【完結】俺が聖女⁈いや、ねえわ!全力回避!(ゲイルの話)  ※番外編不定期更新

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第六章 ゲイルの狩り

ドラゴンと邂逅す

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なんだかんだと旅を続け、通常1週間のところ5日で目的地に到いた。
観光のせずひがすら駆けてきた甲斐があったぜ!
ようやく馬の背からおり、感慨深く森の入り口に立つ。
うーん、と腰を伸ばすと、ぐったりしている相棒を労わってやることにする。

「予定を2日も短縮したぞ?さすがクリスだ!腐ってもギルド長なだけあるぜ!」

ご機嫌でその背を叩けば、こころなしか老けたクリスがため息をついた。

「あのなあ……連日睡眠時間4時間だぞ?5日間、ほぼメシ以外は馬を走らせてたんだぞ?そりゃ早く着くだろ。てか、戦場じゃねえんだからさあ!勘弁しろよ!これ、俺以外と組む時にするなよ?ギルドが責められる。マジで尻が死ぬとこだったぜ」
「毎日ヒールしてやったろうが!俺のヒールだぞ?しかもタダ!大サービスだろうがよ」
「お前のせいなんだから当たり前だ。てか、ボルゾイにこの鬼畜っぷり見せてやりてえ……」
「フィオにするわけねえだろ?可哀想だろうが」
「俺の扱い!」
「お前はギルド長だろ。これくらい耐えろ」
「だが親友でもある。親友に対する扱いとしてどうなんだ?」
「はいはい。ありがとうな!愛してるぜ親友!」
「安い愛してるだな」
「高いのはフィオ専用だからな」
「チャンスがあればノロケやがる!クソが!」

軽口を叩き合ってリラックスしたところで。

「行くか!」
「おう!」

馬は「近くにいろよ」といい聞かせてここに置いていく。下手に繋いでおいたら、魔物に襲われても逃げようがないからな。こいつらの命優先だ。




魔物を狩る時間を惜しみ、魔物除けたる俺が先導する。
森の中は外よりも気温が数度下がっている。木陰で陽が当たらないから、というよりも実際に気温自体が下がっているのだろう。逆に、これこそがアイスドラゴンがここにいる証拠となる。

「まだ狩の最中みたいだぜ?ツイてたな」

よそに移動してたらまた探さなきゃならん。良かったぜ。

奥に進むに従い徐々に肌寒くなり、今や吐く息まで白い。
風で防御するほどでもないから、マントを身体に巻き付けながら進む。

「ゲイル、近いぞ。半径200メートル。魔物が居なくなった」
「ああ。ヤツの気配に怯えて隠れたか、狩られたか……」

地面に霜が下りており、歩くたびにどうしてもパリパリと音を立ててしまう。
こりゃあ気づかれずに近寄るのは無理だ!
俺は早々に意識を切り替えた。

「あのさ。アピールしてあっちに来てもらうことにしようぜ。その方が手っ取り早い」
「はあ?」
「お前、吠えろよ」
「なんだって?!」
「俺がやってもいいけどさ。囮にはお前が適任だろ? 挑発ってやつ、やれよ。元S級ならできんだろ?」
「いやいやいや、お前なあ!人使い荒すぎだろ」
「こっちに来たら俺がやってやるから!呼ぶだけなんだから楽なもんだろ?」
「あああああ!くっそおおおおおお!」

「がああああああああああああああ!」

クリスが吠えた。声というよりも大気を震わす振動。寒気強まる方向に向けて放たれた咆哮は、正しく相手に届いたようだ。

一瞬で空気がビリビリとした怒気を伝えてきた。

「来るぞ! 」

バサア! 

羽音と同時に氷の矢が放たれる。

「まかせろ!ブラスト!」

クリスの前に躍り出てそれをすべて風で打ち返してやる。

「チッ。外れたか。いくつか当たると楽だったんだがなあ」

ニヤリと不敵な笑みを見せる俺を、アイスドラゴンのブルーの瞳が捉えた。
瞬間、威圧が俺に向けて放たれ、俺の手前で霧散した。
どうやら俺の魔力のほうが格上のようだ。

アイスドラゴンが不思議そうに首をかしげる。

【お主、人間か? 】

「お。お前話せるのか。そいつは助かる。まあ、一応人間だ。聖女ってやつ?」

【ほう!我の言葉が分かるか!…………うむ。フェンリルのにおいがある。ヤツの眷属か。我に何ようだ?】

「頼みがあるんだ。うろこを2枚分けて欲しい。結婚相手に送るカフスを作りたいんだ。それと、そこの男にも1枚やってくれ」

【我に何の得が?】

そうだよなあ。そうくるわな。
俺はアイスドラゴンに向かって堂々と言い放ってやった。

「命だ。うろこをくれれば、お前を狩らずにすむ。アイスドラゴンは貴重な存在だ。余計な殺生はしたくねえ」
「おい!よせ!煽るな!」

クリスが慌て後ろから俺の口をふさぐ。うるせえなあ。本当のことだろうが。
てか、お前は俺の裏に居ろって!

「なあ、アイスドラゴン。最初のやり取りで俺のほうが格上だと分かっただろ?俺はお前が気に入った。なんていったって、キレイだからな。無駄な狩りをしねえスタイルも気に入ってんだ。仲良くしようぜ?」

とたん、ゴオッと吹雪のような猛烈な風が俺に吹き付けられたが、俺の手前でまた霧散した。
とはいえ、まともにくらいでもすれば瞬殺だ。
だが、アイスドラゴンからすれば、これはただ俺を試した程度だろう。

俺もお返しにアイスドラゴンの手前に軽く雷を落としてやった。
バリバリバリーッ!ドーン!

【ははは!効かぬか!面白い奴だ!】

「聖女パワーらしいぜ?まあ、こんなん無くても俺は強いけどな!」

ふわり。
ドラゴンが俺の前に降り立つ。
すかさず剣を抜き前に出ようとするクリスを片手で止めた。

すぐ前のアイスドラゴンからは、もう敵意は感じない。

【よかろう。我のうろこをやろう。その代わりにお前の名を寄越せ。我の名はブリード】

「俺はゲイルだ。ゲルリアス・グリフィス。よろしくな」

【我に用があるときは、我の名を呼ぶことを許そう】

「ああ。ブリードも俺に用があるときは俺のところに来い」

後ろから「マジか……マジでやりやがった……」と声がする。
なんだよ、最初の予定通りだろうがよ。争わず解決できればそれが一番いいだろ。
こんなきれいな生き物、狩っちまったらもったいねえ。
人間に仇なしたわけじゃなし。逆にこっちのほうが呼びつけたんだぜ?

「あー……一応俺も名乗っておくわ。ゲイルの親友、クリスだ。姓は捨てた。王国のギルド長をやってる」

「ブリード、こいつはクリス。姓は捨てたとよ。王国のギルド長だ」

【……人間か。一応覚えておこう】

「クリス、一応覚えておくってさ!」

「一応かよ!……まあ、よろしく頼む」


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