魔王を倒した勇者だけど帰還して今度はVRMMOに挑みます

六山葵

文字の大きさ
36 / 43
杖と貴族

35

しおりを挟む
惜しいな。

飽きもせず、イノシシと戦うレイトを見てユーサは思った。

足さばきがいい。勝負勘も悪くない。
モンスターを目の前にしても物怖じぜず、勇気。

魔法の威力がもう少し高ければ、相当優秀な魔法使いになれるだろう。

魔法か……。

ラフクエで魔法を増やしていくには新しい杖か魔法書が必要だ。
それが手に入ればレイトも魔法使いとして強くなれるかもしれない。

だが、どこで手に入るのか。
それがわからなければどうしようもない。

戦うレイトを横目に見ながらユーサはフレンド画面を開いた。
シャインがログインしていないか期待したのだ。

しかし残念ながら彼はまだいない。魔法に特有の好奇心を示す彼ならば何かいい情報を知っているのではないかと考えたのだ。

リサはどうだ。……いや、彼女は今日もロトの町周辺でボスモンスターに関する情報を集めているのだろう。
ユーサが欲しいのはアストル周辺の情報だ。

ロトの町付近で手に入る杖や魔法書があっても取りに行く時間がはない。

セバスティから依頼されたのはレイトの護衛。
それを放置してここを離れれば、最悪クエストを放棄した扱いになるかもしれない。

「ついてきてくれ」

と言ってもレイトは従わないだろう。

せめて、この周辺に洞窟や古い砦のような、いわゆるダンジョンと呼ばれるようなものがあれば期待もできるのだが……。

ユーサは少し思案し、それからフレンド画面に表示されているもう一人の名前に目を滑らせる。

「試しに聞いてみるか」

出会ったのはついさっきだが、人の良さは十分に伝わった。
彼女なら、何か知っていれば教えてくれるだろう。

ユーサがアレンにメッセージを送ると、数分と待たずに返信が来た。

「アストル周辺のダンジョン? それならちょうどいいのがあるよ。一人で入るのは躊躇っていたから、もしよかったら一緒に行かない?」

そう書かれている。
彼女もサイドクエストの最中だったはずだが、そう尋ねると「すぐ合流できるよ」と返事が返ってくる。

報酬で杖や魔法書が手に入るかはわからないが、このままここでレイトの訓練を眺めているよりは可能性がありそうだ。

ユーサは了承し、平原で彼女が来るのを待った。

アレンはすぐにやってくる。
借りた馬車が停車するとレイトが怪訝そうな顔をする。

「これに乗るのか?」

そうだ、と頷きユーサが乗り込む。
その様子を見てレイトも諦めたのか、そそくさと馬車に乗った。

アレンが来るまでの間にレイトには説明を済ませてある。

「新しい魔法を覚えるためだ」

とユーサが説得すると、レイトは渋々ではあったが了承した。

「へぇ、お貴族様のクエストだったのか」

馬車を走らせながら事情を話すとアレンは興味深そうに耳を傾けた。

「それなら本当にちょうどよかった。入る前に少し調べてみたんだけど、魔法書や杖の類がある可能性は高いと思うよ」

アレンの言葉にレイトが身を乗り出す。

「本当か?」

彼自身も威力の低い自分の魔法に不安を抱えていたのだろう。
新しい魔法が手に入ると聞いて、子供らしく喜んだ表情を見せる。

「そういや、業者の馬車はどうだった? 見つかったか」

今度はユーサがアレンに尋ねる。
予想ではユーサが近くに居なければサイドクエストは信仰するはずだが、実際はどうだったのか聞いておきたかった。

「あー、確かにあの後馬車を見つけられたよ。聞いてた通り足跡を追ったら盗賊のアジトも見つけられた。でも……」

アレンが口を紡ぐ。
それから少し間を空けて、

「でも行商人は死んじゃってたんだ」

と言った。

ユーサは目を丸くする。
シャインの話では、行商人は掴まっていただけで無事だったはずだ。
その行商人とはビスタのことで、ユーサ自身も彼に会っている。

それが死んでいた? どういうことだ。

ユーサはアレンに詳しく話を聞いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり
ファンタジー
【書籍化!】第17回ファンタジー小説大賞『癒し系ほっこり賞』受賞作です。 (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『もふもふで始めるVRMMO生活 ~寄り道しながらマイペースに楽しみます~』です) ようやくこの日がやってきた。自由度が最高と噂されてたフルダイブ型VRMMOのサービス開始日だよ。 最初の種族選択でガチャをしたらびっくり。希少種のもふもふが当たったみたい。 この幸運に全力で乗っかって、マイペースにゲームを楽しもう! ……もぐもぐ。この世界、ご飯美味しすぎでは? *** ゲーム生活をのんびり楽しむ話。 バトルもありますが、基本はスローライフ。 主人公は羽のあるうさぎになって、愛嬌を振りまきながら、あっちへこっちへフラフラと、異世界のようなゲーム世界を満喫します。 カクヨム様でも公開しております。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

処理中です...