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杖と貴族
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「それで、何が聞きたいって?」
店主は度々入る他の客からの注文を見事に捌きながらユーサに尋ねる。
「人を探しているんだ。相手は貴族。多分そこそこ金持ちの。魔法に関して興味があったり、何か困り事を抱えたりしている貴族に心当たりはないか?」
「貴族ねぇ……」
店主は何か含みを持った様子で呟き、それから店の奥隅の方をちらりと見やる。
その視線に釣られてユーサも振り向いた。
「あそこで飲んだくれてる奴がいるだろ」
店主の言葉の通り、酒がまだ半分くらい入ったグラスを掴んだまま机に突っ伏して酔い潰れている男に目を向ける。
どことなく他のNPCとは違う雰囲気がある。
着ているもののせいか。
男の服は少し薄汚れていて、みすぼらしくも見えるがよく見ると生地の材質は良さそうで、どことなく品があるように見えた。
「アイツは没落した貴族家のお坊ちゃんだ。数年前に当時の当主が不正を働いたとかでお家がお取り潰しにあって、以来度々うちに来てはああやって飲んだくれている」
貴族に関することならアイツに聞きな、と店主はぶっきらぼうに言った。
仕方なくユーサは席を立って男に近づく。
机に突っ伏して寝ているのではないかと思ったが、近づいてみると男が何かボソボソと独り言を言っているのが聞こえた。
「……たく、俺が一体何したって言うんだ。どいつもこいつもバカにしやがって……」
機嫌が悪そうな声色だった。
やけ酒というところか。
ただでさえ酔っ払いに声をかけるのは気が引けるのに、これでは面倒臭い予感しかしない。
「あの……」
意を決してユーサが声をかける。
男の独り言がぴたりと止まった。
しかし、返事はしない。
ぴたりと動きが止まり、息もしていなんじゃないかと思うほど静寂に包まれる。
「あのー……」
ユーサはもう一度声をかける。
間違いなく聞こえているはずだ。
今度も男は返事をしなかったが、代わりにこちらの様子を伺うように顔を僅かに上げた。
腕の隙間から僅かに目が合う。
途端に男はがばっと身体を起こし、止めていた呼吸をまとめて吐き出すかのように盛大に二酸化炭素を撒き散らした。
「何だよ、借金とりかと思ったじゃねぇか」
没落した、というのは本当のことらしい。
どうやら男は借金を抱えているらしく、それを取り立てに来たと思って狸寝入りをしたようだ。
借金がある身にも関わらず、酒場で泥酔とは碌な人間性ではなさそうだ。
「何だお前、このビーツアーム系のモンド様に何のようだ」
人違いだと確信した途端に太々しい態度である。
ユーサは面倒臭さから話を切り上げようかと迷ったが、サイドクエストのために我慢した。
これほど個性的なNPCならユーサの求めるサイドクエスト以外にも何か別のフラグが立つ可能性がある。
店主に話したのと同じような内容をモンドに話す。
彼は大きくため息を吐き、グラスに残っていた酒を煽った。
「お前よ、そういう話が聞きたいんなら礼儀ってもんがあるんじゃねぇのか?」
金でも欲しいのか、とユーサは思った。
しかし、モンドが空になったグラスをコツコツと叩くのでそうではないと悟る。
今度はユーサがため息を吐く。
半ば呆れていた。
「この人に同じ酒をもう一杯。支払いは俺持ちで」
店主に大声でそう伝える。
その状況を見越していたのか、酒が運ばれてくるのがやけに早い。
モンドは嬉しそうにグラスを手に持つとそれを一息に飲み干した。
「いやー、悪いな兄弟。それでなんだっけ? 魔法に関して困っている貴族だったか? 一人心当たりがあるぞ」
途端にモンドが饒舌になる。
その調子の良さに若干腹が立ったものの、ユーサは奢ってよかったと判断した。
