【完結】俺が聖女⁈いや、ねえわ!全力回避!(ゲイルの話)  ※番外編不定期更新

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

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ゲイル、やらかし済み?

俺とボルゾイ2

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銀色のわんこは、しばらく泥のように眠っていた。
起こそうかと思ったが、目の下のクマを見て眠れるだけ寝かせてやることにしたのだ。

わんこが目を覚ましたのは、俺が飯を食い風呂に入り、ベッドの横でグダグダと酒を飲み始めた頃。

「う…うん…」

微かな声と衣擦れの音。

「………ここは…何処だ?」

覚束ない眼差しが、俺に焦点があったとたん鋭いものに変わる。

「!!あなたは⁈私は何故ここにいる?
ここは何処なのだ?」

慌てて起きあがろうとするのを俺は片手で制した。

「おい。まだ起きるな。
俺はゲルリアス。ゲイルでいい。医者だ。
きみはうちの屋敷の前で倒れていたんだ。
覚えてるか?」

まだ頭がぼうっとしているようで、何かを思い出すかのように額に手をやり数回頭を振っている。

「………ああ。思い出しました。
…頭が…痛くて…身体がとても重くて…」
「ああ。発熱していたからな」
「発熱?……そうですか。ご迷惑をおかけしました。
このお礼はまだ後日」

言いながら立ち上がろうとするのを遮るように、俺は言った。

「悪いが背中を見せてもらったぞ」

とたん、子供の肩がビクリと震える。
だが、彼は表情一つ変えずに言った。

「…そうですか」

血の気の失われた顔色だけは彼の内心の動揺を語っていた。
俺はあえて淡々と言葉を紡ぐ。


「ああ。治療に必要だったからな。
発熱の原因は背中の傷だ。
で……誰にやられた?」
「何のことでしょう?」
「あれは明らかに鞭の跡だ。
しかも長年に渡るものだ。
薬でも治療はできたが、緊急だったからヒールさせてもらった。もう痛みはないだろう?」
「ヒールを⁈」
「ああ。俺はヒールが使える。
そして薬草や薬も使う医者でもある」
「まさか、あなたは…!そうか。あなたが…」
「分かってくれたか?
このまま返せば、また同じことになるだろう。
医者としてそれは認められん。
だから聞くぞ。
誰にやられた?」

俺に譲る気がないのを理解したのだろう。子供は諦めたように目を閉じた。

「………父です。…名前は言えません。
お世話になっておきながら申し訳ございません」

項垂れた頭に手を伸ばすと、子供はビクッと身を震わせた。
クソ!
この様子だと、鞭だけでなく暴力も振るわれているな。

俺は子供の前にしゃがみ込み、目線を子供より低くした。

「…触れるぞ?」

断ってそっと額に手を当てる。
熱はもう無いようだ。

そのまま子供の頬を優しく撫ぜると、子供は驚いたように目を見開いた。

「…辛かったな。よく頑張った。
うちの前で倒れてくれて良かった。
偉いぞ。よくやった!」

固まってしまった子供の頭をそっと抱え込むようにして俺の胸に抱きしめる。
ぽん、ぽん、ぽん。
リズム良くその背を叩きながら、俺はゆっくりと言い聞かせた。

「どんな理由だろうと、子供に手を挙げる親はクソだ。ゴミだ。
お前は悪くない。
だから、我慢なんてする必要はないんだよ。
悪いのは、クソの方だ」

おずおずと子供の手が俺の背中に回された。
きゅ。
小さく小さく俺の服を掴む。

助けてと言うこともできない子供の、助けてという声が聞こえた気がした。

「ああ。分かった。
大丈夫。大丈夫だ」

ほんの僅かに、遠慮がちに少しだけ寄り添ってくる痩せた身体。
甘え方も知らない子供が切なかった。

こんな目にあっても名乗らないからには、それなりの地位のある家なんだろう。
詮索したいが…んなことしたらコイツはここから逃げ出すんだろうなあ…。

俺はあえて子供の顔を見ないままで告げた。

「名前は聞かない。
だが、お前は俺の名を覚えておけ。
フィオネル伯爵、ゲルリアス。医者でありヒーラーでもあるゲイルだ。
お前の父親に『ゲイルに会って背中を治療された。定期的に通うように言われた』と言え。
貴族の中で俺は顔が効く。
クソも俺を敵には回したくないはずだ。
お前が俺の庇護下にあると思えば手も出さねーはずだ。
いいか?必ずだぞ。クソに俺の名前を伝えるんだ。
それだけでいい」


名前は聞かない。だから。
俺にお前を助けさせてくれ。








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