【本編完結】悪役令息の役どころからはサクッと離脱することにする。

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第五章

マージェスVS.ルディ

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マージェス家との話がまとまったところで、ルディアスが到着した。
婚約者のアレックス兄さんのところに寄ってきたようで、アレクも一緒だ。



「遅くなってすまない。こちらは……?」

アルパパとオル兄がいたことに驚いている。

「あ、ああ。わざわざ悪いな。アルは知っているだろう?
アルの御父上であられるマージェス伯爵と、アルの弟のオルフェウス様だ」

俺の紹介でアルパパがルディアスに頭を下げる。

「ルディウス殿下にご挨拶申し上げます。マージェス伯爵家が当主、アルフェルト・マージェスと申します。
これは私の息子、長男のアルフレッド・マージェスと次男のオルフェウス・マージェス。
ミルくんとはアルを通じて出会ったのです。
それぞれ商会を運営しておりましてな。MS商会に出資させてもらっております」

「そういうことでしたか!ミルの商会も順調なようで私も嬉しく思っております」

少し構えをとくルディ。
しかしアルパパの目は笑っていなかった。

「ちなみに、私たちはミルくんの家族を自称しておりましてな。
殿アルから聞いております。
いやあ、これまでたいそうミルくんを大切にしてくださったようで!
婚約解消が叶ったことにほっとしております。ミルくんを手放して下さり感謝いたしますよ。
、私たちがミルくんを支えるつもりでおります」

「パパ!」

さすがアルの父上!すがすがしいほどの慇懃無礼な嫌味だ。
殿下に対して不敬も甚だしいが、パパの気持ちは嬉しい。

「よく言った父さん!」

オル兄が大喜びで手を叩く。

「……ルディ。アレックス兄さん。
伯爵もオル兄さんも俺のために言ってくれたんだ。不敬かもしれんがどうか目をつぶってほしい」

「うん。私の自業自得だからな。甘んじて受けよう。
ミルにこのような人たちができたことを嬉しく思う。良かったな、ミル。良い家族だ」

「ありがとう、ルディ」

家族だという言葉がとてもうれしい。
そうなんだ。シルとアルのお陰で俺にも俺を心配して怒ってくれる家族ができたんだ。


ルディは不敬を咎めることなく、真面目な表情でマージェス家に向き直った。

「……ルディアス・ゴールドだ。ルディでかまわぬ。
……ミルには大変な苦労と迷惑をかけたと自覚している。
私にできることがあれば助力を惜しまぬつもりだ。
今後は私も仲間に加えてくれると嬉しい」

苦笑しながらも、格下の伯爵相手に頭を下げるルディ。
ルディは本当に変わった。それも良い方へ。
もともと、歪む前のルディの本質はこっちだったのだろう。

そんなルディに寄り添うものもいる。アレックス兄さんだ。
そっとルディの背に手を添え、共に頭を下げた。

「失礼いたします。私はアレックス・スノーデン。公爵家の養子となり、後継として今は当主代理をさせて頂いております。
ルディアス殿下は私の婚約者。私も彼と共にミルに助力を惜しまぬつもりです。
ミルの兄として友として、皆様と共に彼を支える一端となれたらと思っております。
どうかルディと私に贖罪の機会をお与えください。
それと、我々に敬語は不要です。どうかミルに話すようにお話しください」



煽った相手に素直に頭を下げられ、アルパパたちも引いた。

「わかった。
ミルくんがよいのならば我々に異論はない。受け入れよう」

「私はもう恨んではいません。
ルディアスのおかげで公爵と縁も切れ、このような素晴らしい家族もできたのですから」

「マージェス家のみなさんだけじゃなく、俺もミルの家族だぞ?忘れんなよ?
アイツらももう居ないんだ。いつでも帰ってきていいんだからな!」

「もう俺の家はここだからな。シルがいるところが俺の家なんだ」

「あっちを別宅にすればいいじゃないか!シルとミルの部屋も作ってくれ、アレク!」

「なんでルディが口を出すんだ?てか、別宅ならもうマージェスがあるし!」

アルがじとー、とルディをねめつける。

「だって、アレクと結婚したら俺だってミルの家族なんだから!」

「いや、ルディは違うだろう。結婚するのは廃嫡を公表した後なんだから、他人だろ」

シルが鋭く突っ込んだ。

「ひ、ひどくないか?おかしいだろう!ミルの兄と結婚すれば俺は兄嫁のはずだろう!」

必死で抗議するルディに、アルがくってかかる。

「まだ結婚もしてねえのに兄嫁面すんな!」

「まあまあまあ!もうルディは俺のヨメになったも同然なんだからさあ。目くじら立てるなよ」

アレクがルディを庇う。




ワイのワイの言い出した俺たちに、アルパパが目を丸くした。

「……いつもこんな感じなのかね?」

「こいつら、しょっちゅうミルと俺の家に来やがるんですよ。
兄になったアレクはともかく、ルディは元婚約者の家ですよ?来るなっつってんですがねえ。
俺のミルになつきすぎだと思いませんか?!」

憮然とした表情のシルに、アルパパが笑い出した。

「ははははは!なんだ、すでにここまでになっていたとはな!
これならあの話もすんなり通りそうだ!」





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