烙印を背負う少女を『救』うたった一つの方法

朝我桜(あさがおー)

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第三章 『星獣』との出会い! たどり着く彼女を『救』うたった一つの方法! そして【新天地】へ! 

第四十九話 今すぐ暴走列車を止めろ! これが最後のミッション!

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 ――サードニクスヘヴン行き ソリッド・ソリューション・ライナー 機関室――

「おいっ! しっかりしろ!」

 いや、僕は起きている。

 だいじょうぶ。

 アニキがゆすっているのは、気絶された運転手。

「だめだ。完全に気を失っている」

「でも息はしているから」

「そうね。でもこれどうやって止めれば……」

「見て! リリー姉ぇ! 【タンザナイト】がもう見えてきたよ!」

 窓の外には地平線に見える【タンザナイト】の町の姿が。

「となると10マイルもないな! 仕方がない僕がやる!」

「えっ! フィル!? まさか運転できるの!?」

「今まで言ったことたなかったけど父さんは機関車乗りで、子供のころ一度だけ!」

「でも! 前に牧場で!」

「牛飼いはおじいちゃん!」

 今から思うと子供になんてことさせていたんだって思っている。

 圧力計や速度計、加減弁の位置はわかる。

 そしてブレーキ弁ハンドル――。

「――はぁ!?」

 なんてこった!

「どうしたのフィル!?」

「ダメだ! ブレーキ弁がこわされている!」

「なんだって!?」

 単独ブレーキも自動ブレーキもぐちゃぐちゃ!

 エリオットのやつか!

 何てことしてくれたんだ!

「クソ! どうすれば!」

「やばいよ! もう【タンザナイト】があんなところまで!」

「もう、あと半分ぐらいしかないじゃないか!」

 どうするどうするどうするどうする!

 【電磁加速銃レールガン】で機関車ごとふっ飛ばす?

 いや誘爆の可能性がある!

 みんなまきぞえをくってしまう!

 悩みに悩んでいたその時――。

「……ん……ぅ……なんだぁ?」

「あっ! 運転手さん目が覚めたんだね!」

 なんていう幸運!

 絶体絶命の状況で運転手が目を覚ました!

「あんたら! そうか! 後ろからなぐられて……」

「今はそんなこといいから! 速く! 列車をとめたいの! だけどブレーキがこわれていて!」

「なんだってっ!?」

 運転手さんはウィンのさけびでようやく血相をかえてくれたよ!

「もうあんなところまで! こうなったら一か八か反圧ブレーキをかけるしかないな!」

「反圧ブレーキ!?」

「いいから嬢ちゃんたちは下がってな! そこの若けぇ二人! 手伝え!」

「はい!」

「お、おう! なにをすればいい!? おっちゃん!」

「まずそこのブローパイプを閉めろ!」

「おう!」

 KWIIEH!  KWIIEH!  KWIIEH!  KWIIEH!

「そっちのあんちゃんは――できそうだな。エアティーク開口は開いているか確認してくれ!」

「がってん!」

 エアティーク開口とは新鮮な空気が入るところ。

 フツーはシリンダーの近くにあったはずだよな!

「――ヨシ! 開口確認OK!」

「――ヨシ! 流出スロットバルブ作動!」

 GATONG!

 なるほど空気を圧縮させることでエンジンの機能を逆転させるわけか!

 そんなこと言ったってだれも分からないよね!

 ウィンもリリー姉さんもキキもあっけにとられているよよ!

「――ヨシ! スロットバルブ逆圧を確認! あんちゃん、インプレット内圧力! レギュレーター閉鎖確認!」

「圧力確認! ヨシ! レギュレータ―閉鎖! 確認! ヨシ!」

「そこの兄ちゃん! ぼさっとしてねぇで、そこの吸入口に水をいれろ!」

「はぁ!? 入れるって! どれくらいだよ!?」

「アニキとにかくじゃんじゃん入れて! じゃないとシリンダーがぶっこわれる!」

「わかった! いれるぞ!」

 なにもわからないアニキが下手にかんがえてもしょうがない!

「――ヨシ! バルブボックス内圧力6バール以内! ヨシ!」

「そこの白い嬢ちゃん! 汽笛を鳴らしてくれ!」

「は、はい! でも!」

「五回連打あと長音一回! それをくり返せ!」

「は、はい!」

 VROO! VROO! VROO! VROO! VROO!
 
 VREEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEW!!!

「止まれぇぇ!!」

「お願い! 止まって!」

 あとは祈るしかない!

 PFFFFFFFFFFFFFFFFF――!!

 排気ブローがうなる!

 そして――。





―― タンザナイト駅 ――


 ――ZUNG!!!!

「うわっ!」

「きゃっ!」

 あぶなっ!

 列車はなんとか車止めをこづいてようやく止まってくれた。

「……ハァ……」

 もうへとへと。

「……もうだめ、つかれた……」

「オレもだ……」

「私も……」

「……クーン」

 もう一家そろって機関室にへたれこんだよ。

 立ち上がる気力もない。

「やったな! アンタらがいてくれて助かった! 感謝するよ! 窓の外を見て見な!」

「窓の?」

「外?」

 クタクタの体をなんとか身を起こして窓の外をみた。

 すると――!!!



 WOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOW!



 FIIIIIIIIIIIIIIIWI!!


 
「え!?」

「……んじゃこりゃ」

「ものすごい数の人……」

「みんななんで……」

 駅のホームにいた人の大歓声が、まるで雨のように降り注いだんだ……。

「ほら、いってやんな!」

 運転手さんに背中をおされて列車を降りると――。


 CLAP! CLAP! CLAP! CLAP! CLAP! CLAP! CLAP! CLAP!


 今度は拍手が雨のように……。

「すごい……」

「夢じゃないのよね。私たち生きているのよね」

 GNNNNNNNNNNNNNNNG~~~!!

「イタイイタイタイ! なんでオレのほほをつねるんだよ! リリー!」

「クーン! クーン!」

「アタシたちやったんだね」

 人という人が僕らを出むかえてくれたんだ。

 そこへ人ごみをかき分けて、一人の保安官が――。

「あんたたち! この列車にあの悪党、エリオット=ウォラックが乗っているという情報得てきたんだが……」

「え? だれからその情報を?」

 降ろしてきた乗客が馬を飛ばしたとしても間に合うはずがない。

「いや、私もよくわからん。薄緑色のドレスを着た少女だったんだが……とにかく「のじゃのじゃ」という子でな。アンタらの知り合いじゃないのか?」

 僕らは首を横にふったよ。

 そんな子知らない。

 まさかジェニファーさんかなって思ったけど、あの人は「ですわ」だからなぁ。

『あ……まさか……』

「げっ!」

「ん? さっきそのフェネックしゃべらなかったか?」

「いいえ! きっと空耳でしょう!」

 なんか〈プテ・サン・ウィン〉様は心当たりありそうだったけど、今は間がわるい!

「そうか……まあいい、見たところ何かあって解決したってところか。あとでくわしく聞かしてくれ、それでエリオット――」

「きゃあああああああああああああああああああああああああああっ!」

 なんだっ!?

 ウィンの悲鳴!?

「なっ! ウィンっ!? エリオットっ!? 生きてっ!?」

「動くんじゃねぇっ!」

「ウィンっ!!!」

「ウィン!! くそっ! テメェっ!」

 一番後ろを歩いていたウィンが、死んだはずのエリオットにつかまって!

 首に【シルヴァラート】の銃床のオノをつきつけられていたんだ!


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