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第六章 ゲイルの狩り
クリスの暴走
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大急ぎで馬を飛ばし、帰りは1日短縮できた。
精霊が何かしてくれたのか、馬が疲れなかったのも大きい。
途中宿屋に泊まったが、ずっと部屋は別にしてきた。
「もったいねえ!ベッドが別ならいいだろ」といったところ、クリスが青い顔で「俺がヤツに殺されてもいいのか」などと不穏なことを言い出したからだ。
てか、クリスんちでしょっちゅう飲みながら寝ちまったりしてる俺的には今更なんだが。
そう言ったところ、奇異なものでも見るような眼をされた。
「お前さあ、ボルゾイに親しい奴がいるとする」
「残念ながらいねえな」
「まあ、いると仮定しろ!んで、想像してみろ。そいつとボルゾイが長期の旅に出る」
「…………ああ」
「んで、ずっと同じ部屋で寝泊まりする。どうだ?」
「いや、ねえな!なぜかすげえムカツクわ」
「だろ?お前ら同性で付き合ってっから、同性でも妬くんだよ。ボルゾイも同じだ。ボルゾイのお前への執着、舐めんなよ?」
「そうか。確かに。フィオがって思うと腹がたつな。理解した」
というクリスの説得あってのことだ。
ここで俺はこう思ってしまった。
……この旅の最後くらいはいいのではなかろうか。
久しぶりの親友との狩り。おまけにうろこを貰えたばかりかドラゴンの友までできて、俺は浮かれていた。
長旅の疲れもあったのだろう。
ここで俺は……判断を誤ったのだ。
「なあ、次はいつ旅できるかわかんねえし、飲み明かそうぜ!部屋は別にしてさ。風呂入ったらお前の部屋にいくから。それならいいだろ?」
「はあ?お前、こういうとき必ず酔いつぶれるじゃねえかよ!」
「大丈夫だって!這ってでも部屋に戻るから。………戻れなかったら床に転がしておいてくれていい」
「じゃあ、食堂で飲もうぜ。俺だって命は惜しい」
「はあ?だらだらと飲むのがいいんじゃねえか!鱗だって手に入れたし、新しい友も得た。祝い酒といこうぜ!」
「……ゲイル、お前さあ、こんな絡み方するヤツだったか?」
いや、自分でも正直よくわからん。
クリスと狩りの時はいつも一部屋でごろ寝して、飲み明かしたり語り明かして、翌日は痛む頭にヒールして……ってのが俺たちの定番だった。
久しぶりの狩りなのに、妙に遠慮されちまって……なんつーか、ちと寂しい、みたいな?
クリスが呆れたようにため息をつき、俺の髪をクシャクシャとかき回す。
「おい!」
「お前……寂しいのか?」
「はあ?寂しかねえよ!別にお前がつれねえからってなんともねえっての!」
俺の言葉にクリスは不意を突かれたようにぽかんとし、笑い出した。
「はははは!ボルゾイと離れて寂しいのか、って意味でいったんだがな!お前……俺のこと大好きじゃねえかよ!」
やられた!顔から火が出そうだ。くっそおおお!!
「そうだよ!俺が背を預けられるのなんてなあ、フィオとお前しかいねえんだよ!そりゃ、好きに決まってんだろうが!悪いかよ!」
とたん。クリスの顔から表情がするりと抜け落ちた。
「悪くねえよ」
言うなり俺の腕を掴み、その大きな胸にグイっと抱き寄せる。そのまま激しく唇を奪われた。
「んうっ!」
逃れようとしたが、腰に回された腕がそれを許さない。クリスは俺の頭を押さえつけるようにしてさらに深く口付けてくる。
「やめ…!」
止めようと口を開けば、言葉を発する前にクリスの舌が口中に入り込み、思うがままに蹂躙する。
せめてもとにらみつければ、燃えるような眼が俺を射抜いた。
ゾワリと背中に走るものを振り切るように俺は叫んだ。
「クリス!」
はっと我に返ったようにクリスに表情が戻る。
ドン!
