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3話
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バーのカウンターで、アヤは思い出している。カイの真剣な目、君の運命は君が切り拓くんだという言葉。何かが引っ掛かる……何だろう……
「お疲れですか?」
隣に座っていたマサヨシが、アヤに声をかける。アヤは我に返る。
「あ、すいません……」
「無理もありませんよ。昼は絵を描いて、夜はクラブで働いてるんですから」
そのときだった————
大きな地震があり、店内が揺れて、グラスがガチャガチャと音を立てた。
「え、地震……?」
「気をつけて!」
マサヨシが、アヤの頭を抱える。アヤは、マサヨシの腕の中で顔が熱くなるのを感じた。
やがて地震が収まり、店内がざわざわとする。
「結構、大きかったな……」
「千葉で震度5だってよ……」
マサヨシは、アヤを腕に抱いたままつぶやく。
「僕が公私共にサポートしてあげれたらいいのに……」
「公私共に……?」
マサヨシは、かしこまってアヤを見つめる。
「アヤさん」
「はい……」
色恋に疎いアヤにも分かる。この雰囲気は例のアレだ。アヤはドキドキしていた。
——そのとき、アヤのスマホに着信がある。
「あ……」
腰を折られたマサヨシは、それでも気を取り直し、
「どうぞ。出てください」と微笑んだ。
「すいません……」
アヤは電話に出て、相手の話を聞いた。
「はい……小早川彩は私ですが……え!?」
それは、アヤが『モンド・アート・アワード』金賞を受賞したという報せだった。
アヤは、電話を切った後も興奮が収まらない。
「本当に信じられないです! まさか私が『モンド・アート・アワード』で金賞を受賞するなんて! すごく権威あるコンクールで、若手画家の登竜門て言われてるんですよ!」
「……」
マサヨシは、無表情でアヤの話を聞いている。
「どうかされました……?」
アヤは心配してマサヨシの顔を覗き込む。体の具合でも悪いのだろうか?
「いえ……」
マサヨシの目は、にっこりと笑う。
「おめでとうございます」
そして口が笑い、満面の笑みとなる。
レストランを出たアヤとマサヨシは、夜の公園を散歩した。アヤは喜びを隠しきれず、踊るように歩いている。
「授賞式には、マサヨシさんもぜひ来てくださいね」
「アヤさん……」
「え……?」
アヤが振り返ると、マサヨシは立ち止まり、真剣な顔でアヤを見つめている。
「まだ知り合って日は浅いけど、アヤさんとは運命を感じるんです」
「マサヨシさん……」
「これから一生、公私共にあなたをサポートします。結婚してください」
突然のマサヨシのプロポーズに、アヤは衝撃を受ける。そして逡巡する。
(マサヨシさんはすごく良い人……この人と結婚したら幸せになれるかもしれない……)
(でも……)
「ごめんなさい!」
アヤは、深々と頭を下げる。
「私は今、絵を描きたいんです……大きな賞を受賞して、これからなんです。今が大切な時なんです!」
「ですから、僕がサポートを……」
「私には……私には家族がいません。だから、結婚への憧れは人一倍強い。中途半端なことはしたくないんです」
アヤの真剣な顔に、マサヨシは何を言っても無駄だと悟った。
「……わかりました」
「わかっていただいて、ありがとうございます」
アヤは再び、深々と頭を下げる。すると頭上から冷静な声が聞こえる。
「でも、僕は諦めません」
「え……?」
アヤが顔を上げると、マサヨシは口元にうっすら笑みを浮かべている。
「絶対にね」
◇
夜道。アヤが息を切らして、何かから逃げている。
アヤが逃げ込んだ先は袋小路。背後からは靴音が近づいてくる。
アヤが振り返る。そこにいた男は、逆光で顔が見えない。手には薬品の瓶を持っている。
「やめて……」
男は、瓶の中の液体をアヤにかける。
「いやあああああ!」
◇
大きな病院。入院病棟のロビー。
入院患者たちがテレビを観ている。
テレビの中のアナウンサーがニュースを読み上げている。
「昨夜未明。本年度の『モンド・アート・アワード』金賞を受賞した、
小早川アヤさんが、何者かに襲われました。
アヤさんは目に劇薬のようなものをかけられ、失明は免れない模様です。
まだ犯人は捕まっておらず——」
◇
病室。アヤがベッドの上に、放心状態で座っている。
目には包帯が巻かれている。
「どうして……どうして私が……」
そのときノックの音がして、看護師が顔を出す。
「アヤさん、ご家族の方がおみえになりましたよ?」
「家族……?」
カツンカツンと革靴の音が近づいてくる。
「私に家族なんていない……誰なの……?」
