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第八章 ベジカフェ参入
働きすぎだと言われても
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そこからは大忙しだった。
せっかくの休日も終了。
俺とシルのいちゃいちゃの場があっという間に打ち合わせの場に早変わりである。
初めての朝だったのに、余韻に浸る間もなく日常に引き釣り戻されてしまった。
だが、ベジカフェにとっては潜在一隅のチャンス。逃すわけにはいかない。
「アル。悪いがマックスに連絡を取ってくれ。
3日でいいから、こっちに出てこれないだろうか?宿は無用。この屋敷に泊まればいい。
シェフと協力して急ピッチでメニュー開発してほしい。
野菜も予定よりも多めに仕入れられると嬉しいな」
「ああ、了解。すぐに遣いを出す」
「話題になればパーティーへの需要も高まる。気が早いかもしれないが、ケータリングサービスを始めることも念頭に置いて人員補充したほうがいいと思うのだが。どう思う?アル」
「俺もその方向で行くべきだと思う。店舗の集客は限られるからな。てか、新聞社のオーナーが絡むだろ?パーティー好きだからな、あの人は。すぐにそういう希望が出ると思う」
「となると経理の一人ぐらいはそろそろ必要かもな…。俺とミルだけだと手が回らねえ。ちょっと知り合いを当たってみる」
「シル、街に行くならついでにカトラリーを揃えてもらえるか?
当初の予定よりも少し多めに用意したほうがよさそうだ。フルセットで10組ほど追加してほしい。
あと、テーブルクロスはまだ注文していなかったな。リネン類は店のイメージカラーで揃えようと思うのだが、どうだろう?」
「カトラリーだな。注文しておけばいいか?
あとは、イメージカラーか……。店の屋根はグリーンだったよな?ベジタブルのイメージカラーも緑だし、グリーンでいいんじゃないか?アルはどうだ?」
「うん、良いと思うぜ。でもグリーンだけだとちと足りねえな……。差し色でイエローも入れよう。
白をベースに、緑のツタ模様、黄色で小花ってのはどうだ?」
「女性受けしそうだな。男でも違和感はないだろう。よし、それにしよう。
アル、マージの伝手にリネンの店はあるか?」
「ああ、それならマージェスで父さんが扱ってるぜ。布見本があると思うからサンプルを持ってきてもらおう。ミルにも会いたがってたから、本人が来るんじゃねえか?」
打てば響くような返事が心地いい。このメンバーだと阿吽の呼吸ですべてがあっという間に決まっていく。
お互いに相手がどこに通じているか分かっているのもあるが、一番大きな要因は、アルもシルもとにかくあらゆる分野に人脈があるということだ。
大抵のことは「俺の知り合いが」で片が付く。二人の知り合いならば信頼もできるし実力も折り紙付き。
いちいち探す手間がないぶん、話がはやいのだ。
パチパチと脳内で高速でシナプスが情報を伝えているのがわかる。次々にアイディアが湧く。
「そろそろカフェで働いてもらう店員の募集もしよう。
お揃いのユニフォームを着てもらいたいのだが……」
どうしようか、と言う前にアルが手を上げた。
「俺がデザインする」
「アルが?忙しいんじゃないか?」
「いや、マジで普段は宝飾品のデザインだろ?服のデザインって息抜きにちょうどいいんだよ」
言いながら「紙をくれ!」とシルに紙を持ってこさせ、さらさらっとラフを書いてくれた。
「男とか女とか関係なく、上は白のシャツ。後ろ見頃だけ長めのラインで。下は黒のスラックス、そこにグリーンのシンプルなカフェエプロンでどうだ?エプロンはエプロンドレスにしてもいいんだが、カフェエプロンの方が洗練されてると思う」
俺はそれでいいと思うのだが、シルが首をひねった。
「うーん。ちと遊び心も欲しくないか?」
遊び心……。閃いたぞ!
「じゃあ……アヒルのシルエットのピンを襟元に着けよう。どうだ?」
庭で飼う予定だし、店のシンボルキャラクターにできないか?
「ははは!アヒルか!そりゃあいい」
「貴族連中にも受けがいいように、金色で細めのシルエットにしよう。MSMと彫もいれようぜ」
「MSM?」
エムが一つ多くないか?
