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都立冨澤大学附属高校 

俺の動揺 晴臣side

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20時過ぎ 来訪を伝えるチャイムが鳴る

いつもなら時間ぴったりにくる彼に
珍しいなと思いつつ、特に反応せずスマホで生徒会の会議の日程調整をしていた

ーーーガチャ

ドアを閉めた音と、こちらに向かう足音が聞こえる

「遅かったな」

「ごめんなさい、少し寝ちゃって」

いつも通り俺の足元に正座する彼を見るといつもより頬を赤く染めていて少し息が荒い気もした
寝ていたと言った彼は、自分の部屋から慌てて走って来たのだろうか
鈍臭そうな湊を想像するとなんとも滑稽で笑いそうになった

大事にしてもらう訳でもないのに、毎回、良くへこたれず来るもんだと感心すらする

いつもの様に、俺のズボンに顔を埋めるが彼は上手く口元を使えないのか
モタモタと時間がかかっていた

たまにはズボンぐらい自分で下ろそうかと思い、湊を静止する

「いい、口を離せ」

「…あ、ご、ご…ごめん、なさい!
ごめ…ごめんなさい、ちゃんとするから、頑張るから…俺のこと捨てないで」

突然泣かれて驚愕した

俺はこいつの笑った顔しか見たことなかったからだ
どんなに雑に扱おうが、酷い行為をしようが結局は満足そうに笑っていた

それがなぜ、急に泣かれなければいけないのか

今更、抜いてもらう様な気にもなれず
俺は黙って、自分の足の間にある湊の頭を自分の体から離した

離された湊は絶望したかのような顔をみせて項垂れた

♪ピンポーン

インターフォンが鳴る

急な湊の言動に動揺していた俺は
碌に相手を確認せずに玄関に向かいドアを開けた

そこには俺の知らない派手なピンク色の頭の男が立っていた

「僕の友人、返してもらえるかな」

そう唐突に言う男に
お前は誰だと質問を返そうとした時

「失礼」と一言口にしたかと思えば
俺の制止を気に留めることなく
湊の友人だというピンク頭の男はズカズカと俺の部屋に上がり込む

部屋で泣きじゃくる湊に近寄ると湊の腕を軽く引っ張る

「湊、帰ろう」

それに対して、湊は頭を小さく横に振って拒否する

その姿を見たピンク頭の男は
湊の両肩を掴み自分の方へ向かせた

「高熱出して早退しておきながら、こんな所に行くなんて、僕が心配するに決まってるよね?それか、僕が余程薄情ものだと思われてるのかな」

湊は驚いた顔をした後、申し訳なさそうに目を伏せた

「…ご、ごめん、心配かけて…帰る」

「うん、素直な湊は可愛いよ」

ほら、と湊の肩を抱きながら
玄関に立ちすくむ俺の方へ歩いてくる2人

俺の横を通り過ぎる時、ピンク頭の男は
湊に向けていた心配そうな柔らかい笑顔を引っ込めると酷く冷やかな表情で俺を睨み付け

「その出来の良い優秀な脳みそでも、思いやりというのは、まだ難しい言葉の様ですね」

そう俺にだけ聞こえる様に囁いた

元の表情に戻ると、ピンク頭の男は目を伏せ浅い苦しそうな息をする湊を抱えながら俺の部屋を出て行った



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