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幼年期
70、攻略対象たち
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改めてお兄さまからお聞きした情報は、こういうものでした。
まずは、婚約についての経緯。
そもそも、アイク王子と年齢、家格が釣り合うものがほとんどいなかったからなのだそう。
まず最初に選ばれるべき同年代の女性は、伯爵家、子爵家ばかり。
一応この国では男同士でも結婚できるし、子供ができるようにするお薬もある。
なので次に候補に挙がったのは、高位貴族でかつ品行方正なご令息。それも宰相の息子&騎士団長の息子、あとお兄さまくらいだったのでした。
でもって、イクシス&ウエインはといえば5歳当時既に王子よりも高身長かつ体格も良かった。
一方お兄さまはといえば、まだ成長期前。(お兄さまは言葉を濁していらしたけれど、守ってあげたくなるような細身の身体にキラキラした銀髪の麗しの幼児だったに違いない)自分より小さな可愛い子が好みだという王子は、一に二もなくお兄さまを婚約者に選んだ、というわけなのでした。
公爵家も、当時は厳格かつ権力主義でいらしたというお祖父さまがご存命。お兄さまの意志など関係なく「王家と縁を結べることを誇りに想え」と勝手に婚約を結んでしまったのだそうです。
ところが、これが大きな誤算。
当時のお兄さまは、お祖父さまの厳しいしつけにより表情筋が死んでいたうえ、言葉も少なめ。無口な幼児だったのです。
それを王子は「大人しく健気な可愛らしい子」「会ったばかりで恥ずかしがっている」のだと勘違い。何度か会ううちに自分には打ち解けて笑いかけてくれるはずだと勝手な妄想を抱いていた。
でも、婚約して何度か会ううちに「あれ?なんか違う?」と気付いたらしい。
実際のところ、お兄さまは当時から「大人しく健気な可愛い子」どころか「賢く冷静で大人びた子」だった。打ち解けるどころか、相も変わらず無表情&塩対応。そう、あの無表情は「人見知り」「恥ずかしがり」などではなく通常仕様だったのです!
しかもそのあと、息子の意志を無視した婚約に激怒したお義父さまが奮起。お祖父さまを引退させ田舎に追いやったことでストレスが無くなり、成長期に突入!にょきんにょきんと身長を伸ばし、あっという間に王子の身長を追い抜いてしまったのです。
こうして出来上がったお兄さまは、「大人しく健気な可愛い子」どころか「クールで大人なイケメン」さん!
アイク王子の「可愛い子」は婚約してたったの1年足らずで幻となってしまったのでした。
ええー?なにそれ?
お兄さまの外見から勝手に夢見て「こんなはずじゃなかったのにい」ってこと?
「アイク王子、おバカなのですか?おバカなのですね!!」
思わず叫ぶボクにお兄さまが苦笑い。
「まあ……私も当時はいろいろいっぱいいっぱいだったからな。あまりよく覚えていないのだ。アイク様によれば、そういうことだったらしい」
妻になり得る婚約者を選んだはずが、その妻候補はあっという間に「どう考えても夫でしょう」というイケメンになってしまった。この時点で、婚約解消しても良かったのだそう。
でも「じゃあ、変わりは?」となったときに、その相手が見つからない。
それはそうですよね。
そもそも候補が少なかったからご令嬢ではなくご令息から選ばれたのだもの。
「次の婚約者候補が見つかるまでは」とそのまま対外的には婚約者となっているのだという。
今は伯爵家にまで範囲を広めて新たな候補を探しているのですって。
「ということは、お二人の仲は……協力者?みたいなものですか?」
「うーん。私はクリスと出会うまでは特に自分の未来に要望はなかったからな。アイク様に思うところもないのだが……。アイク様の方は微妙なようでな?」
「ああ……」
察し!アイク様の方からすると、お兄さまはいわゆる「初恋の相手」であり、一方的に裏切られた感もあり、更に一方的な負い目なんかもあったりして。要するに複雑な気持ちなのですね。
「実際は『婚約者』というより『いずれは婚約破棄する予定の仮の婚約者』というべきかもしれぬな。
だから、お互い仲が悪いわけではないし、私としては婚約者ではなく友になれたらと思っている」
「はあ……。なんだか……ボクが思っていた『婚約者』とは違いましたが……。悪い人ではないようですね。なんというか……勘違いやさんではあるようですけれど」
「ははは!まあ、お互いにまだ5歳だったのだ。よく分からぬうちに婚約していた、というのが正しい。
少なくとも私はそうだった。
