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魔法学院生徒受入編
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しおりを挟むルイズに連れて行かれた荷馬車の待機場所でレオンが目にしたのは一台分の荷馬車にめいいっぱいに積み込まれた魔道具の数々であった。
「これは?」
レオンは手近なサイズの魔道具を手に取り、乱雑に積まれた魔道具の品々に目を配りながらルイズに訪ねる。
「全国各地で捕まえた盗賊団の押収品だそうよ。あなたが捕まえた山賊達の物も含まれてるわ」
魔道具のほとんどは見覚えのない物だったが、確かにいくつか見た覚えのある物も混じっていた。
特に丸い円盤状をした見た目からでは使い方のわからない魔道具はよく覚えている。
山賊達の盗品のリストから出て来た物だとレオンは記憶していた。
「全国各地で捕えた物を王都に集めたってことかい? 持ち主には返さないの?」
レオンは魔道具を壊さないように静かに馬車に戻してから不思議そうに言った。
通常であれば盗まれた物は当然元の持ち主を探して返す手筈である。
盗賊団を捕えた土地で被害に遭った家々を訪ねてまわるはずなのに、それを一つの馬車に積み込んで王都から旅出た学生達と共に各地を回っているというのはおかしな話だった。
レオンのその質問は想定内だったのか、ルイズは特に困った様子もなくスラスラと説明する。
その説明は初めてこの魔道具の山を目にした時、ルイズが受けた物と同じだった。
「それが、もう既に各方々で持ち主がいないかは探したのよ……けど、おかしなことにこの魔道具に関しては持ち主が出てこなかったの」
ルイズの説明では、各地で盗賊団が捕えられた時に一度この盗品の魔道具の持ち主を探しているらしい。
美術品や他の豪華な盗品の類は持ち主が見つかったのに対し、魔道具はそのほとんどが持ち主不明だったというのだ。
捕まえた盗賊達にこの魔道具の所在を問い詰めても、頑なに口を割らないという。
用途不明、持ち主不在の魔道具をそのまま放置しておくわけにも行かず、仕方なく一度王都に集めたらしいのだが、全国で持ち主を探すために丁度各地を回ることになった学生達の馬車と同行することになったらしい。
「じゃあ、北と東の街では持ち主は出てこなかったんだね」
「ええ、一応『自分の物』だって主張する人は何人かいたんだけど、お金に目の眩んだ嘘つきだったわ。魔道具の使い方すら知らなかったもの」
ルイズはため息混じりに語る。
魔道具はその性質上、高価で取引される物が多い。
平民の中にはどうにか手に入れて売り払ってしまおうと考える者も少なくなかったようだ。
しかし、馬車の中に積まれた魔道具は見たところ作られて日が浅く、レオンがそれまで手にして来たどの魔道具とも形が違う。
当然起動してみなければ使用用途はレオンにもわからず、魔法知識の浅い人間にはわかるはずもなかった。
使用方法がわかるか否かは持ち主の正当性を証明するのにうってつけというわけだ。
「クルザナシュにこの魔道具の持ち主がいるとは思えないけど、一応聞いてみるか」
現在までにクルザナシュ内部で盗難にあったという情報はレオンの耳には届いていない。
盗まれれば普通は被害届を出すはずなので、クルザナシュにこの魔道具の持ち主がいる可能性は薄かった。
「そうね、一応聞いてみてくれる? 道中の村や街でも聞いてみたし、この先立ち寄るところでも聞く予定だけど、全部の魔道具の持ち主が見つかるとは思えないわね」
魔道具は本当に全国各地から集められている。
クルザナシュで持ち主が見つからなければ残るのは後西の街とそこに立ち寄るまでの村々だけである。
全国で応酬された品が西の地域だけで全て持ち主が見つかるとは考えづらい。
盗賊から応酬された持ち主不在の魔道具は謎に包まれたままである。
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