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竜と猫
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「……というのが私があなたを探してここに来るまでの流れです」
森の切り株に腰掛けて話すソーヤの言葉に私は欠伸を噛み殺しながら頷いて返す。
正直、話が長すぎてところどころしか聞いていなかったが、王都はやはり騒然としていたらしい。
どうやらすぐに攻め込んでくるようなことはなさそうだが、その弟の王子とやらには念の為警戒が必要か?
「本当は遠くからこっそり様子を伺うつもりだったんですが、まさかこういう運びになりとは」
ソーヤはそう言って立ち上がり、伸びをする。
「まぁ、でも安心しました。貴方は思っていたよりもいい人そうだ。人間に害を成そうと街を襲ったのなら、森の中で地竜に襲われている人間二人を助けたりはしないでしょう?」
マオが間に入ったから仕方がなく手を出しただけなのだが、ソーヤは都合よく勘違いしてくれたようだ。
私の方にも人間の街を滅ぼそうなんて考えは全くないので訂正はしないでおく。
「それはそうと、あの地竜……」
横たわった地竜の亡骸を横目に忠告しようとすると彼はそれを手で遮って、
「わかってます」
と言った。
「恐らく、誰かが地竜に興奮剤でも嗅がせたのでしょう」
地竜の様子がおかしかったことにソーヤも気づいていたらしい。
興奮剤とは人間の使う道具で、魔物や魔法生物の気性を荒くさせる効果があるらしい。
なるほど、と私は納得した。
ドラゴン族の中では凶暴性の高い地竜とはいえ、あの行動はおかしかった。
いくら変身しているからと言って同族の私に地竜が気付がないはずはない。
そして、同族だからこそ私に気付けば多少はたじろいでいたはずだ。
あの地竜が私を見ても同時なかったのは興奮剤とやらのせいらしい。
「可哀想なことをしました。人間の薬が無ければ、彼は死ぬことはなかったかもしれません」
そう言うと、ソーヤは魔法で地面に穴を掘りそっと地竜を寝かせて埋葬する。
「この件で人間を恨みますか?」
魔法を使いながらそんなことを聞く彼に私は首を振った。
人間のエゴで翻弄される同族に思うところがないわけではない。
しかし、私の古い知人にも人間の味に魅了され、人間を襲うことしか考えられなくなった愚かなドラゴンがいる。
彼が今も人間を襲っているのかは私の知るところではないが、つまりはお互い様ということだ。
「このことで私が人間に報復することはないと誓おう」
私がそう言うとソーヤはホッと胸を撫で下ろしたようだった。
「この地竜に興奮剤を与えたのは恐らくタクマ王子の手の者でしょう。そうなると、ユーマ様の言っていたことは本当だったようだ」
十分に気をつけてくださいね、とソーヤが告げる。
それから少し不思議そうな顔をして、
「そういえばなんで人間の姿なんですか?」
と尋ねた。
私は肩の上で気持ちよさそうに眠るマオを見ながら、彼に事情を説明してやる。
途端に、ソーヤは耐えきれずといった様子で笑い出した。
「ほ、本当に言っているんですか? あの炎龍が? 人間の中では守り神だったり、恐怖の象徴だったりするあの炎龍が、子守……ですか?」
一向に笑いが止まらない様子のソーヤに段々と腹が立つ。
馬鹿にしているわけではなさそうだが、その意外性が彼のツボに入ったらしい。
「似合わねぇ」
と言葉まで崩れ始めた彼に私は右手に魔力を込めて突き出した。
「地竜のことで人間に報復はしないが、この件でお前個人に報復することはあり得る」
そう言うとソーヤは急に真面目な顔になる。
「いえ、笑ってませんが」
とでも言いたげな白々しい顔をして
「話は変わりますが」
と取り繕っている。
彼が流れを変えるために切り出したのは森に潜んでいる弟王子の配下についてだった。
「これは人間同士の話ですので、どうか手は出さぬようにお願いします。そちらに迷惑はかけないように気をつけますので」
真面目そうにそう言うソーヤに、私はなんだか釈然としないまま「わかった」と返答したのだった。
森の切り株に腰掛けて話すソーヤの言葉に私は欠伸を噛み殺しながら頷いて返す。
正直、話が長すぎてところどころしか聞いていなかったが、王都はやはり騒然としていたらしい。
どうやらすぐに攻め込んでくるようなことはなさそうだが、その弟の王子とやらには念の為警戒が必要か?