わずかに腕の力が緩んだすきに、俺はクリスを突き飛ばしてすかさずその上に乗り上げた。
しっかりとボディを抑え込み、腕を片手でつかむ。
「何してくれてんだよ!溜まってんのか?」
ぐいっと腕で口をぬぐいながら詰ると、かああっと赤くなり、すげえ勢いで怒鳴り返された。
「ああ!そうだよ!溜まりまくりだ!俺はずっとお前に飢えてんだ!ちくしょうが!惚れてたっつったろうが!刺激すんな!お前、無駄に可愛いんだよ!不用意に好きとか口に出すな!」
一気に吐き出される本音に思わず頭を下げる。
「す、すまん。可愛くて悪かった」
「悪くねえよ!」
「どっちだよ!」
「可愛すぎると、諦めたつもりでも惑わされるっつってんだよ!……お前、ボルゾイに惚れてんだろうが。俺だって血迷いたくねえ。わきまえろ」
「はあ?お前がわきまえろ?そりゃこっちのセリフだっての!お前親友でいいっつったろうが!親友でいろよ!」
「わがまま言うな!こっちだって親友で居たいんだっての!俺はなあ、お前の悪魔みてえな強行軍で疲れがたまってんだよ!普段ならまだしも、脳がまともに働かねえの!ギリギリんとこに負荷かけるからこうなるんだよ!」
「こっちだって浮かれてんだよ!そりゃフィオと離れてんのは寂しいが、お前と狩りだって久しぶりだろ!浮かれて何が悪い!」
「お、おう。……悪かねえな」
「だろ?だからお前が我慢しろ!」
「なんでだよ?!てめえ、俺に掘られてえのか!」
「そこを耐えろっつってんの!俺だってキスしてきたのがお前でなきゃぶちのめしてんぞ!」
とたん、クリスがニヤニヤ口元を緩めた。
「……なんだよ?」
「ほう。俺ならキスされても許すのか」
「はあ?クリス以外ダメに決まってんだろ」
「悪いが、俺は付け込むらぞ?」
「付け込ませねえよ。俺はなあ、一途なんだよ」
「知ってる。だがお前、情に流されるだろうが。俺に流されろ。俺のほうがずっと前からお前を見てきた。ボルゾイを捨てろとはいわん。俺も取れ」
「……何言ってんだ。無理だ」
「お前、聖女だろ。常識にとらわれるな。夫が二人居たっていいだろうが。俺は便利だぞ?」
「よかねえよ。うちの国は多妻制じゃねえ!」
「多妻制だったら良かったのか?」
「そういう意味じゃねえ!言葉尻を取るな!」
「そもそも、男同士で結婚だの、子を産むだの言ってるやつが常識を語るなよ。ゲイル、俺も取れ」
ぐいっと体制をひっくり返された。
「お、おい!やめろつってんだろ!」
「何もしねえよ。生娘じゃねえんだ、そんなに怯えんな」
「怯えてねえ!俺は男だぞ!」
「だから?お前は男だが、ゲイルだ。俺はなあ、ゲイルだから惚れてんだよ。お前が女が好きだ思ってたから、俺はお前の傍に居られたらいいと思っていた。だが、男でもいいなら、俺を取れ。ボルゾイがいいっつーから我慢してやるつもりだったが、やめた。お前、俺のことも好きだろ?ボルゾイとの約束通り俺たちは親友だ。これからも親友でいてやる。だから俺も夫にしろ」
「お前、それはずるいだろう!親友で満足しろけよ!」
「まったく脈がないならまだしも、キスを受け入れただろうが!」
「無理やりされたんだ!」
「本当に嫌なら殴れたはずだ!それに……聖女の力は害意を防ぐんだろ?つまり、お前は無意識にしろ俺がキスすんのを良しとしたってことだ。そうとなれば遠慮はしねえ。選べ。親友を失うか、親友と夫を二人手に入れるか」
デカい獲物を前にしたような面して笑うクリス。俺の退路を断ち、容赦なく迫ってくる。畜生!こっちはそれどころじゃねえってのに!
