藍色バース

弓川ルツ

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序章

降臨-4

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 お盆も過ぎた夏の終わりの夕刻。日差しは多少衰えても、暑さは全く弱まる気配を見せない。どこかすぐ近くでツクツクボウシが鳴いている。
 デパートから帰ってきたアクアは、買い物の荷物を凛也に任せ、車から降りると、玄関へ向かった。途中、ふと立ち止まる。
  玄関のすぐ手前の花壇に植えられた風船葛が目に入った。アクアは自らの手で植えた風船葛の実に手を伸ばす。実をちぎり取るつもりだったのが思い留まった。
 風船葛はアクアが大好きな植物だ。花は白くて小さく目立たないが、良く見ると、美しいと思う。けれど主役は、何とも愛らしく膨らんだ親指くらいの大きさの実だ。アクアの妊娠が判明した時期に種を植えたのだが、今は支柱に戯れるように絡みつき、生い茂り、鈴生りになった実をつけている。
 いつか、アクアの赤ちゃんに、風船葛の実をポンと叩いて割ってみせて、遊んでやるつもりだった。
  アクアは、既に茶色く枯れた実を選んで摘み取った。手で潰すと、乾燥した皮は音を立てて粉々になり、中から三粒の種が出て来る。
 種には、黒地に大きなハート型の白い模様が入っていた。とても可愛らしい外見だ。アクアは種をしばらく指先で弄んだ後、地面に落とした。
 買い物袋を手に提げて、凛也がアクアの背後を通り過ぎて行った。玄関の前に立ち、引き戸を開けると、アクアを促すかのように振り返る。
 アクアは凛也と共に家の中へ入ると、寝室のある二階へと階段を上がろうとした。その時、騒々しい足音と共に、キッチンから子供たちが飛び出してきた。
 近所に暮らす凛也の妹、秋歩の二人の娘たちだ。七才の春菜と五才の優花。
 突進するように走り寄ってきた春菜に、アクアはいきなりお腹を触られた。
「赤ちゃん、男の子? 女の子? お母さんがそろそろ分かるかも、って言ってた。あたし絶対、女の子がいいなあ」
 アクアはにっこり微笑んだ。上手に微笑むことができたと思う。首を傾げて見せる。
 赤ちゃんはね、カエルさんのお顔だよって言ったら、春ちゃんびっくりするかな?
「ねえ、どっちなの?」
 春菜が、焦れたように問いただす。 
「春菜、優花、何やってるの? スイカ、もう食べないの? 早くこっちへ来なさい!」
 キッチンから同居の義母の声が届いた。
凛也が話したから、義母は事情を知っている。ただし、本当の事は打ち明けていない。二人で相談して、赤ちゃんがお腹の中で既に亡くなっている、と報告したのだ。
 春菜と優花が台所に駆け戻っていく。
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