「本当は遠くからこっそり様子を伺うつもりだったんですが、まさかこういう運びになりとは」
ソーヤはそう言って立ち上がり、伸びをする。
「まぁ、でも安心しました。貴方は思っていたよりもいい人そうだ。人間に害を成そうと街を襲ったのなら、森の中で地竜に襲われている人間二人を助けたりはしないでしょう?」
マオが間に入ったから仕方がなく手を出しただけなのだが、ソーヤは都合よく勘違いしてくれたようだ。
私の方にも人間の街を滅ぼそうなんて考えは全くないので訂正はしないでおく。
「それはそうと、あの地竜……」
横たわった地竜の亡骸を横目に忠告しようとすると彼はそれを手で遮って、
「わかってます」
と言った。
「恐らく、誰かが地竜に興奮剤でも嗅がせたのでしょう」
地竜の様子がおかしかったことにソーヤも気づいていたらしい。
興奮剤とは人間の使う道具で、魔物や魔法生物の気性を荒くさせる効果があるらしい。
なるほど、と私は納得した。
ドラゴン族の中では凶暴性の高い地竜とはいえ、あの行動はおかしかった。
いくら変身しているからと言って同族の私に地竜が気付がないはずはない。
そして、同族だからこそ私に気付けば多少はたじろいでいたはずだ。
あの地竜が私を見ても同時なかったのは興奮剤とやらのせいらしい。
「可哀想なことをしました。人間の薬が無ければ、彼は死ぬことはなかったかもしれません」
そう言うと、ソーヤは魔法で地面に穴を掘りそっと地竜を寝かせて埋葬する。
「この件で人間を恨みますか?」
魔法を使いながらそんなことを聞く彼に私は首を振った。
人間のエゴで翻弄される同族に思うところがないわけではない。
しかし、私の古い知人にも人間の味に魅了され、人間を襲うことしか考えられなくなった愚かなドラゴンがいる。
彼が今も人間を襲っているのかは私の知るところではないが、つまりはお互い様ということだ。
「このことで私が人間に報復することはないと誓おう」
私がそう言うとソーヤはホッと胸を撫で下ろしたようだった。
「この地竜に興奮剤を与えたのは恐らくタクマ王子の手の者でしょう。そうなると、ユーマ様の言っていたことは本当だったようだ」
十分に気をつけてくださいね、とソーヤが告げる。
それから少し不思議そうな顔をして、
「そういえばなんで人間の姿なんですか?」
と尋ねた。
私は肩の上で気持ちよさそうに眠るマオを見ながら、彼に事情を説明してやる。
途端に、ソーヤは耐えきれずといった様子で笑い出した。
「ほ、本当に言っているんですか? あの炎龍が? 人間の中では守り神だったり、恐怖の象徴だったりするあの炎龍が、子守……ですか?」
一向に笑いが止まらない様子のソーヤに段々と腹が立つ。
馬鹿にしているわけではなさそうだが、その意外性が彼のツボに入ったらしい。
「似合わねぇ」
と言葉まで崩れ始めた彼に私は右手に魔力を込めて突き出した。
「地竜のことで人間に報復はしないが、この件でお前個人に報復することはあり得る」
そう言うとソーヤは急に真面目な顔になる。
「いえ、笑ってませんが」
とでも言いたげな白々しい顔をして
「話は変わりますが」
と取り繕っている。
彼が流れを変えるために切り出したのは森に潜んでいる弟王子の配下についてだった。
「これは人間同士の話ですので、どうか手は出さぬようにお願いします。そちらに迷惑はかけないように気をつけますので」
真面目そうにそう言うソーヤに、私はなんだか釈然としないまま「わかった」と返答したのだった。
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