彼の話はユーサの求めていた情報と関連性が高そうだったのだ。
店主は度々入る他の客からの注文を見事に捌きながらユーサに尋ねる。
「人を探しているんだ。相手は貴族。多分そこそこ金持ちの。魔法に関して興味があったり、何か困り事を抱えたりしている貴族に心当たりはないか?」
「貴族ねぇ……」
店主は何か含みを持った様子で呟き、それから店の奥隅の方をちらりと見やる。
その視線に釣られてユーサも振り向いた。
「あそこで飲んだくれてる奴がいるだろ」
店主の言葉の通り、酒がまだ半分くらい入ったグラスを掴んだまま机に突っ伏して酔い潰れている男に目を向ける。
どことなく他のNPCとは違う雰囲気がある。
着ているもののせいか。
男の服は少し薄汚れていて、みすぼらしくも見えるがよく見ると生地の材質は良さそうで、どことなく品があるように見えた。
「アイツは没落した貴族家のお坊ちゃんだ。数年前に当時の当主が不正を働いたとかでお家がお取り潰しにあって、以来度々うちに来てはああやって飲んだくれている」
貴族に関することならアイツに聞きな、と店主はぶっきらぼうに言った。
仕方なくユーサは席を立って男に近づく。
机に突っ伏して寝ているのではないかと思ったが、近づいてみると男が何かボソボソと独り言を言っているのが聞こえた。
「……たく、俺が一体何したって言うんだ。どいつもこいつもバカにしやがって……」
機嫌が悪そうな声色だった。
やけ酒というところか。
ただでさえ酔っ払いに声をかけるのは気が引けるのに、これでは面倒臭い予感しかしない。
「あの……」
意を決してユーサが声をかける。
男の独り言がぴたりと止まった。
しかし、返事はしない。
ぴたりと動きが止まり、息もしていなんじゃないかと思うほど静寂に包まれる。
「あのー……」
ユーサはもう一度声をかける。
間違いなく聞こえているはずだ。
今度も男は返事をしなかったが、代わりにこちらの様子を伺うように顔を僅かに上げた。
腕の隙間から僅かに目が合う。
途端に男はがばっと身体を起こし、止めていた呼吸をまとめて吐き出すかのように盛大に二酸化炭素を撒き散らした。
「何だよ、借金とりかと思ったじゃねぇか」
没落した、というのは本当のことらしい。
どうやら男は借金を抱えているらしく、それを取り立てに来たと思って狸寝入りをしたようだ。
借金がある身にも関わらず、酒場で泥酔とは碌な人間性ではなさそうだ。
「何だお前、このビーツアーム系のモンド様に何のようだ」
人違いだと確信した途端に太々しい態度である。
ユーサは面倒臭さから話を切り上げようかと迷ったが、サイドクエストのために我慢した。
これほど個性的なNPCならユーサの求めるサイドクエスト以外にも何か別のフラグが立つ可能性がある。
店主に話したのと同じような内容をモンドに話す。
彼は大きくため息を吐き、グラスに残っていた酒を煽った。
「お前よ、そういう話が聞きたいんなら礼儀ってもんがあるんじゃねぇのか?」
金でも欲しいのか、とユーサは思った。
しかし、モンドが空になったグラスをコツコツと叩くのでそうではないと悟る。
今度はユーサがため息を吐く。
半ば呆れていた。
「この人に同じ酒をもう一杯。支払いは俺持ちで」
店主に大声でそう伝える。
その状況を見越していたのか、酒が運ばれてくるのがやけに早い。
モンドは嬉しそうにグラスを手に持つとそれを一息に飲み干した。
「いやー、悪いな兄弟。それでなんだっけ? 魔法に関して困っている貴族だったか? 一人心当たりがあるぞ」
途端にモンドが饒舌になる。
その調子の良さに若干腹が立ったものの、ユーサは奢ってよかったと判断した。
彼の話はユーサの求めていた情報と関連性が高そうだったのだ。
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