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第五章 ゲイルは聖女
王家からの重大発表
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向かうべき方向が決まれば後はそこに向かって走るだけだ。
俺とフィオは今「婚約者」だ。
公表するなら早いほうがいいというので、式は1年後。
なぜかといえば、ハルトがごねたから。
あの日は結局俺だけ帰して貰えなかった。というより、一旦は帰り夜こっそり裏ルートで来いと言命されたのだ。
もちろんフィオは渋ったが、「親友をやるのだ。これくらいは我慢しろ。包容力の無い男などゲイルにはふさわしくない」とハルトに言われ、しぶしぶ承諾した。
ハルトのところから戻るまではサフィール家にいるようだ。兄貴が「うちで面倒を見るから」と意気消沈したフィオをなだめていた。俺もさすがに可愛そうな気がするから、兄貴の助けは正直言ってありがたい。
そういうわけで、裏ルートから部屋に行くと、ハルトはすでに飲んだくれていた。
「…………来たか。ゲイル」
「おう。お前なあ、飲みすぎだぞ?いくらなんでも肝臓を傷める」
「知るか!俺はなあ……親友を失った上に、失恋したんだぞ。酒くらい好きに飲ませろ」
「…………悪かったよ。だってさあ、俺だぜ?お前は王なんだし、普通に無理だろ」
「他国を見てみろ。過去の文献も。聖女は王族に嫁ぐものだろうが!」
「この国では魔王に、グランディールに嫁いでんだよ」
「おかしいだろう!グランディール!」
「おい。負をその身に集めてくれていたんだぞ。魔王になる危険もあったんだ。敬意を払え!それに、俺はグランディールに嫁ぐんじゃねえ。フィオだから嫁いでもいいと思ったんだ。でなきゃ、男なんてごめんだっての!」
「……すまん。…………フィオネルのどこが良いのだ?」
「拾っちまったからなあ……」
「うちの犬、ボルゾイってのが宰相だったとは。まさか人まで拾っていたとは思わなかった。それが悔やまれる」
「いや、あいつ可愛いんだって。なんつーか、やることなすこと俺にはたまらなく可愛く見えるんだよ。健気だしな。あいつ、すっげえ俺のこと好きだろ。たまんねえよ」
「俺だって!俺だってずっと好きだった!!」
「でも、お前は王だろ?それに、ずっとってわりに何にも言わなかったじゃねえか。親友がちょうどいいんだよ。俺たちにはさ」
「お前が男でもいけるとは思わなかったんだ。お前に打ち明けてお前を失うくらいならと思ったんだよ」
「でもさ、フィオはそれでも俺にくっついて回ってたぜ?俺が聖女だって分かる前から『あなたから離れない。何がなんでも側にいる』って言いやがった。どんなことがあろうと、俺を裏切らないんだとよ。俺だけを見つめ続けるんだとよ。『私はあなたのもの。だからあなたも私のものになってくれ』って言いやがったんだ。すげえ殺し文句だろ?」
お前には言えないだろ?と言外に匂わせる。ハルトとフィオの違い。それは「俺がすべてかどうか」だ。ハルトはどうしたって国を背負わなきゃならない。そうやって生きてきたし、それを果たそうと努力してきた。だからハルトは国を捨てられない。俺はそうやって必死に重圧と戦うハルトだから、親友になったんだ。
ハルトも俺が言わんとすることが分かったのだろう。
「俺は……お前のものだと言いたくても言えない。俺は国民のものでなきゃならん。……俺は最初から詰んでたんだな」
寂しそうに呟いた。
「でも、俺の親友はお前だけだぜ?あ、あとギルド長もいるか。だがあいつは悪友って感じだからなあ」
「せめて『お前だけだ』って言いきってくれよ!」
「はははは!親友はお前だけだぜ、ハルト」
「今更遅いんだよ!」
「まあ、飲めよ!親友!」
「調子のいい奴め!」
「愛してるのはフィオだが、お前のことも大事には思ってるんだぞ?」
「でなきゃ、やってらんねー。王なんて損な職業だなあ」
「そういうお前だからこそ、俺はお前に王でいて欲しいんだ」
これは正直な俺の本心だ。俺は王がハルトだからこそ、聖女だと公表しようと決めた。
子供をこの国で俺たちの子として育てようと思ったんだ。お前が王だから、そうできると信じたんだ。
そして、聖女としてこの国を、お前を支えていこうと思えたんだ。
「お前には、歴代の王で初めて聖女が後ろ盾についたんだぞ?お前にとっちゃあ損な職業どころか最高の職業じゃねえか。なあ、親友。俺たちで、国を変えようぜ。俺たちの子が、笑って幸せに暮らせる国にするんだ。誰もが笑って暮らせる国に。俺たちならそれができる。だろ?」