「MS商会とマージのM!」
胸を張るアルのおでこをシルが突いた。
「MSでマージのMも入ってるだろうが」
「MはミルのMだろ?Sはシルだろ?俺のMも欲しい!今回は共同出資なんだし!!」
「じゃあ、MSAなんじゃないか?」
マージじゃなくてアルなんだし。でもこれにシルとアルが首をひねる。
「………なんかしまらねえな」
「うーん………AMSじゃだめか?」
「エイムズ、か。いい!いいと思うぞ?それでいこう!
今後、マージとMS協会が合同でする仕事はAMS名義で請け負う!どうだろうか?」
「いいな、それ!俺も仲間って感じがする」
「俺も異論はないぞ?」
「じゃあ、これがAMSの初仕事だな!よろしく、アル!」
「おう!よろしくな、シル、ミル!」
アルが嬉しそうに笑った。まるで子供のように無邪気な笑顔だ。
こんなに喜ぶのなら、もっと早くにアルの名も入れればよかった。
「あのな、アル。俺はアルのことをずっと大切な仲間だと思ってるぞ?
何もない俺にシルがついてきてくれた。アルが力を貸してくれた。だから俺は今ここで笑っていられるんだ。
ここにもアルの部屋があるだろ?……そういうことだ」
最後は照れくさくて小さな声になってしまった。
だがアルにはしっかり伝わったようだ。
「ミル……。俺、ずっとマージとしてやってきたろ?女装してさ。
でも、今はずっとアルだろ。ミルといたらさ、アルだのマージだのそういうのはもういいかなって思えたんだ。
…………シルとミルと一緒にいると、すげえ楽しい。
マージの頃みたいに一人で立つのも楽しかったけど、それとは違うんだ。
二人とも、俺を仲間にしてくれてありがとうな」
「いまさらだ。お前だからミルに紹介したんだぜ?」
シルがアルを小突いた。
「あ、一応言っておくぞ?ミルは俺のだからな?ミルに惚れるなよ?惚れるなら………そうだなあ……マックスにでもしとけ!」
「いや、年下すぎるだろ」
「はあ?!俺のミルと同じ年だろが。いける!いっとけ!」
「マックスはダメだ!レオリースのところに居て貰わないと!」
「てか、シル、会ったこともねえマックスに俺を押し付けようとすんなよ……」
「…………マックス、兄弟いたよな?」
「やめろ!!これでも俺は優良物件なんだからな?!厄介払いみたいにすんな!」
せっかくの休日も終了。
俺とシルのいちゃいちゃの場があっという間に打ち合わせの場に早変わりである。
初めての朝だったのに、余韻に浸る間もなく日常に引き釣り戻されてしまった。
だが、ベジカフェにとっては潜在一隅のチャンス。逃すわけにはいかない。
「アル。悪いがマックスに連絡を取ってくれ。
3日でいいから、こっちに出てこれないだろうか?宿は無用。この屋敷に泊まればいい。
シェフと協力して急ピッチでメニュー開発してほしい。
野菜も予定よりも多めに仕入れられると嬉しいな」
「ああ、了解。すぐに遣いを出す」
「話題になればパーティーへの需要も高まる。気が早いかもしれないが、ケータリングサービスを始めることも念頭に置いて人員補充したほうがいいと思うのだが。どう思う?アル」
「俺もその方向で行くべきだと思う。店舗の集客は限られるからな。てか、新聞社のオーナーが絡むだろ?パーティー好きだからな、あの人は。すぐにそういう希望が出ると思う」
「となると経理の一人ぐらいはそろそろ必要かもな…。俺とミルだけだと手が回らねえ。ちょっと知り合いを当たってみる」
「シル、街に行くならついでにカトラリーを揃えてもらえるか?
当初の予定よりも少し多めに用意したほうがよさそうだ。フルセットで10組ほど追加してほしい。
あと、テーブルクロスはまだ注文していなかったな。リネン類は店のイメージカラーで揃えようと思うのだが、どうだろう?」
「カトラリーだな。注文しておけばいいか?
