魔王を倒した勇者だけど帰還して今度はVRMMOに挑みます

六山葵

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杖と貴族

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次の日、目を覚ますとまだ顔も洗っていない内にユーサはラフクエにログインした。

始める前は「今更ゲームなんて」と敬遠していたくせに、今となってはすっかりラフクエの魅力に夢中である。
眠りにつく寸前までラフクエのことを考えていて、「明日は何をしよう」「あそこに行ってみるか」と計画を立ててわくわくしていた。

ログインするときの軽快なBGMを聞きながら、ユーサは視界が晴れるのを待った。

目を開けると広がっているのはロトの町の景色だ。
昨日リサたちと別れた場所。ログアウトしたビスタの別邸のすぐ近くである。

「さてと……」

ユーサはまずインベントリを確認した。
無くなっている物はない。ゲームによっては理不尽なバグで、ログインするとアイテムが消失していたりする。
ラフクエならそんなことはないだろうと思いつつ、こうしてしまうのは昔からの癖だった。

次にフレンド一覧を表示する。
クエスト画面同様にリアリティ重視には似つかわしくないシステム画面だ。

別にそこまで細かいところを気にする正確ではないが、他がしっかりしている分目立っているのを残念に思った。

ラフクエのフレンド一覧はシンプルな作りである。
名前が表示されていて、選択するとそのプレイヤーがログインしているかどうかわかる。

個別のメッセージがあり、離れていても文章であり取りができる。

「うわ……リサもログインしてやがる。ここにいないってことは俺よりも早く起きたな。シャインは……さすがにいないか」

昨日ログアウトする前にシャインともフレンドになっていた。

春休みに入ってからひたすらにラフクエをプレイしているらしいリサは今日も頑張っているらしい。

シャインの方はログインしていなかった。

起きたのがいつもより遅かったとはいえまだ午前中だ。シャインが何歳なのかは聞いていないが、学生でもなければ平日にゲームは難しいだろう。

ユーサはリサにメッセージを送るか少し悩んで、何もせずにフレンド画面を閉じた。

「また遊ぼう」と約束したものの「いつ」とは決めていない。
今日は他にやりたいことがあるし、一人で行動することにした。

「えーっと……あっちか」

リサとは違いまだロトの町に慣れていない。
移動するにマップを確認しないと町の外にも出られないのだ。

ユーサが目指したのは隣町のアストルである。

昨日三人で歩いた街道を進み、しばらく歩く。

「マップだとそんなに離れているようには見えないけど、以外に距離があるな」

歩き始めてしばらくしてから後悔する。
場所はちょうど昨日ビスタと出会ったあたりだ。

昨日と同じく度々モンスターに襲われるせいで余計に時間がかかる。

ひょっとしたら一時間くらいは歩くんじゃないか、と不安になったところで街道を馬車が通りかかった。

「お兄さん、アステルに行くの? もしよかったら乗っていく?」

話しかけてきたのは馬車の御者。プレイヤーのようだ。

小学生……いや、中学生くらいだろうか。
ゲーム内だから実年齢はわからないが、アバター的にはそのくらいの年頃の女の子だった。

落ち着いた色合いのコートを来て、似た色のハットの下から赤い髪が
見えている。
「西部劇ゲームと間違えていませんか」と言いたくなるような見た目だが、不思議とよく似あっていた。

「確かに向かう途中だが、いいのか?」

ちょうど歩きを後悔していたところだ。乗せてくれるならばありがたい、とユーサは馬車に乗り込んだ。

「私はアレン、お兄さんは?」

プレイヤー同士だからお互いに名前は頭の上に見えている。
それなのにアレンは名前を聞いて来た。

ああ、なるほど。

ユーサは心の中で納得し、

「ユーサだ」

と名乗る。
恐らく彼女なりのロールプレイの一環なのだろう。

ゲームとはいえ、入り込んだらその世界の人間としてふるまう。

VRゲームが流行りだした頃からそういった信条を持ってプレイする人が増えた。

ユーサはゲームはゲームと割り切っているタイプだが、ロールプレイをしている人にはなるべく付き合うことにしている。

リアリティを追求した世界ならこの方が自然だしな。

何とはなく異世界のことを思い出して、ユーサは馬車に揺られながら静かに笑った。
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