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都立冨澤大学附属高校
私の気付き 夏月side(高1冬)
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《湊たち高校1年生 ・11月》
あれから数ヶ月、
何度指導しても
晴臣の女遊びはやめる素振りもなかった
半分諦めていた私は、時折彼を呼びつけては補佐として私の雑務を押し付けていた
彼を補佐にしたことを心底後悔した事もあったなあと数ヶ月前の事を懐かしんだ
私は生徒会室の1番奥の席から、何となく室内を見渡す
過度な装飾は無いものの、一般的な学校用の机と椅子よりも
少し座り心地の良い仕様のそれらは
タカタカと生徒会長役員達が各々PCと睨めっこしても身体が痛くならないと、随分と重宝されている
流れる様視線を移動させると1番端の席で眉間に皺ひとつ寄せずに涼しい顔をしてキーボードを打っている晴臣の姿を視界に捉える
こうしてみると彼は本当に文句のつけどころのないくらい優秀な人物だと嫌でも再認識させられる
ピコンとPCの画面に晴臣からメッセージが届く
[資料終わりました。ファイル添付したんで後程、確認お願いします。
他、残務あれば引き受けます]
この距離にいるのだから、声に出せば良いものを…と思った所で
ふと気がつく
他の役員が眉間に深い皺を作りながら時間をかけ、集中している雰囲気を
晴臣は察しての対応だったのだろう
彼は3日の猶予を与えていた
資料作成を1日で終わらせてきた
内容も文句なしの出来栄えで
私はもう、嫉妬の念すら湧かなかった
逆に彼1人いるだけで、雑務が驚くほどに減っていた
こうして十分に悩み、相談し合う時間に当てられている
なんなら、私は放課に図書室へ通うことすらもできている
去年の生徒会は時間や雑務に追われて
ほとんどの行事や資料が突貫工事で作られていたらしい
それを察せられないように前会長は必死だったと、引き継ぎの時に教えられた
[ありがとう助かったよ。後は来月の定例会議の資料まとめるだけだから、先帰って大丈夫だよ]
私は、そう入力して晴臣に返信を返す
いつもならすぐに席を立ち「失礼します」とたった一言で踵を返す彼が
今日は何故だか席を立とうとしない
何かあったのかと少しばかり心配になる
声を掛けようか迷っていた時に
ピコンと再度 PCに通知が届く
[不都合なければ資料確認、自分にさせてください。会長は会計の人の所へどうぞ。部経費の計算が合わないって震えてます]
そのメールを読んだ後
会計の方へ目をやると確かに、ブツブツと呟きながら頭を抱えていた
ああ、またこうやって
優秀な君は黙って
俺に声を掛けさせる
本当に…優秀な後輩を持つのも困ったものだ
少々女関係が派手だからなんだ
こんなに完璧なんだから
1箇所ぐらい人間味がある方が話しやすいまである
彼の女性関係に対して皆が意見しないのは、言うのを聞かないと匙を投げたわけでは無い、ましてや、彼の家のビッグネームに及び腰になっているわけでも無い。
その欠点すらも薄れるほどに彼自身が優れている
彼に着いていきたいと、導いてもらいたいとそう思わせる力を彼は持ち合わせている。
たが、私はきっと最後まで悟られまい
私が彼を純粋に尊敬し、いつか世界に苗字では無い彼の名を轟かせるはずだと確信していることを。
私はゆっくりと立ち上がると
会計の側に寄り
「随分悩んでいる様だけど大丈夫?」
と声をかける。
会計はパァッ感謝と尊敬を含んだ
潤んだ瞳で私を見つめる
「か、会長…何度計算しても合わなくて」
「大丈夫だよ。慌てず一緒に確認しよう」
後輩の手柄を横取りする私
多少の罪悪感はあるものの
特に訂正もせず、自分のものにする
なんだか最近の自分は、少しほんの少しだけ自分に優しくなれた気もする夏月だった
あれから数ヶ月、
何度指導しても
晴臣の女遊びはやめる素振りもなかった
半分諦めていた私は、時折彼を呼びつけては補佐として私の雑務を押し付けていた
彼を補佐にしたことを心底後悔した事もあったなあと数ヶ月前の事を懐かしんだ
私は生徒会室の1番奥の席から、何となく室内を見渡す
過度な装飾は無いものの、一般的な学校用の机と椅子よりも
少し座り心地の良い仕様のそれらは
タカタカと生徒会長役員達が各々PCと睨めっこしても身体が痛くならないと、随分と重宝されている
流れる様視線を移動させると1番端の席で眉間に皺ひとつ寄せずに涼しい顔をしてキーボードを打っている晴臣の姿を視界に捉える
こうしてみると彼は本当に文句のつけどころのないくらい優秀な人物だと嫌でも再認識させられる
ピコンとPCの画面に晴臣からメッセージが届く
[資料終わりました。ファイル添付したんで後程、確認お願いします。
他、残務あれば引き受けます]
この距離にいるのだから、声に出せば良いものを…と思った所で
ふと気がつく
他の役員が眉間に深い皺を作りながら時間をかけ、集中している雰囲気を
晴臣は察しての対応だったのだろう
彼は3日の猶予を与えていた
資料作成を1日で終わらせてきた
内容も文句なしの出来栄えで
私はもう、嫉妬の念すら湧かなかった
逆に彼1人いるだけで、雑務が驚くほどに減っていた
こうして十分に悩み、相談し合う時間に当てられている
なんなら、私は放課に図書室へ通うことすらもできている
去年の生徒会は時間や雑務に追われて
ほとんどの行事や資料が突貫工事で作られていたらしい
それを察せられないように前会長は必死だったと、引き継ぎの時に教えられた
[ありがとう助かったよ。後は来月の定例会議の資料まとめるだけだから、先帰って大丈夫だよ]
私は、そう入力して晴臣に返信を返す
いつもならすぐに席を立ち「失礼します」とたった一言で踵を返す彼が
今日は何故だか席を立とうとしない
何かあったのかと少しばかり心配になる
声を掛けようか迷っていた時に
ピコンと再度 PCに通知が届く
[不都合なければ資料確認、自分にさせてください。会長は会計の人の所へどうぞ。部経費の計算が合わないって震えてます]
そのメールを読んだ後
会計の方へ目をやると確かに、ブツブツと呟きながら頭を抱えていた
ああ、またこうやって
優秀な君は黙って
俺に声を掛けさせる
本当に…優秀な後輩を持つのも困ったものだ
少々女関係が派手だからなんだ
こんなに完璧なんだから
1箇所ぐらい人間味がある方が話しやすいまである
彼の女性関係に対して皆が意見しないのは、言うのを聞かないと匙を投げたわけでは無い、ましてや、彼の家のビッグネームに及び腰になっているわけでも無い。
その欠点すらも薄れるほどに彼自身が優れている
彼に着いていきたいと、導いてもらいたいとそう思わせる力を彼は持ち合わせている。
たが、私はきっと最後まで悟られまい
私が彼を純粋に尊敬し、いつか世界に苗字では無い彼の名を轟かせるはずだと確信していることを。
私はゆっくりと立ち上がると
会計の側に寄り
「随分悩んでいる様だけど大丈夫?」
と声をかける。
会計はパァッ感謝と尊敬を含んだ
潤んだ瞳で私を見つめる
「か、会長…何度計算しても合わなくて」
「大丈夫だよ。慌てず一緒に確認しよう」
後輩の手柄を横取りする私
多少の罪悪感はあるものの
特に訂正もせず、自分のものにする
なんだか最近の自分は、少しほんの少しだけ自分に優しくなれた気もする夏月だった
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