ああ、クリスも5歳なのか。クリスの婚約……うん、まだクリスには早い。私もきちんと時期を見て……。
こほん、まあ、そういうことだ」
まずは、婚約についての経緯。
そもそも、アイク王子と年齢、家格が釣り合うものがほとんどいなかったからなのだそう。
まず最初に選ばれるべき同年代の女性は、伯爵家、子爵家ばかり。
一応この国では男同士でも結婚できるし、子供ができるようにするお薬もある。
なので次に候補に挙がったのは、高位貴族でかつ品行方正なご令息。それも宰相の息子&騎士団長の息子、あとお兄さまくらいだったのでした。
でもって、イクシス&ウエインはといえば5歳当時既に王子よりも高身長かつ体格も良かった。
一方お兄さまはといえば、まだ成長期前。(お兄さまは言葉を濁していらしたけれど、守ってあげたくなるような細身の身体にキラキラした銀髪の麗しの幼児だったに違いない)自分より小さな可愛い子が好みだという王子は、一に二もなくお兄さまを婚約者に選んだ、というわけなのでした。
公爵家も、当時は厳格かつ権力主義でいらしたというお祖父さまがご存命。お兄さまの意志など関係なく「王家と縁を結べることを誇りに想え」と勝手に婚約を結んでしまったのだそうです。
ところが、これが大きな誤算。
当時のお兄さまは、お祖父さまの厳しいしつけにより表情筋が死んでいたうえ、言葉も少なめ。無口な幼児だったのです。
それを王子は「大人しく健気な可愛らしい子」「会ったばかりで恥ずかしがっている」のだと勘違い。何度か会ううちに自分には打ち解けて笑いかけてくれるはずだと勝手な妄想を抱いていた。
でも、婚約して何度か会ううちに「あれ?なんか違う?」と気付いたらしい。
実際のところ、お兄さまは当時から「大人しく健気な可愛い子」どころか「賢く冷静で大人びた子」だった。打ち解けるどころか、相も変わらず無表情&塩対応。そう、あの無表情は「人見知り」「恥ずかしがり」などではなく通常仕様だったのです!
しかもそのあと、息子の意志を無視した婚約に激怒したお義父さまが奮起。お祖父さまを引退させ田舎に追いやったことでストレスが無くなり、成長期に突入!にょきんにょきんと身長を伸ばし、あっという間に王子の身長を追い抜いてしまったのです。
こうして出来上がったお兄さまは、「大人しく健気な可愛い子」どころか「クールで大人なイケメン」さん!
アイク王子の「可愛い子」は婚約してたったの1年足らずで幻となってしまったのでした。
ええー?なにそれ?
お兄さまの外見から勝手に夢見て「こんなはずじゃなかったのにい」ってこと?
「アイク王子、おバカなのですか?おバカなのですね!!」
思わず叫ぶボクにお兄さまが苦笑い。
「まあ……私も当時はいろいろいっぱいいっぱいだったからな。あまりよく覚えていないのだ。アイク様によれば、そういうことだったらしい」
妻になり得る婚約者を選んだはずが、その妻候補はあっという間に「どう考えても夫でしょう」というイケメンになってしまった。この時点で、婚約解消しても良かったのだそう。
でも「じゃあ、変わりは?」となったときに、その相手が見つからない。
それはそうですよね。
そもそも候補が少なかったからご令嬢ではなくご令息から選ばれたのだもの。
「次の婚約者候補が見つかるまでは」とそのまま対外的には婚約者となっているのだという。
今は伯爵家にまで範囲を広めて新たな候補を探しているのですって。
「ということは、お二人の仲は……協力者?みたいなものですか?」
「うーん。私はクリスと出会うまでは特に自分の未来に要望はなかったからな。アイク様に思うところもないのだが……。アイク様の方は微妙なようでな?」
「ああ……」
察し!アイク様の方からすると、お兄さまはいわゆる「初恋の相手」であり、一方的に裏切られた感もあり、更に一方的な負い目なんかもあったりして。要するに複雑な気持ちなのですね。
「実際は『婚約者』というより『いずれは婚約破棄する予定の仮の婚約者』というべきかもしれぬな。
だから、お互い仲が悪いわけではないし、私としては婚約者ではなく友になれたらと思っている」
「はあ……。なんだか……ボクが思っていた『婚約者』とは違いましたが……。悪い人ではないようですね。なんというか……勘違いやさんではあるようですけれど」
「ははは!まあ、お互いにまだ5歳だったのだ。よく分からぬうちに婚約していた、というのが正しい。
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こほん、まあ、そういうことだ」
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