男は、ベッドの脇で立ち止まる。
「誰……!?」
「何も心配いらない。僕があなたをお守りします」
マサヨシの声だった。
「お疲れですか?」
隣に座っていたマサヨシが、アヤに声をかける。アヤは我に返る。
「あ、すいません……」
「無理もありませんよ。昼は絵を描いて、夜はクラブで働いてるんですから」
そのときだった————
大きな地震があり、店内が揺れて、グラスがガチャガチャと音を立てた。
「え、地震……?」
「気をつけて!」
マサヨシが、アヤの頭を抱える。アヤは、マサヨシの腕の中で顔が熱くなるのを感じた。
やがて地震が収まり、店内がざわざわとする。
「結構、大きかったな……」
「千葉で震度5だってよ……」
マサヨシは、アヤを腕に抱いたままつぶやく。
「僕が公私共にサポートしてあげれたらいいのに……」
「公私共に……?」
マサヨシは、かしこまってアヤを見つめる。
「アヤさん」
「はい……」
色恋に疎いアヤにも分かる。この雰囲気は例のアレだ。アヤはドキドキしていた。
——そのとき、アヤのスマホに着信がある。
「あ……」
腰を折られたマサヨシは、それでも気を取り直し、
「どうぞ。出てください」と微笑んだ。
「すいません……」
アヤは電話に出て、相手の話を聞いた。
「はい……小早川彩は私ですが……え!?」
それは、アヤが『モンド・アート・アワード』金賞を受賞したという報せだった。
アヤは、電話を切った後も興奮が収まらない。
「本当に信じられないです! まさか私が『モンド・アート・アワード』で金賞を受賞するなんて! すごく権威あるコンクールで、若手画家の登竜門て言われてるんですよ!」
「……」
マサヨシは、無表情でアヤの話を聞いている。
「どうかされました……?」
アヤは心配してマサヨシの顔を覗き込む。体の具合でも悪いのだろうか?
「いえ……」
マサヨシの目は、にっこりと笑う。
「おめでとうございます」
そして口が笑い、満面の笑みとなる。
レストランを出たアヤとマサヨシは、夜の公園を散歩した。アヤは喜びを隠しきれず、踊るように歩いている。
「授賞式には、マサヨシさんもぜひ来てくださいね」
「アヤさん……」
「え……?」
アヤが振り返ると、マサヨシは立ち止まり、真剣な顔でアヤを見つめている。
「まだ知り合って日は浅いけど、アヤさんとは運命を感じるんです」
「マサヨシさん……」
「これから一生、公私共にあなたをサポートします。結婚してください」
突然のマサヨシのプロポーズに、アヤは衝撃を受ける。そして逡巡する。
(マサヨシさんはすごく良い人……この人と結婚したら幸せになれるかもしれない……)
(でも……)
「ごめんなさい!」
アヤは、深々と頭を下げる。
「私は今、絵を描きたいんです……大きな賞を受賞して、これからなんです。今が大切な時なんです!」
「ですから、僕がサポートを……」
「私には……私には家族がいません。だから、結婚への憧れは人一倍強い。中途半端なことはしたくないんです」
アヤの真剣な顔に、マサヨシは何を言っても無駄だと悟った。
「……わかりました」
「わかっていただいて、ありがとうございます」
アヤは再び、深々と頭を下げる。すると頭上から冷静な声が聞こえる。
「でも、僕は諦めません」
「え……?」
アヤが顔を上げると、マサヨシは口元にうっすら笑みを浮かべている。
「絶対にね」
◇
夜道。アヤが息を切らして、何かから逃げている。
アヤが逃げ込んだ先は袋小路。背後からは靴音が近づいてくる。
アヤが振り返る。そこにいた男は、逆光で顔が見えない。手には薬品の瓶を持っている。
「やめて……」
男は、瓶の中の液体をアヤにかける。
「いやあああああ!」
◇
大きな病院。入院病棟のロビー。
入院患者たちがテレビを観ている。
テレビの中のアナウンサーがニュースを読み上げている。
「昨夜未明。本年度の『モンド・アート・アワード』金賞を受賞した、
小早川アヤさんが、何者かに襲われました。
アヤさんは目に劇薬のようなものをかけられ、失明は免れない模様です。
まだ犯人は捕まっておらず——」
◇
病室。アヤがベッドの上に、放心状態で座っている。
目には包帯が巻かれている。
「どうして……どうして私が……」
そのときノックの音がして、看護師が顔を出す。
「アヤさん、ご家族の方がおみえになりましたよ?」
「家族……?」
カツンカツンと革靴の音が近づいてくる。
「私に家族なんていない……誰なの……?」
男は、ベッドの脇で立ち止まる。
「誰……!?」
「何も心配いらない。僕があなたをお守りします」
マサヨシの声だった。
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