箱入り育ちの新人女教師ですが、毎日イケメン御曹司高校生に囲まれて困ってます!

玉水ひひな

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第一章 類稀なる高校――私立御影学院

生徒に毎日真面目に電話

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「じゃあ、夜極先輩は? 今日は学校来てた?」

「……うん。いたよ。元気そうだった」

 いつも訊かれる質問は同じなので、雛菜はこくりと頷いた。

 夜極の顔立ちは強面こわもてで、女の子受けするようには思えないのだが……。

 彼のファンも、校内には相当数いるらしい。

 雛菜も、夜極が可愛らしい女子生徒と歩いているのを何度か見かけた。
 校内でいかがわしい行為に及(およ)んでいたという騒動(そうどう)もあったそうで……、雛菜は辟易(へきえき)としていた。


(……学校でなんて……。……最低……)


 その光景をつい想像してしまって、雛菜はため息をついた。


 表情を落とした雛菜の顔を覗き込んで、女子生徒の一人が呟いた。

「雛菜ちゃん先生は可愛くて羨ましいなぁ。今度、お化粧のやり方教えてよ」

 彼女にずいずい迫られて、雛菜は目を瞬いた。
 小首を傾げなら、その女の子に答える。

「お化粧? いいけど……。でも、先生もちゃんとしたやり方はこの学校に来て教わったのよ。中学生や高校生の頃は日焼け止めくらいで、お化粧なんてほとんどしなかったわ」

「それは、雛菜ちゃん先生が美人さんだからぁー。それに、おっぱいもおっきいし!」

 ふっくらと盛り上がった自分の胸元を少女達にじっと見られて、雛菜は慌てて彼女達を諭した。

「お、女同士でもそんなに見ちゃ駄目。見るハラって言ってね、今は問題になってるんだから……!」

「だけど、憧れちゃうもん。雛菜ちゃん先生、お胸は何カップくらいあるの? 十代の時って、何食べてた? 胸筋を鍛える運動とかしてたの――?」

 無邪気な、でも真剣そのものの質問を女子生徒達から受けて、雛菜は困ってしまった。

 雛菜のバストサイズは確かにかなり大きめなのだが……、やっぱり遺伝要因が大きいのだと思う。
 母親も、そういえば祖母も、胸が大きかった。

 雛菜も特にこれといった何かをしたわけではないけれど、いつの間にかこんなに大きく育っていたのだ。

 特進クラスの生徒達に知られるとまたからかわれそうなので、どんなに陽気の日でも、ジャケットだけは絶対に脱がないようにしているのだが……。


(……もしかして、校長はあたしの胸も見て採用したのかなぁ)


 そう思い当たっても……、……もう遅かった。

 でも、こうして慕(した)ってくれる女子生徒達は、皆素直で可愛かった。
 無心に懐(なつ)いてくれる彼女達を裏切りたくないし、何より、一度やると決めたことを中途半端に投げ出したくはない。

 それに、特進クラスの生徒達のためにだって……、雛菜にもできることはきっとあるはずだ。

(……まだ教師になったばかりなのに、簡単に特進クラスの生徒のことを決めつけちゃ駄目よ。もっと前向きに考えなくちゃ……)

 ついため息を吐いた内心で、雛菜は何とか自分にそう言い聞かせたのだった。


 ♢ 〇 ♢


 授業が終わると、雛菜はいつものように〈特別生徒指導室〉で一人日報をまとめていた。

 この特別生徒指導室は、読んで字のごとく特進クラスに所属する生徒の指導のために用意された部屋だ。

 応接室としての広さは充分以上にあり、フルフラットになって仮眠もできる高級ソファにデスク、ウォーターサーバーやティーセット、個人用のハイスペックデバイスまでもが複数揃えられている。

 設備の豪華さに気が引けて、あまり落ち着かないけれど……。
 使えと言われれば、使わざるを得ない。

 今この部屋を使うのは、雛菜だけだった。

 パソコンで日報を校長とのシェアファイルにアップすると、雛菜は放課後のルーチンになっている作業に取りかかった。

 学校を休んだ生徒達に電話をして、今日の様子を訊くのだ。

「――あ、伊集院君? そう、葉月です。今日学校来なかったから、どうしてたかなって。伊集院君は一人暮らしだし、体調を崩したりしてないか心配してたのよ」

 何とか雛菜が心を込めて言うと、電話口の向こうから機械的な騒がしい音楽が聞こえてくる。

 ……カラオケにいるのだろうか?

 どうやら、彼の隣で、女の子が歌っているみたいだ。
 愛らしい歌声が、伊集院の喋り声に混じって聞こえている。




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