「お前、そりゃずるいだろ!」
「俺がズルいのなんて昔から知ってたろ?」
「もう少し聞き分けが良かったはずだぞ?」
「そりゃ、こんだけこき使われたあげく懐かれたら……なあ?俺だってまだ枯れちゃいねえんだよ」
「…………俺はフィオが可愛い。フィオだから、男でも関係ないと思えたんだ」
「………知ってる」
「フィオを幸せにしてやりてえ。フィオといると幸せなんだ」
「………それも知ってる。だが、俺と居るお前が子供みてえに笑うのも知ってんだよ。お前は俺も手放せねえ。……だろ?俺はそこに付け込む」
「これからお前を狙うやつらは多いだろう。お前は確かに強い。だが、盾は多いほうがいい。俺も仲間に入れろ。……頼む」
無敵のギルマスがそんな声出すなよ。
お前さあ、そんなに俺が好きなのか。俺のどこがいいんだよ。
そっと俺の頬に触れたクリスの手は、強気な言葉とは裏腹に小さく震えていた。
俺がようやく絞りだしたのは、こんなちんけな言葉だった。
「………保留。フィオに相談させろ」
精霊が何かしてくれたのか、馬が疲れなかったのも大きい。
途中宿屋に泊まったが、ずっと部屋は別にしてきた。
「もったいねえ!ベッドが別ならいいだろ」といったところ、クリスが青い顔で「俺がヤツに殺されてもいいのか」などと不穏なことを言い出したからだ。
てか、クリスんちでしょっちゅう飲みながら寝ちまったりしてる俺的には今更なんだが。
そう言ったところ、奇異なものでも見るような眼をされた。
「お前さあ、ボルゾイに親しい奴がいるとする」
「残念ながらいねえな」
「まあ、いると仮定しろ!んで、想像してみろ。そいつとボルゾイが長期の旅に出る」
「…………ああ」
「んで、ずっと同じ部屋で寝泊まりする。どうだ?」
「いや、ねえな!なぜかすげえムカツクわ」
「だろ?お前ら同性で付き合ってっから、同性でも妬くんだよ。ボルゾイも同じだ。ボルゾイのお前への執着、舐めんなよ?」
「そうか。確かに。フィオがって思うと腹がたつな。理解した」
というクリスの説得あってのことだ。
ここで俺はこう思ってしまった。
……この旅の最後くらいはいいのではなかろうか。
久しぶりの親友との狩り。おまけにうろこを貰えたばかりかドラゴンの友までできて、俺は浮かれていた。
長旅の疲れもあったのだろう。
ここで俺は……判断を誤ったのだ。
「なあ、次はいつ旅できるかわかんねえし、飲み明かそうぜ!部屋は別にしてさ。風呂入ったらお前の部屋にいくから。それならいいだろ?」
「はあ?お前、こういうとき必ず酔いつぶれるじゃねえかよ!」
「大丈夫だって!這ってでも部屋に戻るから。………戻れなかったら床に転がしておいてくれていい」
「じゃあ、食堂で飲もうぜ。俺だって命は惜しい」
「はあ?だらだらと飲むのがいいんじゃねえか!鱗だって手に入れたし、新しい友も得た。祝い酒といこうぜ!」
「……ゲイル、お前さあ、こんな絡み方するヤツだったか?」
いや、自分でも正直よくわからん。
クリスと狩りの時はいつも一部屋でごろ寝して、飲み明かしたり語り明かして、翌日は痛む頭にヒールして……ってのが俺たちの定番だった。
久しぶりの狩りなのに、妙に遠慮されちまって……なんつーか、ちと寂しい、みたいな?
クリスが呆れたようにため息をつき、俺の髪をクシャクシャとかき回す。
「おい!」
「お前……寂しいのか?」
「はあ?寂しかねえよ!別にお前がつれねえからってなんともねえっての!」
俺の言葉にクリスは不意を突かれたようにぽかんとし、笑い出した。
「はははは!ボルゾイと離れて寂しいのか、って意味でいったんだがな!お前……俺のこと大好きじゃねえかよ!」
やられた!顔から火が出そうだ。くっそおおお!!
「そうだよ!俺が背を預けられるのなんてなあ、フィオとお前しかいねえんだよ!そりゃ、好きに決まってんだろうが!悪いかよ!」
とたん。クリスの顔から表情がするりと抜け落ちた。
「悪くねえよ」
言うなり俺の腕を掴み、その大きな胸にグイっと抱き寄せる。そのまま激しく唇を奪われた。
「んうっ!」
逃れようとしたが、腰に回された腕がそれを許さない。クリスは俺の頭を押さえつけるようにしてさらに深く口付けてくる。
「やめ…!」
止めようと口を開けば、言葉を発する前にクリスの舌が口中に入り込み、思うがままに蹂躙する。
せめてもとにらみつければ、燃えるような眼が俺を射抜いた。
ゾワリと背中に走るものを振り切るように俺は叫んだ。
「クリス!」
はっと我に返ったようにクリスに表情が戻る。
ドン!