あとは、イメージカラーか……。店の屋根はグリーンだったよな?ベジタブルのイメージカラーも緑だし、グリーンでいいんじゃないか?アルはどうだ?」
「うん、良いと思うぜ。でもグリーンだけだとちと足りねえな……。差し色でイエローも入れよう。
白をベースに、緑のツタ模様、黄色で小花ってのはどうだ?」
「女性受けしそうだな。男でも違和感はないだろう。よし、それにしよう。
アル、マージの伝手にリネンの店はあるか?」
「ああ、それならマージェスで父さんが扱ってるぜ。布見本があると思うからサンプルを持ってきてもらおう。ミルにも会いたがってたから、本人が来るんじゃねえか?」
打てば響くような返事が心地いい。このメンバーだと阿吽の呼吸ですべてがあっという間に決まっていく。
お互いに相手がどこに通じているか分かっているのもあるが、一番大きな要因は、アルもシルもとにかくあらゆる分野に人脈があるということだ。
大抵のことは「俺の知り合いが」で片が付く。二人の知り合いならば信頼もできるし実力も折り紙付き。
いちいち探す手間がないぶん、話がはやいのだ。
パチパチと脳内で高速でシナプスが情報を伝えているのがわかる。次々にアイディアが湧く。
「そろそろカフェで働いてもらう店員の募集もしよう。
お揃いのユニフォームを着てもらいたいのだが……」
どうしようか、と言う前にアルが手を上げた。
「俺がデザインする」
「アルが?忙しいんじゃないか?」
「いや、マジで普段は宝飾品のデザインだろ?服のデザインって息抜きにちょうどいいんだよ」
言いながら「紙をくれ!」とシルに紙を持ってこさせ、さらさらっとラフを書いてくれた。
「男とか女とか関係なく、上は白のシャツ。後ろ見頃だけ長めのラインで。下は黒のスラックス、そこにグリーンのシンプルなカフェエプロンでどうだ?エプロンはエプロンドレスにしてもいいんだが、カフェエプロンの方が洗練されてると思う」
俺はそれでいいと思うのだが、シルが首をひねった。
「うーん。ちと遊び心も欲しくないか?」
遊び心……。閃いたぞ!
「じゃあ……アヒルのシルエットのピンを襟元に着けよう。どうだ?」
庭で飼う予定だし、店のシンボルキャラクターにできないか?
「ははは!アヒルか!そりゃあいい」
「貴族連中にも受けがいいように、金色で細めのシルエットにしよう。MSMと彫もいれようぜ」
「MSM?」
エムが一つ多くないか?
「MS商会とマージのM!」
胸を張るアルのおでこをシルが突いた。
「MSでマージのMも入ってるだろうが」
「MはミルのMだろ?Sはシルだろ?俺のMも欲しい!今回は共同出資なんだし!!」
「じゃあ、MSAなんじゃないか?」
マージじゃなくてアルなんだし。でもこれにシルとアルが首をひねる。
「………なんかしまらねえな」
「うーん………AMSじゃだめか?」
「エイムズ、か。いい!いいと思うぞ?それでいこう!
今後、マージとMS協会が合同でする仕事はAMS名義で請け負う!どうだろうか?」
「いいな、それ!俺も仲間って感じがする」
「俺も異論はないぞ?」
「じゃあ、これがAMSの初仕事だな!よろしく、アル!」
「おう!よろしくな、シル、ミル!」
アルが嬉しそうに笑った。まるで子供のように無邪気な笑顔だ。
こんなに喜ぶのなら、もっと早くにアルの名も入れればよかった。
「あのな、アル。俺はアルのことをずっと大切な仲間だと思ってるぞ?
何もない俺にシルがついてきてくれた。アルが力を貸してくれた。だから俺は今ここで笑っていられるんだ。
ここにもアルの部屋があるだろ?……そういうことだ」
最後は照れくさくて小さな声になってしまった。
だがアルにはしっかり伝わったようだ。
「ミル……。俺、ずっとマージとしてやってきたろ?女装してさ。
でも、今はずっとアルだろ。ミルといたらさ、アルだのマージだのそういうのはもういいかなって思えたんだ。
…………シルとミルと一緒にいると、すげえ楽しい。
マージの頃みたいに一人で立つのも楽しかったけど、それとは違うんだ。
二人とも、俺を仲間にしてくれてありがとうな」
「いまさらだ。お前だからミルに紹介したんだぜ?」
シルがアルを小突いた。
「あ、一応言っておくぞ?ミルは俺のだからな?ミルに惚れるなよ?惚れるなら………そうだなあ……マックスにでもしとけ!」
「いや、年下すぎるだろ」
「はあ?!俺のミルと同じ年だろが。いける!いっとけ!」
「マックスはダメだ!レオリースのところに居て貰わないと!」
「てか、シル、会ったこともねえマックスに俺を押し付けようとすんなよ……」
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