俺とフィオは今「婚約者」だ。
公表するなら早いほうがいいというので、式は1年後。
なぜかといえば、ハルトがごねたから。
あの日は結局俺だけ帰して貰えなかった。というより、一旦は帰り夜こっそり裏ルートで来いと言命されたのだ。
もちろんフィオは渋ったが、「親友をやるのだ。これくらいは我慢しろ。包容力の無い男などゲイルにはふさわしくない」とハルトに言われ、しぶしぶ承諾した。
ハルトのところから戻るまではサフィール家にいるようだ。兄貴が「うちで面倒を見るから」と意気消沈したフィオをなだめていた。俺もさすがに可愛そうな気がするから、兄貴の助けは正直言ってありがたい。
そういうわけで、裏ルートから部屋に行くと、ハルトはすでに飲んだくれていた。
「…………来たか。ゲイル」
「おう。お前なあ、飲みすぎだぞ?いくらなんでも肝臓を傷める」
「知るか!俺はなあ……親友を失った上に、失恋したんだぞ。酒くらい好きに飲ませろ」
「…………悪かったよ。だってさあ、俺だぜ?お前は王なんだし、普通に無理だろ」
「他国を見てみろ。過去の文献も。聖女は王族に嫁ぐものだろうが!」
「この国では魔王に、グランディールに嫁いでんだよ」
「おかしいだろう!グランディール!」
「おい。負をその身に集めてくれていたんだぞ。魔王になる危険もあったんだ。敬意を払え!それに、俺はグランディールに嫁ぐんじゃねえ。フィオだから嫁いでもいいと思ったんだ。でなきゃ、男なんてごめんだっての!」
「……すまん。…………フィオネルのどこが良いのだ?」
「拾っちまったからなあ……」
「うちの犬、ボルゾイってのが宰相だったとは。まさか人まで拾っていたとは思わなかった。それが悔やまれる」
「いや、あいつ可愛いんだって。なんつーか、やることなすこと俺にはたまらなく可愛く見えるんだよ。健気だしな。あいつ、すっげえ俺のこと好きだろ。たまんねえよ」
「俺だって!俺だってずっと好きだった!!」
「でも、お前は王だろ?それに、ずっとってわりに何にも言わなかったじゃねえか。親友がちょうどいいんだよ。俺たちにはさ」
「お前が男でもいけるとは思わなかったんだ。お前に打ち明けてお前を失うくらいならと思ったんだよ」
「でもさ、フィオはそれでも俺にくっついて回ってたぜ?俺が聖女だって分かる前から『あなたから離れない。何がなんでも側にいる』って言いやがった。どんなことがあろうと、俺を裏切らないんだとよ。俺だけを見つめ続けるんだとよ。『私はあなたのもの。だからあなたも私のものになってくれ』って言いやがったんだ。すげえ殺し文句だろ?」
お前には言えないだろ?と言外に匂わせる。ハルトとフィオの違い。それは「俺がすべてかどうか」だ。ハルトはどうしたって国を背負わなきゃならない。そうやって生きてきたし、それを果たそうと努力してきた。だからハルトは国を捨てられない。俺はそうやって必死に重圧と戦うハルトだから、親友になったんだ。
ハルトも俺が言わんとすることが分かったのだろう。
「俺は……お前のものだと言いたくても言えない。俺は国民のものでなきゃならん。……俺は最初から詰んでたんだな」
寂しそうに呟いた。
「でも、俺の親友はお前だけだぜ?あ、あとギルド長もいるか。だがあいつは悪友って感じだからなあ」
「せめて『お前だけだ』って言いきってくれよ!」
「はははは!親友はお前だけだぜ、ハルト」
「今更遅いんだよ!」
「まあ、飲めよ!親友!」
「調子のいい奴め!」
「愛してるのはフィオだが、お前のことも大事には思ってるんだぞ?」
「でなきゃ、やってらんねー。王なんて損な職業だなあ」
「そういうお前だからこそ、俺はお前に王でいて欲しいんだ」
これは正直な俺の本心だ。俺は王がハルトだからこそ、聖女だと公表しようと決めた。
子供をこの国で俺たちの子として育てようと思ったんだ。お前が王だから、そうできると信じたんだ。
そして、聖女としてこの国を、お前を支えていこうと思えたんだ。
「お前には、歴代の王で初めて聖女が後ろ盾についたんだぞ?お前にとっちゃあ損な職業どころか最高の職業じゃねえか。なあ、親友。俺たちで、国を変えようぜ。俺たちの子が、笑って幸せに暮らせる国にするんだ。誰もが笑って暮らせる国に。俺たちならそれができる。だろ?」
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