わずかに腕の力が緩んだすきに、俺はクリスを突き飛ばしてすかさずその上に乗り上げた。
しっかりとボディを抑え込み、腕を片手でつかむ。
「何してくれてんだよ!溜まってんのか?」
ぐいっと腕で口をぬぐいながら詰ると、かああっと赤くなり、すげえ勢いで怒鳴り返された。
「ああ!そうだよ!溜まりまくりだ!俺はずっとお前に飢えてんだ!ちくしょうが!惚れてたっつったろうが!刺激すんな!お前、無駄に可愛いんだよ!不用意に好きとか口に出すな!」
一気に吐き出される本音に思わず頭を下げる。
「す、すまん。可愛くて悪かった」
「悪くねえよ!」
「どっちだよ!」
「可愛すぎると、諦めたつもりでも惑わされるっつってんだよ!……お前、ボルゾイに惚れてんだろうが。俺だって血迷いたくねえ。わきまえろ」
「はあ?お前がわきまえろ?そりゃこっちのセリフだっての!お前親友でいいっつったろうが!親友でいろよ!」
「わがまま言うな!こっちだって親友で居たいんだっての!俺はなあ、お前の悪魔みてえな強行軍で疲れがたまってんだよ!普段ならまだしも、脳がまともに働かねえの!ギリギリんとこに負荷かけるからこうなるんだよ!」
「こっちだって浮かれてんだよ!そりゃフィオと離れてんのは寂しいが、お前と狩りだって久しぶりだろ!浮かれて何が悪い!」
「お、おう。……悪かねえな」
「だろ?だからお前が我慢しろ!」
「なんでだよ?!てめえ、俺に掘られてえのか!」
「そこを耐えろっつってんの!俺だってキスしてきたのがお前でなきゃぶちのめしてんぞ!」
とたん、クリスがニヤニヤ口元を緩めた。
「……なんだよ?」
「ほう。俺ならキスされても許すのか」
「はあ?クリス以外ダメに決まってんだろ」
「悪いが、俺は付け込むらぞ?」
「付け込ませねえよ。俺はなあ、一途なんだよ」
「知ってる。だがお前、情に流されるだろうが。俺に流されろ。俺のほうがずっと前からお前を見てきた。ボルゾイを捨てろとはいわん。俺も取れ」
「……何言ってんだ。無理だ」
「お前、聖女だろ。常識にとらわれるな。夫が二人居たっていいだろうが。俺は便利だぞ?」
「よかねえよ。うちの国は多妻制じゃねえ!」
「多妻制だったら良かったのか?」
「そういう意味じゃねえ!言葉尻を取るな!」
「そもそも、男同士で結婚だの、子を産むだの言ってるやつが常識を語るなよ。ゲイル、俺も取れ」
ぐいっと体制をひっくり返された。
「お、おい!やめろつってんだろ!」
「何もしねえよ。生娘じゃねえんだ、そんなに怯えんな」
「怯えてねえ!俺は男だぞ!」
「だから?お前は男だが、ゲイルだ。俺はなあ、ゲイルだから惚れてんだよ。お前が女が好きだ思ってたから、俺はお前の傍に居られたらいいと思っていた。だが、男でもいいなら、俺を取れ。ボルゾイがいいっつーから我慢してやるつもりだったが、やめた。お前、俺のことも好きだろ?ボルゾイとの約束通り俺たちは親友だ。これからも親友でいてやる。だから俺も夫にしろ」
「お前、それはずるいだろう!親友で満足しろけよ!」
「まったく脈がないならまだしも、キスを受け入れただろうが!」
「無理やりされたんだ!」
「本当に嫌なら殴れたはずだ!それに……聖女の力は害意を防ぐんだろ?つまり、お前は無意識にしろ俺がキスすんのを良しとしたってことだ。そうとなれば遠慮はしねえ。選べ。親友を失うか、親友と夫を二人手に入れるか」
デカい獲物を前にしたような面して笑うクリス。俺の退路を断ち、容赦なく迫ってくる。畜生!こっちはそれどころじゃねえってのに!
「お前、そりゃずるいだろ!」
「俺がズルいのなんて昔から知ってたろ?」
「もう少し聞き分けが良かったはずだぞ?」
「そりゃ、こんだけこき使われたあげく懐かれたら……なあ?俺だってまだ枯れちゃいねえんだよ」
「…………俺はフィオが可愛い。フィオだから、男でも関係ないと思えたんだ」
「………知ってる」
「フィオを幸せにしてやりてえ。フィオといると幸せなんだ」
「………それも知ってる。だが、俺と居るお前が子供みてえに笑うのも知ってんだよ。お前は俺も手放せねえ。……だろ?俺はそこに付け込む」
「これからお前を狙うやつらは多いだろう。お前は確かに強い。だが、盾は多いほうがいい。俺も仲間に入れろ。……頼む」
無敵のギルマスがそんな声出すなよ。
お前さあ、そんなに俺が好きなのか。俺のどこがいいんだよ。
そっと俺の頬に触れたクリスの手は、強気な言葉とは裏腹に小さく震えていた。
俺がようやく絞りだしたのは、こんなちんけな言葉だった。
「………保留。フィオに相談させろ」
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