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ゲイル、やらかし済み?
俺とボルゾイ
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そう。ルーの言う通り、俺は3年前にある男を拾った。
〰3年前〰
下街から帰ると、伯爵家の前でボロボロの男の子が行き倒れていた。12、13歳くらいか?
その顔に血の気は無く、青ざめた唇から荒い息を漏らしている。
「おいおいおい…。なんだこれは?」
俺は医者だぞ?さすがに捨て置くわけにはいかねーじゃん。
仕方なくよっこらしょと拾って帰り、そうっとベッドに寝かせてやった。
ここまでしても子供は目覚めない。よほど弱っているのだろう。
俺は早速子供の治療をすることにした。
衣服を見るとなかなかに良い家系の子息のようだが…。いったい何があったんだ?
とりあえずどこが悪いか調べるために脱がせてみて…
俺は仰天した。
背中にびっしりと痛々しい傷があったのだ。
刃物によりパックリした断面ではなく、打撃により皮膚が裂けたもの。
恐らくムチによる傷だろう。
アレは皮膚を裂き長い間痛みを与える罪深い拷問具だ。
打撃面が細く集中するから、たった一発の鞭で皮膚が切れ出血する。撃たれた側の痛みも激しく、大の成人男性があまりの痛さに泣いて許しを乞うたり、失禁したりする類のものなのだ。
だというのに、その傷はひとつやふたつではなかった。
古い傷が消えぬ跡となりいく筋も背中を横断している。
まだ新しい傷はじくじくと膿み、周囲が赤く腫れてしまっていた。
この傷がこの子が倒れた原因だろう。
触れた身体は熱く、発熱している。
治療もしないまま放置したことで傷口から細菌感染を起こしているのだ。
俺はそっと傷跡を指で辿った。
傷が塞がった跡からするに、長年に渡り付けられたものだ。
どう見てもコイツはまだ学生。大人の保護が必要な年齢だ。
そんな子供の背中の古傷の意味すること。
つまりこいつは幼い子供の頃から跡が残るほど鞭打たれてきたのだ。
教師か?親か?
いずれにしろ、相手は碌なヤツじゃない。
俺は腹の底から込み上げる憤りに、奥歯をギリと噛み締めた。
「…クソが!」
俺は無抵抗の相手に暴力を振るうようなヤツは嫌いだ。ましてや子供を痛めつけるヤツなんて死ねばいいと思っている。
なんとかできるならしてやりたいが…。
塗り薬でも時間をかければ回復するだろう。
しかし、この子が帰ってゆっくり休めるとは思えなかった。
ならば、やることは決まっている。
俺はそっと子供の背に手のひらを当てた。
「ヒール!」
パアア
眩しい光の後、傷はみるみる塞がった。
身体に残る跡までは消さずにおく。
残念だが傷跡まで消しては鞭打つ輩に怪しまれるだろう。そうなれば更に折檻されかねない。
これが今の俺にできる最善だった。
あとは徐々に慣らして、それから相手を聞き出そう。
傷が治癒した事で発熱もひいたのだろう。
苦し気だった彼の呼吸が安らかなものに変わり、潜められていた眉が緩む。
俺は柔らかく目を細めた。
良かった。
ついでに服にもクリーンをかけてやる。
うん。これで綺麗になったな!
穏やかに眠る子供は、存外可愛らしい顔をしていた。
銀色の髪。まだ青ざめ痩せてはいるが品のいい整った造形。細くてすらりとしたまだ未成熟な身体…
「…まるでボルゾイだな」
目にかかるサラリとした前髪をそっと払ってやる。
「…なあ。お前を傷つけるクソ野郎は、誰だ?
親か?それとも教師?
それはお前が耐えなきゃならんもんなのか?
いずれにせよ、もう大丈夫だぞ。
俺がいるからな」
語りかければ、無意識なのか子供が俺の手に擦り寄る仕草を見せた。
俺はそっとほほを撫でてやる。
「ふふ。かわいいもんだ。
まあ、ゆっくり休め。
ここにはお前を傷つけるヤツはいない。
お前には休息が必要だ。
よく頑張ったな。偉かったぞ」
ぽん、ぽん。
安らかな息を吐く身体を布団の上からそっとだきしめ、優しく叩く。
よく寝ろよ。
子供が深い眠りに落ちたのを確認して、俺は飯ようやくを食うために部屋を後にしたのだった。
くっそ!怒ったら腹が減ったぜ!
