6 / 14
第一章 類稀なる高校――私立御影学院
生徒に毎日真面目に電話
しおりを挟む
「じゃあ、夜極先輩は? 今日は学校来てた?」
「……うん。いたよ。元気そうだった」
いつも訊かれる質問は同じなので、雛菜はこくりと頷いた。
夜極の顔立ちは強面で、女の子受けするようには思えないのだが……。
彼のファンも、校内には相当数いるらしい。
雛菜も、夜極が可愛らしい女子生徒と歩いているのを何度か見かけた。
校内でいかがわしい行為に及(およ)んでいたという騒動(そうどう)もあったそうで……、雛菜は辟易(へきえき)としていた。
(……学校でなんて……。……最低……)
その光景をつい想像してしまって、雛菜はため息をついた。
表情を落とした雛菜の顔を覗き込んで、女子生徒の一人が呟いた。
「雛菜ちゃん先生は可愛くて羨ましいなぁ。今度、お化粧のやり方教えてよ」
彼女にずいずい迫られて、雛菜は目を瞬いた。
小首を傾げなら、その女の子に答える。
「お化粧? いいけど……。でも、先生もちゃんとしたやり方はこの学校に来て教わったのよ。中学生や高校生の頃は日焼け止めくらいで、お化粧なんてほとんどしなかったわ」
「それは、雛菜ちゃん先生が美人さんだからぁー。それに、おっぱいもおっきいし!」
ふっくらと盛り上がった自分の胸元を少女達にじっと見られて、雛菜は慌てて彼女達を諭した。
「お、女同士でもそんなに見ちゃ駄目。見るハラって言ってね、今は問題になってるんだから……!」
「だけど、憧れちゃうもん。雛菜ちゃん先生、お胸は何カップくらいあるの? 十代の時って、何食べてた? 胸筋を鍛える運動とかしてたの――?」
無邪気な、でも真剣そのものの質問を女子生徒達から受けて、雛菜は困ってしまった。
雛菜のバストサイズは確かにかなり大きめなのだが……、やっぱり遺伝要因が大きいのだと思う。
母親も、そういえば祖母も、胸が大きかった。
雛菜も特にこれといった何かをしたわけではないけれど、いつの間にかこんなに大きく育っていたのだ。
特進クラスの生徒達に知られるとまたからかわれそうなので、どんなに陽気の日でも、ジャケットだけは絶対に脱がないようにしているのだが……。
(……もしかして、校長はあたしの胸も見て採用したのかなぁ)
そう思い当たっても……、……もう遅かった。
でも、こうして慕(した)ってくれる女子生徒達は、皆素直で可愛かった。
無心に懐(なつ)いてくれる彼女達を裏切りたくないし、何より、一度やると決めたことを中途半端に投げ出したくはない。
それに、特進クラスの生徒達のためにだって……、雛菜にもできることはきっとあるはずだ。
(……まだ教師になったばかりなのに、簡単に特進クラスの生徒のことを決めつけちゃ駄目よ。もっと前向きに考えなくちゃ……)
ついため息を吐いた内心で、雛菜は何とか自分にそう言い聞かせたのだった。
♢ 〇 ♢
授業が終わると、雛菜はいつものように〈特別生徒指導室〉で一人日報をまとめていた。
この特別生徒指導室は、読んで字のごとく特進クラスに所属する生徒の指導のために用意された部屋だ。
応接室としての広さは充分以上にあり、フルフラットになって仮眠もできる高級ソファにデスク、ウォーターサーバーやティーセット、個人用のハイスペックデバイスまでもが複数揃えられている。
設備の豪華さに気が引けて、あまり落ち着かないけれど……。
使えと言われれば、使わざるを得ない。
今この部屋を使うのは、雛菜だけだった。
パソコンで日報を校長とのシェアファイルにアップすると、雛菜は放課後のルーチンになっている作業に取りかかった。
学校を休んだ生徒達に電話をして、今日の様子を訊くのだ。
「――あ、伊集院君? そう、葉月です。今日学校来なかったから、どうしてたかなって。伊集院君は一人暮らしだし、体調を崩したりしてないか心配してたのよ」
何とか雛菜が心を込めて言うと、電話口の向こうから機械的な騒がしい音楽が聞こえてくる。
……カラオケにいるのだろうか?
どうやら、彼の隣で、女の子が歌っているみたいだ。
愛らしい歌声が、伊集院の喋り声に混じって聞こえている。
---
ここまで読んでいただいてありがとうございました!
そして、お気に入りやいいねやしおりをくださった方、本当にありがとうございます!
凄く嬉しいです。
嬉しい反応を頂けましたら今後の活動の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします。
もしよろしければ、この後もどうぞ読んでみてください!
