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故郷からの使者編

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レオンが試練の間を突破したことは、その次の日にシェイドの口から国民へと伝えられた。

ただでさえ、賢者の一人を救い連れ帰ったレオンは有名になっている。そのレオンが新たな賢者になったことで、街中がお祭り騒ぎの事態になっていた。


「三日後にはランシャバド様の退任の儀とレオン様の就任の儀が執り行われます。それまではどうか無闇に人前に姿を晒しませぬよう」


女王シェイドに与えられた賢者ようの私室でレオンはリュウの話を聞いていた。

女王シェイドへ故郷に帰りたいという話しをしたくても、中々会う機会がないレオンだったが就任の儀の前に一度賢者と女王と顔を合わせる機会があるという。

話をするならそこが最後のチャンスかと、レオンは考えていた。

ただ、それとは他に気になることもある。


「あの……リュウ。その『レオン様』ってやつやめてくれない?」


女王シェイドが国民にレオンのことを伝えた後、リュウの呼び名が変わったのである。

「レオンさん」と呼ばれるのでさえ慣れていなかったのに「レオン様」と呼ばれてはなんだか歯痒くて仕方がない。

しかし、リュウは大真面目な顔で


「いけません。国民に立場が公開された今、レオン様は賢者の一人として当然の扱われ方をするべきなのです」

と、様付けを決してやめることはなかった。

レオンがため息混じりの苦笑いでリュウの入れた紅茶を飲んでいると、部屋の扉が慌ただしく開かれた。

入ってきたのは両手に紙の書類をいっぱいに抱えたナシェンであった。

「ナシェン!もっと静かにしろよ。それに今足で開けたな?なんではしたない真似をするんだ君は」

叱りつけようとするリュウを無視してナシェンはレオンの前に資料類をバンッとおく。

そして息も絶え絶えに報告する。


「レオンさ……ま!今王城の医務室に怪我人が運び込まれて来ましたよ!それも他国の人間です!」


ナシェンが慌てているのはその運び込まれた怪我人というのが、どうもレオンの国の人間だからだった。

大怪我をして、気を失いうなされながらレオンの名を呼んだらしい。

さらには、その懐がレオンへ宛てた手紙が入っていたのだという。


女王シェイドは即座にレオンを呼びつけ、その話しを聞いたナシェンが急いで飛んできたのである。


「それで、その怪我人の名前は?どんな見た目だった?」


リュウがナシェンに問いかけるが、急ぎ走ってきたナシェンはそれ以上のことは何も知らなかった。


「このバカッ!伝令ならしっかりと情報を全部聞いてから来い!」


リュウは怒るが、ナシェンはあまり悪びれていない。


「だってさー、私レオンさ……まを連れ戻しにきたんだと思って気が動転しちゃって……」


「その『レオンさ……ま』もやめろ、レオン様だ。レオン様!」


二人はいつものように争い始めるが、レオンはすぐに二人の間に仲裁に入った。

本当にレオンの国の人間がここに来たとして、その人物がレオン宛の手紙を持っているとすれば、考えられるのはレオンが生きていることを知る誰かである。

表向きは討伐されたことになっているレオンがアルガンドに亡命したことを知っているのはヒースクリフやそれに協力するレオンの仲間たちしかあり得ないことだからだ。

普通ならば、レオンは喜ぶところだろう。
知らせが来たということは、帰れる準備が整ったかそれに類する何かがあったかだろうから。

しかし、その来訪者が大怪我を負ったというのが気になる。

ナシェンが来訪者の情報を持っていない以上、今は女王シェイドに呼ばれた通りにすぐに王城の医務室に向かったほうがいいだろう。

ナシェンの案内の元、レオンは部屋を飛びだして王城に向かい走るのだった。
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