迷い猫系年下男の甘い誘惑がとまらない

はなたろう

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2話 猫に襲われる夜

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――灰色の瞳。
どこで見たのだろうと考えた。


そうだ、前に拾った野良猫と同じだ。

三毛猫で、華奢な猫だった。懐いていたはずなのに、1年ほどでふらっとどこかへ行ったまま、帰ってはこなかった。


あの猫の瞳も、どこか寂しげな色をしていた。


「お邪魔します」


彼は丁寧に靴を揃えて入って来た。俺はすぐにエアコンを入れる。


「名前は?」

「ソラ」


偽名だろうか。


「そっちは?」

「佐々木圭人、26歳。この下のカフェをやってる。雇われオーナーだけどな」


暖房が効いてきた部屋。電気ポットからお湯の沸く音が聞こえる。


ソラの濡れた髪、ポタリと細い首筋に雫が落ちる。
その行方を、俺は思わず見つめてしまう。


えっと、男――だよな?


「じゃあ、ケイって呼んでもいい?」

「あ、ああ」


知り合って5分とは思えないほど、ソラは自然に話しかけてきた。


「濡れてるな、タオルと着替えを持ってくる」

「うん、ありがとう」


中性的で美しい顔立ち、と言うのだろうか。不思議な雰囲気に心がざわつく。


なぜ、こんなにドキドキするんだ。


クローゼットからタオルとスウェットを引っ張り出した。
この異様な緊張から逃れるには、「善意の行動」に徹するしかない。


そもそも、変な下心なんてない。あるはずもない。


リビングへ戻ると、ソラが濡れたシャツに手をかけたところだった。

チラリとのぞく白い肌。


「ちょっと待て!」

「え?なに?」


なんだか、見てはいけない気がした。

俺の制止を無視し、ソラはあっさりシャツを脱ぎ捨てた。
上半身は半裸になり、さらに濡れたデニムのボタンに指をかける。


照明に照らされた鎖骨のくぼみ、薄い胸筋のライン、そして細い腰回り――。


くそ、やっぱり男だった。

……どこかで、ほんの少し期待した自分を殴りたい。

でも、男なのに、男じゃないみたいだ。


俺の視線は、ソラの濡れた肌に釘付けになる。


「ケイの服だと大きいや」

「ひっ!」


それは、まるで『お泊まりに来た彼女が彼氏の服を着て、萌えます』という状態だった。


「……こ、コーヒー淹れるから」


慌てて視線を外し、ドキドキしたのをごまかすように、ソラから背を向けた。


「ねぇ、ケイ」


次の瞬間、背中から腕が回された。


「えっ!?」


細い腕なのに、意外にも強い力で後ろに引かれた。

バランスを崩し、俺はソファに倒れこむ。
いや、押し倒されたというのが、正しい表現だろう。


「な、なにして……」


抵抗しようとしたが、あまりの距離の近さと迫力に身体がこわばる。


目の前の顔が近い。

淡い灰色の瞳が俺をじっと見つめ、ハスキーな声で甘く囁く。


「お礼はするって、言ったじゃん」


唇が触れた瞬間、全身が電撃に打たれたように震えた。

ソラの唇は雪のように冷たいのに、その口づけは柔らかく、そして熱い。


「んっ……!」


舌先が深く絡んでくる。

熱くて息ができない。こんなキスは、はじめてだった。


理性は必死に叫ぶ――俺はゲイじゃない!


なのに、身体の奥はさらに熱くなる。

息が乱れ、手のひらでソラの背中を押し返すこともできない。


ソラの指が、俺のシャツの下に忍び込み、胸を撫で上げる。肌の感触に、ぞっとするほどの快感が走った。


「や、やめろ……!」

「なんで?いいじゃん、素直に受け取ってよ。気持ちよくさせてあげるから」


挑発するように甘く囁かれ、触れられるたびに体が異常なほど反応する。


理性が遠のくのを感じながら、俺は必死に最後の抵抗を試みた。


「や、やめろ」

「身体は受け入れたいって、そう言ってるよ?」


いやいや、こんなはずじゃない。
このまま流されていいのか?

ど、どうする?俺は――。
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