〰3年前〰
下街から帰ると、伯爵家の前でボロボロの男の子が行き倒れていた。12、13歳くらいか?
その顔に血の気は無く、青ざめた唇から荒い息を漏らしている。
「おいおいおい…。なんだこれは?」
俺は医者だぞ?さすがに捨て置くわけにはいかねーじゃん。
仕方なくよっこらしょと拾って帰り、そうっとベッドに寝かせてやった。
ここまでしても子供は目覚めない。よほど弱っているのだろう。
俺は早速子供の治療をすることにした。
衣服を見るとなかなかに良い家系の子息のようだが…。いったい何があったんだ?
とりあえずどこが悪いか調べるために脱がせてみて…
俺は仰天した。
背中にびっしりと痛々しい傷があったのだ。
刃物によりパックリした断面ではなく、打撃により皮膚が裂けたもの。
恐らくムチによる傷だろう。
アレは皮膚を裂き長い間痛みを与える罪深い拷問具だ。
打撃面が細く集中するから、たった一発の鞭で皮膚が切れ出血する。撃たれた側の痛みも激しく、大の成人男性があまりの痛さに泣いて許しを乞うたり、失禁したりする類のものなのだ。
だというのに、その傷はひとつやふたつではなかった。
古い傷が消えぬ跡となりいく筋も背中を横断している。
まだ新しい傷はじくじくと膿み、周囲が赤く腫れてしまっていた。
この傷がこの子が倒れた原因だろう。
触れた身体は熱く、発熱している。
治療もしないまま放置したことで傷口から細菌感染を起こしているのだ。
俺はそっと傷跡を指で辿った。
傷が塞がった跡からするに、長年に渡り付けられたものだ。
どう見てもコイツはまだ学生。大人の保護が必要な年齢だ。
そんな子供の背中の古傷の意味すること。
つまりこいつは幼い子供の頃から跡が残るほど鞭打たれてきたのだ。
教師か?親か?
いずれにしろ、相手は碌なヤツじゃない。
俺は腹の底から込み上げる憤りに、奥歯をギリと噛み締めた。
「…クソが!」
俺は無抵抗の相手に暴力を振るうようなヤツは嫌いだ。ましてや子供を痛めつけるヤツなんて死ねばいいと思っている。
なんとかできるならしてやりたいが…。
塗り薬でも時間をかければ回復するだろう。
しかし、この子が帰ってゆっくり休めるとは思えなかった。
ならば、やることは決まっている。
俺はそっと子供の背に手のひらを当てた。
「ヒール!」
パアア
眩しい光の後、傷はみるみる塞がった。
身体に残る跡までは消さずにおく。
残念だが傷跡まで消しては鞭打つ輩に怪しまれるだろう。そうなれば更に折檻されかねない。
これが今の俺にできる最善だった。
あとは徐々に慣らして、それから相手を聞き出そう。
傷が治癒した事で発熱もひいたのだろう。
苦し気だった彼の呼吸が安らかなものに変わり、潜められていた眉が緩む。
俺は柔らかく目を細めた。
良かった。
ついでに服にもクリーンをかけてやる。
うん。これで綺麗になったな!
穏やかに眠る子供は、存外可愛らしい顔をしていた。
銀色の髪。まだ青ざめ痩せてはいるが品のいい整った造形。細くてすらりとしたまだ未成熟な身体…
「…まるでボルゾイだな」
目にかかるサラリとした前髪をそっと払ってやる。
「…なあ。お前を傷つけるクソ野郎は、誰だ?
親か?それとも教師?
それはお前が耐えなきゃならんもんなのか?
いずれにせよ、もう大丈夫だぞ。
俺がいるからな」
語りかければ、無意識なのか子供が俺の手に擦り寄る仕草を見せた。
俺はそっとほほを撫でてやる。
「ふふ。かわいいもんだ。
まあ、ゆっくり休め。
ここにはお前を傷つけるヤツはいない。
お前には休息が必要だ。
よく頑張ったな。偉かったぞ」
ぽん、ぽん。
安らかな息を吐く身体を布団の上からそっとだきしめ、優しく叩く。
よく寝ろよ。
子供が深い眠りに落ちたのを確認して、俺は飯ようやくを食うために部屋を後にしたのだった。
くっそ!怒ったら腹が減ったぜ!
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