「……うん。いたよ。元気そうだった」
いつも訊かれる質問は同じなので、雛菜はこくりと頷いた。
夜極の顔立ちは強面で、女の子受けするようには思えないのだが……。
彼のファンも、校内には相当数いるらしい。
雛菜も、夜極が可愛らしい女子生徒と歩いているのを何度か見かけた。
校内でいかがわしい行為に及(およ)んでいたという騒動(そうどう)もあったそうで……、雛菜は辟易(へきえき)としていた。
(……学校でなんて……。……最低……)
その光景をつい想像してしまって、雛菜はため息をついた。
表情を落とした雛菜の顔を覗き込んで、女子生徒の一人が呟いた。
「雛菜ちゃん先生は可愛くて羨ましいなぁ。今度、お化粧のやり方教えてよ」
彼女にずいずい迫られて、雛菜は目を瞬いた。
小首を傾げなら、その女の子に答える。
「お化粧? いいけど……。でも、先生もちゃんとしたやり方はこの学校に来て教わったのよ。中学生や高校生の頃は日焼け止めくらいで、お化粧なんてほとんどしなかったわ」
「それは、雛菜ちゃん先生が美人さんだからぁー。それに、おっぱいもおっきいし!」
ふっくらと盛り上がった自分の胸元を少女達にじっと見られて、雛菜は慌てて彼女達を諭した。
「お、女同士でもそんなに見ちゃ駄目。見るハラって言ってね、今は問題になってるんだから……!」
「だけど、憧れちゃうもん。雛菜ちゃん先生、お胸は何カップくらいあるの? 十代の時って、何食べてた? 胸筋を鍛える運動とかしてたの――?」
無邪気な、でも真剣そのものの質問を女子生徒達から受けて、雛菜は困ってしまった。
雛菜のバストサイズは確かにかなり大きめなのだが……、やっぱり遺伝要因が大きいのだと思う。
母親も、そういえば祖母も、胸が大きかった。
雛菜も特にこれといった何かをしたわけではないけれど、いつの間にかこんなに大きく育っていたのだ。
特進クラスの生徒達に知られるとまたからかわれそうなので、どんなに陽気の日でも、ジャケットだけは絶対に脱がないようにしているのだが……。
(……もしかして、校長はあたしの胸も見て採用したのかなぁ)
そう思い当たっても……、……もう遅かった。
でも、こうして慕(した)ってくれる女子生徒達は、皆素直で可愛かった。
無心に懐(なつ)いてくれる彼女達を裏切りたくないし、何より、一度やると決めたことを中途半端に投げ出したくはない。
それに、特進クラスの生徒達のためにだって……、雛菜にもできることはきっとあるはずだ。
(……まだ教師になったばかりなのに、簡単に特進クラスの生徒のことを決めつけちゃ駄目よ。もっと前向きに考えなくちゃ……)
ついため息を吐いた内心で、雛菜は何とか自分にそう言い聞かせたのだった。
♢ 〇 ♢
授業が終わると、雛菜はいつものように〈特別生徒指導室〉で一人日報をまとめていた。
この特別生徒指導室は、読んで字のごとく特進クラスに所属する生徒の指導のために用意された部屋だ。
応接室としての広さは充分以上にあり、フルフラットになって仮眠もできる高級ソファにデスク、ウォーターサーバーやティーセット、個人用のハイスペックデバイスまでもが複数揃えられている。
設備の豪華さに気が引けて、あまり落ち着かないけれど……。
使えと言われれば、使わざるを得ない。
今この部屋を使うのは、雛菜だけだった。
パソコンで日報を校長とのシェアファイルにアップすると、雛菜は放課後のルーチンになっている作業に取りかかった。
学校を休んだ生徒達に電話をして、今日の様子を訊くのだ。
「――あ、伊集院君? そう、葉月です。今日学校来なかったから、どうしてたかなって。伊集院君は一人暮らしだし、体調を崩したりしてないか心配してたのよ」
何とか雛菜が心を込めて言うと、電話口の向こうから機械的な騒がしい音楽が聞こえてくる。
……カラオケにいるのだろうか?
どうやら、彼の隣で、女の子が歌っているみたいだ。
愛らしい歌声が、伊集院の喋り声に混じって聞こえている。
---
ここまで読んでいただいてありがとうございました!
そして、お気に入りやいいねやしおりをくださった方、本当にありがとうございます!
凄く嬉しいです。
嬉しい反応を頂けましたら今後の活動の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします。
もしよろしければ、この後もどうぞ読んでみてください!
0
あなたにおすすめの小説
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる