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3話 同居生活のはじまり
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朝の光が差し込み、白いカーテンを淡く染めている。雪は止んだだろうか。
今朝はいつもより、布団の中が暖かい。
心地よい重みとぬくぬくとした体温が、冬の冷気を遮断していた。
「んんっ」
隣から聞こえた柔らかな寝息に、夢心地のまどろみが冷めていく。
「ん、おはよう……、ケイ」
すぐ耳元で響いた甘い声。
気づけば、俺の首筋には細い腕が回され、ソラがぴったりと胸に顔を寄せていた。
昨日ぶりに感じる、柔らかくて熱い人肌の感触……。
――人肌?
昨夜の光景が脳内にフラッシュバックし、思わず飛び起きようとした。
だが、その瞬間、鋭い痛みが腰を襲う。
「い、痛っ!」
「大丈夫?」
ソラがパッと目を開き、心配そうに、俺の腰をツンツンと突っついた。
その仕草ひとつが、まるで飼い主を気にするネコのように愛くるしい。
「ごめんね、はじめてだったんでしょ?」
「さ、触るな!」
「痛いよね――ぎっくり腰って」
ソラは肩を震わせ、唇を噛んで笑いを堪えている。
「あんなに驚いて腰を抜かすなんて、僕の方がびっくりだよ」
「うるさい、ほっといてくれ」
俺は熱くなる顔を隠すように、枕にぐっと顔を埋める。
「お、男相手に、なんであんな真似したんだよッ」
「ちょっとキスしただけじゃないか」
「だから、それだ」
「中学生でもあるまいし。キスくらいでそんなに騒がないでよ。ここ、さっきからずっとうるさいよ?」
ソラが俺の胸元に耳を押し当ててくる。
「俺は、女の子が好きなの」
「男でも女でも、ヤっちゃえば大した違いなんてないよ。多様性って言ったって、結局、身体のつくりは2種類しかないんだからさ」
ソラは意地悪そうに目を細めると、俺の耳たぶをそっと甘噛みした。
「男の喜ばせ方は、男の方が知ってる」
俺のノーマルな倫理観が、ソラの吐息混じりの囁きによってガラガラと音を立てて崩壊していく。
「じゃあ、つまり……、ソラはそっちの人?」
「さてね、どうでしょう」
そう言うと、ソラは俺の真横にコロンと寝転んだ。
至近距離で見つめてくる瞳に、男だと分かっていてもドキっとする。
「ね、いまから試してみる?」
ソラはシャツの裾にそっと指先を滑り込ませた。
冷たかったはずの手が、今は熱を帯びて俺の肌を這う。
「……ムリ」
「ケイってさ、朝の方が元気なタイプでしょ」
スルスルと這う指先が、俺の敏感なところにたどり着く。
意地悪に爪を立てられ、俺の身体は情けなく跳ねた。
「や、やめろよ」
うわずる声では、なんの説得力もない。
「既成事実を作って脅してしまえば、ここに居座れると思ったのにな」
「なんだって?」
勢い余って起き上がろうとして、痛みで再び撃沈する。
「あはは、冗談だよ。……でも、追い出さないでほしいのは本当」
ソラは少しだけ寂しげに笑うと、俺の体をまたがるように乗ってきた。
「おい! いい加減にっ」
「いいから、寝てて」
穏やかで優しい手つきで、ソラが腰をマッサージし始める。
長い指が凝りを解きほぐすたび、じわじわと腰から全身に熱が回った。
「あ……、気持ちいい」
「こっちのマッサージも得意なの」
確かに、そう、だな。
毒気を抜かれた俺は、深く息を吐いた。
「つまり、ソラは本当に行くところがないのか」
「うん。昨日あそこで寝てたのが、僕の全力のSOSだったんだよ」
「……じゃあ、少しの間なら、いいよ」
「え?」
ソラの手がピタリと止まる。
「拾ってやるよ。その代わり、この腰が治るまで、カフェを手伝ってくれると助かる」
俺がそう告げると、ソラは信じられないものを見たように目を輝かせた。
そして、そのまま俺の胸にぎゅっと抱きついてくる。
「もちろんだよ! 飲食店は経験あるんだ。といっても、夜のお店だけどね」
まぁ、今はいいか。聞くのはやめよう。
「一緒に暮らすのに、なにかルールはある?」
「特にはないかな」
俺が言いかけると、ソラは鼻先を俺の鼻に擦り合わせながら、ニヤリと笑った。
「飼ってくれるなら、ちゃんとご主人様のベッドで寝るからね」
「違う! ソラはソファだ」
「一緒に寝た方が暖かいのに。僕、ケイの匂い好きだな。なんか落ち着く」
ぷくっと頬を膨らませて見つめる。こいつ、天然なのか計算なのか……。
「ラッキーだったなぁ。こんなにいいご主人様に拾われるなんて」
「その、ご主人様ってやめろよ」
「にゃーーん」
ソラは甘い声で鳴くと、俺の頬に深い、愛おしむようなキスをした。
「こら、やめろ!」
こうして、俺とソラの甘くて奇妙な同居生活が幕を開けた――。
今朝はいつもより、布団の中が暖かい。
心地よい重みとぬくぬくとした体温が、冬の冷気を遮断していた。
「んんっ」
隣から聞こえた柔らかな寝息に、夢心地のまどろみが冷めていく。
「ん、おはよう……、ケイ」
すぐ耳元で響いた甘い声。
気づけば、俺の首筋には細い腕が回され、ソラがぴったりと胸に顔を寄せていた。
昨日ぶりに感じる、柔らかくて熱い人肌の感触……。
――人肌?
昨夜の光景が脳内にフラッシュバックし、思わず飛び起きようとした。
だが、その瞬間、鋭い痛みが腰を襲う。
「い、痛っ!」
「大丈夫?」
ソラがパッと目を開き、心配そうに、俺の腰をツンツンと突っついた。
その仕草ひとつが、まるで飼い主を気にするネコのように愛くるしい。
「ごめんね、はじめてだったんでしょ?」
「さ、触るな!」
「痛いよね――ぎっくり腰って」
ソラは肩を震わせ、唇を噛んで笑いを堪えている。
「あんなに驚いて腰を抜かすなんて、僕の方がびっくりだよ」
「うるさい、ほっといてくれ」
俺は熱くなる顔を隠すように、枕にぐっと顔を埋める。
「お、男相手に、なんであんな真似したんだよッ」
「ちょっとキスしただけじゃないか」
「だから、それだ」
「中学生でもあるまいし。キスくらいでそんなに騒がないでよ。ここ、さっきからずっとうるさいよ?」
ソラが俺の胸元に耳を押し当ててくる。
「俺は、女の子が好きなの」
「男でも女でも、ヤっちゃえば大した違いなんてないよ。多様性って言ったって、結局、身体のつくりは2種類しかないんだからさ」
ソラは意地悪そうに目を細めると、俺の耳たぶをそっと甘噛みした。
「男の喜ばせ方は、男の方が知ってる」
俺のノーマルな倫理観が、ソラの吐息混じりの囁きによってガラガラと音を立てて崩壊していく。
「じゃあ、つまり……、ソラはそっちの人?」
「さてね、どうでしょう」
そう言うと、ソラは俺の真横にコロンと寝転んだ。
至近距離で見つめてくる瞳に、男だと分かっていてもドキっとする。
「ね、いまから試してみる?」
ソラはシャツの裾にそっと指先を滑り込ませた。
冷たかったはずの手が、今は熱を帯びて俺の肌を這う。
「……ムリ」
「ケイってさ、朝の方が元気なタイプでしょ」
スルスルと這う指先が、俺の敏感なところにたどり着く。
意地悪に爪を立てられ、俺の身体は情けなく跳ねた。
「や、やめろよ」
うわずる声では、なんの説得力もない。
「既成事実を作って脅してしまえば、ここに居座れると思ったのにな」
「なんだって?」
勢い余って起き上がろうとして、痛みで再び撃沈する。
「あはは、冗談だよ。……でも、追い出さないでほしいのは本当」
ソラは少しだけ寂しげに笑うと、俺の体をまたがるように乗ってきた。
「おい! いい加減にっ」
「いいから、寝てて」
穏やかで優しい手つきで、ソラが腰をマッサージし始める。
長い指が凝りを解きほぐすたび、じわじわと腰から全身に熱が回った。
「あ……、気持ちいい」
「こっちのマッサージも得意なの」
確かに、そう、だな。
毒気を抜かれた俺は、深く息を吐いた。
「つまり、ソラは本当に行くところがないのか」
「うん。昨日あそこで寝てたのが、僕の全力のSOSだったんだよ」
「……じゃあ、少しの間なら、いいよ」
「え?」
ソラの手がピタリと止まる。
「拾ってやるよ。その代わり、この腰が治るまで、カフェを手伝ってくれると助かる」
俺がそう告げると、ソラは信じられないものを見たように目を輝かせた。
そして、そのまま俺の胸にぎゅっと抱きついてくる。
「もちろんだよ! 飲食店は経験あるんだ。といっても、夜のお店だけどね」
まぁ、今はいいか。聞くのはやめよう。
「一緒に暮らすのに、なにかルールはある?」
「特にはないかな」
俺が言いかけると、ソラは鼻先を俺の鼻に擦り合わせながら、ニヤリと笑った。
「飼ってくれるなら、ちゃんとご主人様のベッドで寝るからね」
「違う! ソラはソファだ」
「一緒に寝た方が暖かいのに。僕、ケイの匂い好きだな。なんか落ち着く」
ぷくっと頬を膨らませて見つめる。こいつ、天然なのか計算なのか……。
「ラッキーだったなぁ。こんなにいいご主人様に拾われるなんて」
「その、ご主人様ってやめろよ」
「にゃーーん」
ソラは甘い声で鳴くと、俺の頬に深い、愛おしむようなキスをした。
「こら、やめろ!」
こうして、俺とソラの甘くて奇妙な同居生活が幕を開けた――。
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