烙印を背負う少女を『救』うたった一つの方法

朝我桜(あさがおー)

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第三章 『星獣』との出会い! たどり着く彼女を『救』うたった一つの方法! そして【新天地】へ! 

最終話 ついに決着! 覚悟を銃身(バレル)にあずけて! そして僕らは『新天地』へ

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 くそっ! なんてしぶといっ!

 銃をぬき、エリオットの頭にねらいを定める!

「……全員どけ! 道を開けろ! ハァ……ハァ……」

「このクズヤロー! ウィンをはなしやがれ!」

「どけっつってんだよ! この女を殺すぞ!」

 オノをふりまわすエリオット!

 ほっといても死にそうだけど、その前にウィンが殺されるかも!

 くちびるかみしめて後ろへさがるアニキたち。

「……なんでオレが……テメェもだ! フィル! 銃を捨てろ! この女がどうなってもいいのか!? ハァ……ハァ……」

 手段を選んでいるヒマも、考えるヒマもない!

「エリオット、ウィンをはなせ」

「んだと!? 本当に殺すぞ! この女をっ!」

 やるしかない!

「……フィ……ル、撃って……」

「うるせぇ! 女! さわぐんじゃねぇ!」

 息を全部はいた――。

「フィル! 私ごと撃ってぇ!!」

「ッワァン!」

 えっ!?

 突然キキが自分の頭を飛びこえて――!

「ギャー!!」

 エリオットの腕にかみついた!

「ぐぁ! こ、このクソ犬っ!!」

 ウィンがはなれた!

 今だ!

 覚悟を銃身バレルにあずけ、銃爪トリガーを引く!

 BAAM!!

「……っ!」

 ――ZYNK。

 糸が切れたようにたおれるエリオット……。

 そして――終わった。

 これで――本当に。

 全部……。

「ウィンっ!」

「フィル!」

 僕は飛びつてくるウィンを抱きしめたよ。

 力いっぱい。

「よかった……本当に……無事で」

「……ありがとう……本当に……ありがとう。フィル……」

「よかった……ウィン。無事で……ありがとうフィルくん」

「さすがオレの弟だな。ほんとに……」

 三度、歓声と拍手の雨が降るホーム。

 その中、ウィンが泣き止むまで僕らは抱き合ったよ。

 そう、その雨がやむまで――。




――タンザナイト駅ホーム――



 一日待って、僕らは再び、【サードニクスヘヴン】を目指した。

 客室は特別に鉄道会社が用意してくれて、なんと一等客室!

「さて、これで心おきなく【サードニクスヘブン】を目指せるな!」

「そうね! ほんともう何もないといいけど!」

「もう……リリー姉ぇ、そういうこと言っちゃだめだよ」

「あら、そうね。ごめんなさい」

「……あはは」

 でも、よかった。

 人質に取られた後だというのに、ウィンは意外に元気そう。

「フィル……だいじょうぶ?」

「え? なにが?」

「……昨日、あんなことがあって、初めて人を殺して」

「あぁ……人というかもう【魔族】だったけどね。う~ん、そりゃあ、まぁ、まったくこたえていないってことはないってことはないかな」

 あれは仕方がなかった。

 ウィンと、大勢の人を守るにはああするしかなかったって。

 考えようとはしている。

 現にそうだったし……。

 もちろん後悔はしていない。

「気に病むことはないんだぜ! フィル。お前は町とウィンを救ったんだ!」

「そうよ! むしろフィルくん一人にこんな責を背負わせてごめんなさい!」

「クーン! クーン!」

「あ、そうね。キキも助けてくれたんだもんね。フィルくん一人じゃなかったわね」

「そうだよ! リリー姉ぇ! 私たちは家族なんだから、この責はみんなのものだよ!」

「ああ、そうだ。ウィンの言う通り!」

「……みんな。ありがとう」

 ほんとに良い仲間――いや、家族をもった。ほんと。

 昔を思えば考えられなかった。

 そういえばいろいろなところを旅した。

 最初の遺跡では、果汁まみれになり――。

 グリーンロッジでは、バンデッドウルフの森につるされ――。

 トパゾタウンでは、グリードウォームの体液まみれになり――。

 モルガバレーでは、男の娘にふりまわされ――。

 カルサイトリコでは、ジェニファーさんとちょっとしたいざこざ――。

 サンストーンキャニオンでは……。



 いや、ちょっとまて!

 そんなロクな思い出ばかりじゃないはずだろ!



