魔王を倒した勇者だけど帰還して今度はVRMMOに挑みます

六山葵

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初サイドクエスト

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「や、やめてくれぇ。誰か助けてくれぇ」

叫び声は男性のものだった。
切羽詰まっていて、助けを求める声。

最初に動き出したのはユーサだった。
異世界で勇者をしていた名残かもしれない。そういった声に人一番敏感になっている。

一瞬遅れてその後にリサとシャインが続く。

「見て、あそこよ」

後方からリサが叫んだ。
ちょうど、ユーサの目も叫び声が上がった場所を捉えたところだ。

街道をまっすぐ進んだ道端に馬車が倒れている。

「あそこ、さっき僕が行った場所だ」

シャインが言う。

横転した馬車の上にかっぷくのいい男性が立っていて、しきりに周囲を見回している。

馬車は狼型のモンスターに取り囲まれていた。

「シャイン、頼む」

走りながらユーサが叫ぶ。
それだけでシャインは意図を理解した。

同じく走りながら杖を構え、ファイアボールの魔法を唱えた。

無数の火の玉が飛んでいき、ユーサを追い越す。

馬車の手前、狼たちのすぐ後ろに着弾し一瞬にして燃え上がり、そして消えた。

狼には当たっていない。
だが、それでいい。ユーサの狙い通りだ。

後方から突然攻撃されたことで狼たちはユーサたちに気づいた。

そういうシステムなのか、それとも本当に怒ったのか。
標的を変えて、群全体がこちらに向かってくる。

リサは短剣を構え、一瞬のうちにユーサの前に飛び出した。

戦闘の狼の牙を短剣で受け流し、その横腹に蹴りを入れる。

シャインがアクアアローの魔法で他の狼を牽制する。

ユーサは棍棒を大きく振りかぶり、リサが蹴り飛ばした狼目掛けて思いっきり振り下ろした。

群れは全部で五体いた。
しかし、倒すのにそれほど時間はかからなかった。

トドメを刺した最後の一体が黒い塵となって消えていくのを見届けつつ、ユーサは棍棒を下ろしてひと息つく。

「新しい武器探さないとな」

ラフクエでは武器に耐久値の設定があるのだろうか、それともユーサの使い方が荒いのか。

最後の一撃を放った時、棍棒は持ち手のところからひび割れてしまった。

店で買った正規品ではないし、そもそもゴブリンが持っていた物だから品質もあまり良くないのかもしれない。

使い勝手は良かったが壊れてしまっては仕方がない、とユーサは棍棒を手放した。

「それよりも……」

馬車の上に立っていた男性の方へ目を向けると既にリサが手を差し伸べていた。

「大丈夫ですか?」

男性は手を借りてそっと馬車から降りるとまだ興奮冷めやらぬという感じであたふたとしている。

「あれ、あなたは……」

男性の顔に覚えがあったのか、シャインが呟く。

恰幅のいい男性は被っていたカラフルなベレーをとって頭を下げた。

「行商人のビスタと申します。先ほどはどうもありがとうございました。重ねてモンスターからも助けていただき、感謝のしようもございません」

やけに丁寧な口調だった。
深々と頭を下げてシャインに感謝の言葉を述べる。

どうやら、レストに品物を頼まれ、それを運ぶ途中で盗賊に襲われて捕まってしまった行商人というのは彼のことらしい。

壊された馬車を回収しにしたところをモンスターに襲われた、という状況だったようだ。

盗賊に襲われた上にモンスターにも襲われるなんて、とユーサはビスタを少し不憫に思った。

だが、話の流れ的に「これもサイドクエストの一環か」とメタ的なことも考えている。

「それで、どうでしたあの魔法道具は。無事に届きましたか?」

たった今命の危機に瀕していたというのにもう品物の話を始めるというのはビスタなりのプロ根性だろうか。

「いや、それが……」

シャインがあらましを説明する。
話を聞くとビスタはとても申し訳なさそうにもう一度頭を下げた。

「申し訳ありません。まさか、壊れていたとは。注文された商品を無事に届けられないとは行商人失格です」

「いえ、盗賊のせいですしビスタさんが悪いわけでは……」

自分を責めるビスタをシャインが慰める。

これから隣町に新しい魔法道具を探しにいくところだ、と伝えるとビスタの顔色が目に見えて変わった。
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