71 / 330
懐かしの故郷編
188
しおりを挟むマーク達との再会を果たしたレオンはその場で王都のさらに詳しい状況を聞くことになる。
ヒースクリフは以前幽閉されたまま、国王続投を宣言した現国王のアドルフは何故かめっきり姿を見せなくなった。
マーク達の読みでは既にアーサーに暗殺されているか、ヒースクリフと同じように幽閉されていると思われる。
暴走したアーサーにより、事実上完全に王都が乗っ取られたことになる。
「それでも国民のほとんどは異変に気づいてない。アーサーは多分、一ヶ月半後の戴冠の儀までに邪魔な奴らを排除するつもりだ」
オードの言葉を聞いて部屋の中に深刻な空気が流れる。
逃げ込んだヒースクリフ派の魔法使い達は少なく、アーサー派の魔法使いに太刀打ちできない。
レオンと共にやってきたガジン達も、予想以上の状況の悪さに何も言えないでいた。
そんな中、レオンだけは違った。
「王宮に侵入する方法はある?一先ずヒースクリフを助け出さないと」
決して諦めることなく、現状を打破する方法を考えていた。
「おい、レオン。無謀すぎるぜ。幸い退任の儀とやらまでに一ヶ月半もあるんだろ?こうなったらアルガンドにさらなる援助を頼もう」
カールがレオンを引き止める。王都へ入り込む時と同じく、レオンが焦りからことを急いでいるのだと思ったのだ。
しかし、今回は違う。
「ダメだよ。国王が暗殺された可能性があるなら、ヒースクリフだって国民に知らせずに殺されてしまうかもしれない。時間はないよ」
確かにレオンは急いでいた、しかし頭の中は冷静だった。
国王アドルフの安否が分からず、知らず知らずのうちに殺されてしまっている可能性がある今、アーサーがヒースクリフを生かしている保証はないのだ。
王族の処刑には時間がかかる。国王の他に力を持つ貴族の賛成が必要だ。
その力を持つ貴族がヒースクリフ派にも少なからずいるため、表立って処刑されるようなことがあればオルセン侯爵の耳に入らないわけがない。
しかし、国の実権を握ったに等しい今のアーサーならば国民にも貴族にも知らせずにヒースクリフを暗殺することはたやすい。
そして、そうなってしまってはもう遅いのだ。
「それに、アルガンドにこれ以上助けを求められない。下手をしたら戦争になってしまうかもしれない」
レオンがもう一つ気にしているのはアルガンドのことだった。女王シェイドはレオンのために賢者を送り出し、助けてくれた。
しかし、少人数だったからレオンは受け入れたのだ。
これ以上多くのアルガンドの魔法使いが入り込めば、それはもう国対国の戦争になってしまう。
当然アルガンドにも死傷者は出るだろう。そこまでお世話になるわけにはいかなかった。
「しかし、作戦はあるのか?無闇に動いても状況は好転しないぞ」
話を聞いていたガジンが割り込む。レオンは頷いた。
「王宮にはいざという時に逃げるための隠し通路があったはず。暗闇に紛れて、少数精鋭で潜入すればヒースクリフ一人くらいなら逃がせると思う」
レオンは五年前に王都が襲撃された時にソージャ達が使用した王宮への隠し通路のことを思い出していた。
その通路はヒースクリフが捕えられている王宮の地下牢に繋がっているはずだ。
「行くのは僕とマーク達、それとソージャさんかナザイルさんだけで十分です。ガジンさん達はここで待機をしていてください」
レオンの作戦を聞いてガジンは頷いた。
いくらレオンがガジン達を信頼しているからといっても王宮につながる隠し通路の場所を他国の人間に教えることはできないだろう。
ガジンはレオンの思いを汲み取ったのである。
レオンが必死に作戦を練る姿を見て、いつのまにか沈みがちだったマーク達の顔に明るさが戻っていた。
決して諦めないレオンを見てマーク達は思い出していたのだ。
学院時代、魔術に長けていたレオンに引っ張られるように様々な課題をこなしてきた。
どんなに難しい課題でもレオンは決して諦めず、いつも前向きだった。
数年ぶりにあったとはいえ、三人の目にはいつもと変わらないレオン・ハートフィリアが写っていたのである。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
7,339
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。