 う~ん、故郷に帰ったら色々報告しようと思ったけど、いったん整理しとかなきゃな……。


『みなさん。昨夜お話しした〈フォールンスター〉の方からの案内人の件ですが……』

「ああ、そうでした」

「昨日、いち早く保安官に知らせてくれたという……?」

「んで、今日待っていてくれるとかなんとか言っていたよな」

 なんでも〈フォールンスター〉様の使いだとか。

 昨日保安官が言っていた「のじゃのじゃ」って言う人がその人らしい。

「それで〈プテ・サン・ウィン〉様、その案内人の方はどちらに?」

『どうやら、中で待っているという話です』

「そうですか、ならさっそく列車に乗りましょう」

「昨日はあんなことがあったから一等客室をちゃんとおがめなかったしな!」

「やだもう! レヴィン兄ぃ! その話はなし! 思い出させないっ!」

「お、おう、そうだな! 悪い悪い」

 列車へと一歩一歩ふみしめるように、スロープを登っていく。

「フィル、昨日はもうつかれ切ってきなかったから、今日は……ね?」

「? え? なに? なんのこと?」

「……もう、そんなこと女の子に言わせる気!? 約束のこと!」

「約束――あっ!」

 あぁ……ドタバタしていたから本当に忘れていた。

「いや、ちょっと、それ、この場でいう?」

 しかも二人がいる前で!

 いや、自分だって興味がないわけじゃない。

 ただ、自分は女性に対して誠実で、まじめに接したいんだ。

 だけど、男女そういうことをぬきにした純粋な好意は持っているは本当だよ――。

 だからウィンの想いにもちゃんと答えたい。

 ――ねぇ? 僕はいったいどうしたらいいと思う?

「約束? 二人とも何の話?」

「どうした? お前ら何かあったのか?」

「レ、レヴィン兄ぃたちには関係な――」

 GARANK GARANK――。

「待ちくたびれたぞ!」

 客室に入るや、なんか小さい女の子がいる。

 保安官が話してくれた通り、薄緑色を基調としたドレス。

 それと金髪赤目。

 にしても白い肌。

 ウィンより白くないか?

 いったいなんだこの子。

『お久しぶりですね。マルティナ』

「おお、その声は〈プテ・サン・ウィン〉じゃな! ひさしぶりじゃのぅ! なんじゃ? 姿がみえぬが……その犬の通信機から話しておるのか?」

『ええ』

「〈プテ・サン・ウィン〉様、まさか、この子が案内人ですか?」

「うむ、いかにもわらわは高貴なる血族ノービリス・ルブルムの最後の生き残り! マルティナ=フェルドマン=アイアーランドじゃ!」

高貴なる血族ノービリス・ルブルム?」

『えっと高貴なる血族ノービリス・ルブルムとはですね――」

 〈プテ・サン・ウィン〉様の話だと、古代の不死の一族だとか。

 不死なのになんで最後の生き残りなのかという疑問は当然だと思う。

『かれらは不死であっても不滅じゃありません。古代の戦争で、存在を消滅させる兵器により、マルティナ以外全滅いたしました』

「はぁ……」

 わかるような。わからないような。

 〈プテ・サン・ウィン〉様の言っていること、ムズかしすぎるんだよなぁ。

 とにかくそういうことらしい。

「へぇ~このちっこいのがねぇ~」

 アニキが何気なく頭に手をおいた――。

 BASH!

「痛っ! なにすんだ! このっ!」

「こ、こどもあつかいするでないわ! 小僧! 頭が高い! ひかえおろう!」

『言い忘れていましたが、マルティナは私と同い年ですよ』

「はぁっ!?」

「ということは何千年も生きていらっしゃる?」

『そういうことになります……』

「うむ、おどろいたようじゃな! さぁ! うやまうのじゃ!」

「へぇ~アタシより年下に見えるのにねぇ~」

 今度はウィンが何気なく頭に手をおいて――。

 BASH!

「痛っ! なにするんの!?」

「こ、こどもあつかいするなの何度言えばわかるのじゃ! まったく! 旧友〈フォールスター〉のたのみでなければ、こんなところまで来んのじゃぞ! ありがたく思うのじゃ!」

 まぁ、なんにはともあれ。

 マルティナ……さん、という人は子どもあつかいされるのがものすごーくイヤだっていうことはよくわかった。

『言っておきますが、マルティナは【魔族】より強いですよ?』

「なんだって!」

「ふふ~ん、おどろいたようじゃな! せっかくじゃ! 【サードニクスヘヴン】までの間、きたえなおしてやるから、カクゴするのじゃ!」

 一難去ってまた一難。

 休まることがないなぁ……ほんと。

 こうして僕らはマルティナさんを交え【サードニクスヘヴン】へ向かうことになったんだ。



 いつかウィンの【烙印スティグマ】を消して。



 死の運命から救い出すために。



 僕らの旅は続く。



 まぁ……ウィンと本当の意味で結ばれるかはどうかは、またそれは別の話ということで――。












「いっておくが、わらわの目の赤いうちは、もうえっちいい無しじゃ!」

「はぁっ!? なんでアンタにそんなこと決められなきゃいけないの!?」

 あぁ……ウィンとマルティナさんがもめはじめちゃった。

 うーん。

 これからどうなっちゃうんだろう……。

 はぁ……。

 そろそろ止めに入るか。

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