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赤の悪魔編
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レオンが一度姿を隠したのは、ディーレインを打ち倒すための魔法を構築する時間を稼ぐためだった。
しかし、単純に姿を消しただけではディーレインにいずれ気付かれてしまう。
そこでレオンが頼ったのは四人の精霊達である。
アルガンドの試練の間でレオンを気にいり、その身に宿った彼らはレオンの代わりに体の中の悪魔の魂を抑え込む役割を担っていた。
レオンは一度その役割を解き、再び自分で悪魔達を抑え込む。そして、解き放たれた精霊達がディーレインの意識がレオンに向かわないように極小の魔法で邪魔をしたのだ。
「ありがとう。とても助かったよ」
上空でディーレインが未だに魔法を構築しているというのにレオンはそんなことを気にしていないかのように精霊達に礼を言った。
「いいのです。私たちはあなたを助けるためにいます。……ただ、気をつけてください。あの者、何かよからぬことを企んでいる気配がします」
水の精霊アーティアはレオンの体に戻る前にそう忠告する。
レオンはそれに無言で頷き、上空にいるディーレインを見上げた。
「鬼ごっこの次はかくれんぼ……遊びは終わったのか?」
ようやく出てきたレオンをバカにしたようにディーレインは笑っている。
彼は先程の戦いで自分が負けることはないと確信したのだ。
それ故に油断とも取れる余裕の笑みを浮かべているのである。
しかし、レオンが魔法を構築する時間は十分にあった。
「まずは、あの危ない魔力の弾を消さないとな」
レオンは呟き、手を軽く振る。
すると、それまでディーレインが右手に集めていた黒い魔力の塊が一瞬にして消え去った。
「なっ……」
予想すらしていなかったレオンの行動と自分の魔法が消えたことにより、一瞬のうちにディーレインから笑みが消える。
「何をした? なぜ俺の魔法が消えた」
ディーレインは困惑する。
魔法をぶつけて相殺したわけでも、魔法ごとどこかに消えたわけでもない。
文字通り消えたのだ。
攻撃された感覚は微塵もなかった。
「次に君の戦意を削ぐ。そして、そのあとじっくりと話を聞かせてもらう」
レオンは再び手を振る。
ディーレインは即座に構えた。
レオンの使っている魔法の正体はディーレインにはわからないが、どんな魔法であれ防げないということはないはず。
ディーレインは再び身体強化で防御力を上げた後に、自身を囲むように魔力の防壁を作った。
何が起こったのかディーレインにはわからなかった。
わかるのは確実に自分がダメージを負ったということのみ。
それも、飛んでいることすらままならないほどの大きなダメージをだ。
張ったはずの魔力の防壁は魔力弾と同じように消え、防御の要であった身体能力向上の魔法も全く意味をなさなかった。
飛ぶために作られた魔力の羽ですら消え失せ、ディーレインは地面に落ちたのだ。
這いつくばり、顔を上げるディーレインの前にレオンが立っている。
先程とは真逆の光景。
そこまで打ちのめされてもまだ、ディーレインは何が起こったか理解できずにいた。
「種明かしだ。今ので君の魔力はほぼ枯渇しただろう。大人しく捕まってくれ」
レオンの言葉と共に極大の魔法がディーレインの前に姿を表す。
今の今まで全く姿が見えず、その魔力も感じなかったのに一度見えればなぜ今まで気づかなかったのかわからないほど強大な魔法だった。
白い龍がレオンの背後の空を飛んでいるのである。
一眼見て、ディーレインにはそれがレオンの魔法なのだと分かった。
レオンはその龍を自身の魔力の八割を使って生み出した。
残りの二割は悪魔の魂を抑え込むのに使っているため、実質今のレオンの全てを注ぎ込んだと言ってもいいだろう。
その魔法はレオンにとっても奥の手。
構築するのにやたらと時間がかかる代わりに、レオンのイメージを細部まで具現化した化け物である。
しかし、単純に姿を消しただけではディーレインにいずれ気付かれてしまう。
そこでレオンが頼ったのは四人の精霊達である。
アルガンドの試練の間でレオンを気にいり、その身に宿った彼らはレオンの代わりに体の中の悪魔の魂を抑え込む役割を担っていた。
レオンは一度その役割を解き、再び自分で悪魔達を抑え込む。そして、解き放たれた精霊達がディーレインの意識がレオンに向かわないように極小の魔法で邪魔をしたのだ。
「ありがとう。とても助かったよ」
上空でディーレインが未だに魔法を構築しているというのにレオンはそんなことを気にしていないかのように精霊達に礼を言った。
「いいのです。私たちはあなたを助けるためにいます。……ただ、気をつけてください。あの者、何かよからぬことを企んでいる気配がします」
水の精霊アーティアはレオンの体に戻る前にそう忠告する。
レオンはそれに無言で頷き、上空にいるディーレインを見上げた。
「鬼ごっこの次はかくれんぼ……遊びは終わったのか?」
ようやく出てきたレオンをバカにしたようにディーレインは笑っている。
彼は先程の戦いで自分が負けることはないと確信したのだ。
それ故に油断とも取れる余裕の笑みを浮かべているのである。
しかし、レオンが魔法を構築する時間は十分にあった。
「まずは、あの危ない魔力の弾を消さないとな」
レオンは呟き、手を軽く振る。
すると、それまでディーレインが右手に集めていた黒い魔力の塊が一瞬にして消え去った。
「なっ……」
予想すらしていなかったレオンの行動と自分の魔法が消えたことにより、一瞬のうちにディーレインから笑みが消える。
「何をした? なぜ俺の魔法が消えた」
ディーレインは困惑する。
魔法をぶつけて相殺したわけでも、魔法ごとどこかに消えたわけでもない。
文字通り消えたのだ。
攻撃された感覚は微塵もなかった。
「次に君の戦意を削ぐ。そして、そのあとじっくりと話を聞かせてもらう」
レオンは再び手を振る。
ディーレインは即座に構えた。
レオンの使っている魔法の正体はディーレインにはわからないが、どんな魔法であれ防げないということはないはず。
ディーレインは再び身体強化で防御力を上げた後に、自身を囲むように魔力の防壁を作った。
何が起こったのかディーレインにはわからなかった。
わかるのは確実に自分がダメージを負ったということのみ。
それも、飛んでいることすらままならないほどの大きなダメージをだ。
張ったはずの魔力の防壁は魔力弾と同じように消え、防御の要であった身体能力向上の魔法も全く意味をなさなかった。
飛ぶために作られた魔力の羽ですら消え失せ、ディーレインは地面に落ちたのだ。
這いつくばり、顔を上げるディーレインの前にレオンが立っている。
先程とは真逆の光景。
そこまで打ちのめされてもまだ、ディーレインは何が起こったか理解できずにいた。
「種明かしだ。今ので君の魔力はほぼ枯渇しただろう。大人しく捕まってくれ」
レオンの言葉と共に極大の魔法がディーレインの前に姿を表す。
今の今まで全く姿が見えず、その魔力も感じなかったのに一度見えればなぜ今まで気づかなかったのかわからないほど強大な魔法だった。
白い龍がレオンの背後の空を飛んでいるのである。
一眼見て、ディーレインにはそれがレオンの魔法なのだと分かった。
レオンはその龍を自身の魔力の八割を使って生み出した。
残りの二割は悪魔の魂を抑え込むのに使っているため、実質今のレオンの全てを注ぎ込んだと言ってもいいだろう。
その魔法はレオンにとっても奥の手。
構築するのにやたらと時間がかかる代わりに、レオンのイメージを細部まで具現化した化け物である。
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