魔王を倒した勇者だけど帰還して今度はVRMMOに挑みます

六山葵

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双子の魔法使い

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「お前は何者だ」

ユーサが剣を構え、老婆に問う。
その後ろでレイトはなんとか立ち上がり、アレンも弓を構えた。

「召喚の魔女さ。ここでこうしてゴブリンを生み出している」

今更だが、彼女はプレイヤーではない。

ラフクエではプレイヤーの頭上にだけ名前が表示されるが、召喚の魔女にはそれがない。

そもそも、こんなところで怪しげな儀式を行なっているような奴がプレイヤーだったら不気味すぎる。

ダンジョンと化した廃墟の街の奥に、やたらと力を持ってそうな怪しい魔女がいる。

こんな状況なら少しでもRPGをプレイしたことのあるゲーマーなら察するだろう。

ダンジョンボスだ、と。

ユーサも、それからアレンもそうだった。

すぐにその可能性に思い至った。

ユーサは剣を振り上げて、魔女に突っ込む。
それを援護するようにアレンが弓を引いた。

「なんだよ、これ……」

ただ一人状況についていけなかったのはレイトである。

突然始まった戦闘に困惑し、魔女に対する恐怖心も拭えないまま、ただ茫然と戦いを見ていた。

魔女が不気味に笑い杖を振る。
召喚されたゴブリンがユーサを襲い、アレンは入り口から戻ってきたゴブリンたちの対応に追われている。

戦いは次第に乱戦になり、レイトはついに右も左もわからなくなった。

ユーサが何か叫んでいる。

「逃げろ」か、それとも「戦え」か。

耳はしっかりと聞こえているはずなのにその言葉の意味を理解できない。

混沌の中、不意にレイトの目が何かを捉えた。

戦うユーサのさらに奥。
女神像の傍らだ。

青い宝石がきらりと光っている。

杖だ。

混乱していたのにそれだけはわかった。
いや、混乱していたからこそそれしか目に入らなかった。

自然と足がそちらに向く。
まるで何かに取り憑かれたかのようにレイトはゆっくりと女神像に近づいていった。

「ユーサ、レイトが!」

異変を察知したアレンが叫ぶ。
次から次へと教会に乗り込んでくるゴブリンを足止めするのに手一杯でレイトを止めることができない。

それはユーサも同じだった。

召喚の魔女が次から次に生み出すゴブリンを片っ端から倒していく。
だが魔女の隙をつけるほどの余裕はなく、歩き出したレイトにも気を回せない。

どうする。
どうするべきだ。

ユーサは戦いながら己に問う。

杖の存在は片目の端に捉えていた。
レイトがそこに向かっていったのもわかっている。

これはサイドクエストの一環か?
それとと魔女の策略か。

召喚の魔女だってレイトの動きに気づいているはずだ。

それなのに止めようとしていない。
彼女もまたユーサの相手で手一杯なのか……それとも。

考えている間にレイトはもう杖の目の前まで迫っていた。

その指がゆっくりと伸びて、杖先に取り付けられた青い宝石に触れようとする。

「ダメだレイト、罠だ!」

ユーサが叫んだ。
だが、レイトには聞こえていない。

その指先が宝石に触れる瞬間だった。

「レイト、お前には必要のないものだ」

すぐ後ろで声が聞こえた。

何かに吸い込まれるように集中していたレイトの意識がハッと引き戻される。

聞き覚えのある声だった。
馴染み深く、すでに懐かしい。
聞くだけで涙が溢れそうになる声だ。

「兄さん……」

レイトが呟いた。

崩れた天井から颯爽と降りてくる何者かの影をユーサも捉えていた。

最初は魔女の召喚したゴブリンが天井からも襲ってきたのかと思ったが、そうではない。

その何者かはレイトのすぐ後ろに着地して、それから空に何か言葉をかける。

途端にレイトの動きが止まる。

人間だった。
杖を持っているので魔法使いか。
名前の表示がないからプレイヤーではない。

NPCだ。

乱入してきた人物が振り返る。
戦いの最中、ユーサはその顔を見た。

同じ顔だ。

そう思った。
ユーサとではない。レイトにそっくりな少年が、同じ色の目で真っ直ぐにユーサを見ていた。

それは、死んだはずのレイトの兄ラフトだった。
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