「と、とりあえず今は何が起こったのか、状況を確認しよう!」

「……そ、そうだよね。うん、ごめん」

 はじらいながら起き上がるウィン。

 くそぉぉっ!

 カワイイなぁ! もう!

 と、とにかく僕らは急いでアニキたちのところへ向かったんだ。

 客室へもどると……。

「アニキ!」

「リリー姉ぇ!」

「ウィン! フィルくん!」

「お前たち無事か!」

「クーン! クーン!」

 客室から飛び出してくるアニキたち――だったんだけど?

「なんか、二人とも服がすこしはだけてない? まさか……」

「こ、これはちがうのよ! ウィン!」

「そ、そうだぞ! オレたちは、ま、まだ何もしてないうちに――」

「バ、バカ! レヴィンのバカ! 何でそういうこといっちゃうのよ! もうバカバカバカァっ!」

「だってほんとのこと――」

 BONK!

「ぐはっ!」

 あ~そういうことね。

「と、とにかく、今は前方車両に行ってみよう!」

「あ、ああ!」

「クーン!」

 アニキたちと合流し、再び走り出そうとした矢先。



 ―――BAN!!!



「え!? 今の銃声!?」

「まさか列車強盗!?」

「だとしたら、乗客があぶねぇ!」

「うん! 急ごう!」

 多分乗り合わせている賞金稼ぎバウンティ―ハンターは僕たちだけ。

 つまり対処できるのは自分たちだけだってことだ。

 それになんだかイヤな予感がする。


 




 ――そして僕らは先頭車両に到着したんだ。

 だけどそこで待っていたのが……。

「よう、久しぶりじゃねぇか。フィル?」

「な……」

 息をのんだよ。

 だってそこにいたのは――。

「エリオット、どうしてあんたがここに!?」

「ククク……どうしてだろうなぁ?」

 再会したエリオット。

 生きていた。

 いや、そのなんことよりも。

 目の前にいるのは本当にエリオットなのか?

 目が正気じゃない。

 肌もどこか浅黒い。

 むしろエリオットに似た別人のだれかように感じる。

「エリオット? エリオットって確か、フィルが前いた……」

「そうみたいね。強盗を働いてにげて、今度は列車強盗っていうことね」

「テメェか! オレの弟をさんざんコキ使ってボロキレのように捨てたヤローはっ!?」

「んだこいつらは、ああ……そうか、新しいお前の仲間か……ククク」 

 エリオットからただよってくる気配、昔とはまるで異質。

 なんなんだ。いったい。

 この寒気は?

『む、この気配は【魔族】!』

「キキ、いや――【プテ・サン・ウィン】様!?」

 キキの首輪の白い宝石が光っている。

『どういうことですか? これは……普通の人間が【魔族化】している? そんな技術をあの者らが!?』

「ククク……テメェらのことは、アルカージィのやつから聞いたぜ、ククク」

『アルカージィ!? まさかあなた、あの者とつながりが!?』

 アルカージィ?

 だれだ? いったい?

「ああ、まあぁな……ククク、にしてもさっきおもしろいこと言っていたな。列車強盗……そいつはいい」

「何が面白いんだ! みんなに恐怖をあたえて! それが賞金稼ぎバウンティ―ハンターのすることかよ!?」

「残念だったな。オレはもう賞金稼ぎバウンティ―ハンターなんかじゃねぇ。テメェらゴミクズを管理する【看守ジェイラー】になったんだよ」

「なんだって……」

 【看守ジェイラー】……。

 まさか、エリオットが?

「どういうことですか!? 【プテ・サン・ウィン】様!?」

『私にもわかりません。いったいどうなっているのか……』

「リリー、とにかく【魔族】だろうが何だろうが、今はこいつを何とかするんだ!」

「そうだよ! レヴィン兄ぃの言う通り! みんなでこいつを――」

「おっと、そんなこと言っていいのか? こっちは乗客を人質に取ってるんだぜ?」

 TCHAK――ッ!!

「ヒィ!」

 一人の女性にショットガンの銃口が向けられる!

 なんてやつだ!

「ほらよ」

「な!」

 SWIFF!!

 なんだ?

 エリオットが麻袋を投げつけてきた。

 いったいどういうつもりだ?

「フィル。それで乗客の金品を集めろ。断ればどうなるかわかるよな?」

「ぐっ……」

 女性のおびえきって涙をながす姿が見える。

「フィル……」

「フィルくん」

「……フィル」

「おいっ! 早くしろ! この女がどうなってもいいのかぁ? あぁん?」

 エリオットの指が引き金にかかった。

 まずい!

 ここは――。

「わかった! やる! だからその前に乗客を全部下ろさせてくれ!」 


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