魔王を倒した勇者だけど帰還して今度はVRMMOに挑みます

六山葵

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双子の魔法使い

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振り向いたレイトの顔が驚きで強張る。

死んだと思っていた双子の兄が何食わぬ顔で現れたのだから当然だ。

レイトは最初、それを幻だと思った。

兄の姿を追いかけるばかりに見えてしまった、あるいは召喚の魔女がなんらかの魔法で見せてきた幻だと。

しかし、自分の肩に置かれたラフトの手からはしっかりと温かさが伝わってくる。

幻じゃない。本物だ。

レイトはそう感じた。

「兄さん……」

再び声が漏れる。
今度は虚像に向けてではない。目の前にいる兄に向けて、しっかりと言葉を発した。

ぼんやりと吸い込まれるように杖に惹かれていたあの感覚はすでに消え去っていた。

「正気に戻ったか。気をつけろ、あの杖は魔女の罠だ。魔法を求めるものに取り憑いて、正気を失わせる」

ラフトの言葉にレイトは視線を目の前の杖に戻した。

先程まではあんなにも輝いて見えた青い宝石が今は黒く澱んだものに見える。

「魔法を求めるものに取り憑く」……だから自分は惹かれたのか。

とレイトは納得した。

「お前に必要なのは、杖よりもこっちだ」

ラフトはそう言うと腰に差していた剣を引き抜いた。

刀身に複雑な呪文のような文字が彫られた立派な剣である。

レイトの記憶が確かなら、ラフトが今までそのような剣を腰に差していた覚えはない。

彼はずっと魔法一筋で、剣術も確かに優れているが魔法の方を優先していたはずだ。

一体どこでその剣を……。

それ以前に、死んだはずでは?

あの事故で死んだのではないのなら、今までどこにいたのか。

聞きたいことは山ほどあった。

しかし、今がそれを問いただす状況ではないことは流石のレイトにもわかる。

突然の兄弟の再会をユーサは少し離れたところから見ていた。

魔女を牽制し、ゴブリンを倒しつつではあったが大方の状況は掴んでいる。

レイトが「兄さん」と呟くのが聞こえた。
そのおかげで、乱入者が彼の兄であるラフトだという見当もついている。

「クエストが進行したな」

ユーサは呟いた。
「兄の方は事故で死んだが、その死体は誰も見ていない」というセバスティの話を聞いた時からユーサはずっと何かきな臭さを感じていた。

「死体が見つかっていない」というのは物語の鉄則では「生きている」と言っているのに等しい。

少なくとも、ラフトに関連する何かがサイドクエストにあるとユーサは考えていたが、情報が少ないので後回しにしていたのだ。

このタイミングでラフトが現れたのは正直想定外だったが、サイドクエストが進行した証拠でもある。

何がきっかけか、とかどこが分岐点だったか、なんていうのは後で考えればいい。

今は一先ず目の前のダンジョンボスを倒すのに集中するべきだ。

ユーサは剣を構えた。

召喚の魔女は今もなお笑みを浮かべ、余裕を装っている。

だが、ラフトが崩れた天井から飛び降りてきた時に彼女が舌打ちをするのをユーサは確かに聞いていた。

魔女にとっても、この状況は思い通りではない。

それだけでも有用な情報だ。

「冒険者殿!」

ラフトが叫ぶ。
ユーサと、入り口で奮闘するアレンに向けてだ。

「この魔女の呪文は私が封じる。その隙に本体を叩け!」

ラフトはそう言うと、すぐに自分の杖を掲げて魔法を唱え出す。

白い光が彼の周囲に集まっていき、その光が魔女を襲う。

光は魔女に纏わりつき、喉と口を押さえ込むように包んだ。

苦しそうに魔女がもがく。絶えず召喚され続けていたゴブリンたちの出現が止まる。

「お助けキャラかよ」

ユーサはその魔法の威力に素直に突っ込んでしまう。

先程まであんなに苦戦していた召喚の魔女の動きをラフトは簡単に封じてしまった。

この戦いにはラフトの存在が不可欠だった、と言っているかのような展開だ。

だが、まぁいい。

これで倒せるなら、それでいい。

ユーサが走り出す。

魔法さえ封じてしまえば相手はただの老婆である。

瞼を開き、大きな瞳でこちらを見つめる召喚の魔女にユーサは剣を振り上げた。
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